2021年10月26日火曜日

重症COVID-19に対するデキサメサゾン12mgの効果(COVID STEROID 2 Trial)

重症COVID-19に対するデキサメサゾン12mgのRCTがJAMAに出ていました。

各ガイドラインの記載が変わりそうな重要なStudyです。HFNCになったタイミングでトシリズマブを併用するのか、デキサ12mgに増量するのか、あるいはその両方なのか、というところが今後の課題になりそうです。



Effect of 12 mg vs 6 mg of Dexamethasone on the Number of Days Alive Without Life Support in Adults With COVID-19 and Severe Hypoxemia: The COVID STEROID 2 Randomized Trial

JAMA. 2021 Oct 21. doi: 10.1001/jama.2021.18295.

https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2785529


  • Design: Double-blind RCT
  • P: 10L/min以上の酸素需要、もしくはNIV・機械換気下のCOVID-19
    • 除外基準で重要なものは、5日以上のCOVID-19に対するステロイド投与(4日以内ならOK)
  • I: デキサメサゾン12mg 10日間
  • C: デキサメサゾン6mg 10日間
  • O: 28日目における生命維持装置(呼吸器・循環補助・腎代替療法)なしでの生存日数


結果:

  • 12mg群に491名、6mg群に480名が割付けられた
  • NIV 25%、IMV 21%の患者が含まれ、レムデシビルが63%、IL-6阻害薬が11%、JAK阻害薬が1%に併用された
  • ベースライン背景・重症度は2群間でほぼ同じだったが、6mg群にDMが多かった (27% vs 37%)
  • Primary endpointは、12mgが22.0日 (IQR 6.0-28.0)、6mg群が20.5日 (IQR 4.0-28.0)、リスク差1.3日 (95%CI, 0-2.6, p=0.07) だった


  • 28日目死亡率は、12mg群で133/491 (27.1%)、6mg群で155/480 (32.3%)で、HR 0.86 (99%CI 0.68-1.08)、
  • 90日死亡率は、12mg群で157/490 (32.0%)、6mg群で180/478 (37.7%)で、HR 0.87 (99%CI 0.70-1.07)
  • サブ解析ではIL-6阻害薬を併用していない患者、ステロイド開始して2日以内の患者での利益がより大きい傾向があった
  • 重篤な有害事象は、12mg群で102人 (20.5%)、6mg群で123人(25.4%)であった
    • Supple eTable10に内訳があり、血栓症、敗血症、AKIなどが少しずつ多いようです

感想:

有意差こそついていませんが、増量ステロイドの死亡率改善効果を示す重要なRCTと考えます。あまり目立った有害事象の増加もないようであり、少なくとも大きなデメリットがなさそうに見えます。

有意差がつかなかった主な原因は、介入の効果が想定より弱かったことによるサンプルサイズの不足だと思われます。


Primary endpointは12mg群で42.6%、6mg群で40.2%と、実際の相対リスク軽減は6%しかありませんでした。サンプルサイズは15%の相対リスク軽減を想定していましたので、Nが不足であった感は否めません。


相対リスク軽減が想定よりも低かった原因としては、ランダム化の前に4日間までのステロイド治療が認められていたことで、介入の効果が低下した可能性が考察されています。


ただ事前のステロイド使用を認めるということは、極めて実臨床に即している気がするので(6mgで効かずに重症化したら12mgに増量するというプラクティスになる)、個人的には妥当なデザインではないかと思います。


介入効果に見合ったNであったなら有意差が出たであろうデータに見えるので、今後はデキサメサゾン6mgでうまくいかなければ4日以内に12mgに増量するということが、ある程度エビデンスを持った選択肢になったのだろうと、個人的には考えました。


2021年10月19日火曜日

固形臓器移植におけるCMV抗原血症

自己免疫疾患の治療中に見られるCMV抗原血症をPre-emtiveに治療してしまうということは時々あるのですが、どのくらい妥当なのか改めて調べてみました。


固形臓器レシピエントのCMV再活性化を予測する因子を解析した前向き研究が、参考になりそうでした。

今回読んだ2つの論文では、固形臓器移植のCMV抗原血症の発症率は47~62%、CMV diseaseは3~20%、一方SLE、non-SLE自己免疫疾患のCMV抗原血症は、それぞれ58.6%、11.4%、という前向き観察研究があり(PLoS One. 2019 Aug 28;14(8):e0221793)、CMV diseaseはループス腎炎の後ろ向き観察研究で5.3%程度(Clin Exp Med. 2017 Nov;17(4):467-475.)ということでした。

固形臓器移植では使用している薬剤もPSL、MMF、Cyclosporine、TacrolimusなどSLEと類似しています。これを踏まえると固形臓器移植のCMV diseaseのリスクは、自己免疫疾患より少し高いくらいなのかなと思います。


抗原10程度だとPPVが20~60%くらいなので、Pre-emptiveに全例治療するレベルではない気がしますが、30などもう少し高い値になってくるとPPVが100%に近くなっているので、Pre-emtiveが成立するレベルのリスクなのかなという気がします。



Transplantation. 1999 Nov 15;68(9):1305-11.

  • デザイン:前向き観察研究
  • 対象:97人の連続肝移植レシピエント
  • 方法:毎週の定量的PCRによるウイルス量測定、および抗原血症アッセイ
    • ※抗原定量アッセイはReferenceを読んでみましたが、C10/11法だと思われます(Journal of Medical Virology, 25(2), 179–188.)
  • 結果
    • CMV抗原血症は62.9% (61/97)、CMV diseaseは20.6% (20/97)
    • 抗原定量値は、CMV diseaseでは39.2±22.2、無症候性では2.9±0.6
    • PCRのウィルス量は、CMV diseaseでは33624±10126、無症候性では1902±369
    • CMV disease予測のROC曲線は以下の通りで、適切なカットオフは、PCRは>5000(PPV 64.3%, NPV 95.7%)、抗原では>6(PPV60.7%, NPV 94.2%)



2つ目は固形臓器移植で同様の検討をしている論文です。このStudyではPCRしか見ていませんが、Validationコホートのサンプルサイズは252と大きいです。


J Clin Virol. 2013 Jan;56(1):13-8.

  • デザイン:前向き観察研究
  • 対象:CMV抗体陽性の連続した腎・肝・心移植患者(N=252)
  • 方法:CMV-PCRを移植100日目までは2週毎、101~180日目は4週毎に実施して評価した
  • 結果:
    • CMV抗原血症は47.2% (119/252)、Pre-emptive治療を60例に実施し、CMV diseaseは3.6%(9/252)
    • CMV disease予測の適切なカットオフは>3983(PPV 20.7%、NPV 99.2%)