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2022年11月10日木曜日

EULAR推奨2022:自己免疫疾患における日和見感染スクリーニングと予防

 欧州リウマチ学会(EULAR)から自己免疫疾患の日和見感染予防とスクリーニングの推奨が出ました。日本の論文がたくさん引用されており、何だか嬉しいですね。


内容的には日本の生物学的製剤のガイドラインに準じた内容なので、あまり大きくプラクティスが変わることは書いてないのですが、個人的に驚いたところは、

  • なぜかHIVスクリーニングを推奨している
  • ハイリスク例のLTBIの定期スクリーニング(なるほど・・・!)
  • RAのPCP予防についてたくさん引用している割に推奨していない(残念)



2022 EULAR recommendations for screening and prophylaxis of chronic and opportunistic infections in adults with autoimmune inflammatory rheumatic diseases.

Ann Rheum Dis 2022 [Epub 03 November]

doi: 10.1136/ard-2022-223335


包括的原則

  • (A) csDMARDs、tsDMARDs、bDMARDs、免疫抑制剤、ステロイドによる治療の前に、すべてのAIIRD患者と検討・協議し、慢性及び日和見感染リスクを定期的に評価すべきである。
  • (B) リウマチ専門医と感染症専門医、消化器専門医、肝臓専門医、呼吸器専門医など、他の専門医との連携は重要である。
  • (C) 慢性及び日和見感染のスクリーニングと予防を決める際は、個々の危険因子を考慮し、定期的に再評価すべきである。
  • (D) 流行性感染症に関する国・地域レベルの要因のうち、国内ガイドライン・勧告を考慮すべきである。


推奨事項

  • (1) bDMARDs、tsDMARDsの開始前は、LTBIスクリーニングを推奨する(*1)。csDMARDs、免疫抑制剤、ステロイド(用量・期間による)の開始前も、LTBIリスクが高い患者(*2)ではスクリーニングを検討する。
  • (2) LTBIスクリーニングは、胸部XPとIGRA(ツ反ではなく)を含めるべきである。
  • (3) LTBI治療薬の選択と導入時期は、国内and/or国際ガイドラインに従うべきである。AIIRDの治療薬との相互作用に特別な注意を払う必要がある(*3)。
  • (4) csDMARDs、bDMARDs、tsDMARDs、免疫抑制剤、ステロイド(用量・期間による)の開始前は、全ての患者にHBVスクリーニングを行うべきである(*4)。
  • (5) csDMARDs、bDMARDs、tsDMARDs、免疫抑制剤、ステロイド(用量・期間による)の開始前は、HCVスクリーニングを考慮する(*5)。ALT高値や既知の危険因子がある場合(例:薬物の静脈内使用)は、HCVスクリーニングを推奨する。
  • (6) bDMARDs開始前にHIVのスクリーニングを推奨する(*6)。csDMARDs、tsDMARDs、免疫抑制剤、ステロイド(用量と期間による)治療前にも考慮する。
  • (7) csDMARDs、bDMARDs、tsDMARDs、免疫抑制剤、ステロイド(用量と期間による)開始前に、VZV免疫がない患者には曝露後予防について説明すべきである。
  • (8) 高用量ステロイド(特に免疫抑制剤併用)使用者では(*7)、リスク・ベネフィットに応じてPCP予防(*8)を考慮する。


気になったところの補足

  • *1: Bio治療中のIGRA陽性化が報告されているので、高リスク者では定期的な再スクリーニングを推奨している
  • *2: おそらく重度飲酒、喫煙者、流行国居住歴、医療従事者等を想定している
  • *3: 相互作用で重要なものは、RFPによるステロイド・JAK-Iの代謝促進(CYP3A4)、INHとMTX・LEF併用による肝障害
  • *4: HBV再活性化予防は、抗リウマチ治療中止後少なくとも 6-12 ヶ月継続を推奨(リツキシマブはさらに延長)
  • *5: HCV再活性化は稀だが、TNF阻害薬では一応報告があるので推奨された模様
  • *6: HIVスクリーニングはちゃんとした引用がなく根拠不明ですが、もし未治療のHIVがあった場合に、潜在する日和見感染を増悪させることを懸念しているのかもしれません(完全に想像)
  • *7: PSL15-30mg、2~4週間以上を有益と考察している
  • *8: ST 0.5T/day相当レジメンの有用性についても触れられてます

2022年5月18日水曜日

白内障の術前抗菌薬

白内障の術前抗菌薬の相談を受けたのですが、恥ずかしながら全く知らなかったので調べてみました。


眼科領域の術式別のSSIの発生率

引用:佐々木香る 眼科抗菌薬適正使用マニュアル

  • 白内障手術:0.02%
  • 硝子体手術:0.03‐0.05%
  • 硝子体内注射:0.03-0.04%
  • 緑内障手術:2%(濾過胞炎含む)
  • 角膜移植:0.2%
  • 屈折矯正手術:0.02%
  • 結膜手術、斜視手術、眼瞼・眼窩手術:極めて稀



白内障手術の起因菌

J Cataract Refract Surg. 2013 Sep;39(9):1421-31.


  • 白内障手術のSSIの起因菌は、大半がブドウ球菌と連鎖球菌
  • 結膜嚢および外眼部常在菌層に由来するようです。



Ophthalmology. 2002 Jan;109(1):13-24.

周術期SSI予防の方法として、全身投与の抗菌薬は有効性が否定されています。

2002年のSRで既に、抗菌薬洗浄、抗菌薬点眼、結膜下抗菌薬投与などの有効性は否定され、術前のポピドンヨード消毒のみが有効性があると報告されていたようです。



セフロキシムの前房内投与

2007年にESCRS(欧州白内障屈折矯正手術学会)からセフロキシムの前房内投与の有効性を示すRCTが出ました。以降の欧州各国はセフロキシム前房内投与が主流で、導入後の術後眼内炎の減少が報告されているようです。

なおこのRCTで同時にフルオロキノロン点眼の有効性がないことも示されており、欧州では以降使用しない流れになっているようです。


Prophylaxis of postoperative endophthalmitis following cataract surgery: results of the ESCRS multicenter study and identification of risk factors.

J Cataract Refract Surg. 2007 Jun;33(6):978-88.

  • Design: 多施設RCT、部分盲検
  • P: 糖尿病を含む白内障手術を受ける患者
  • I&C: 2×2グループの比較
    • 術後セフロキシム1mg前房内投与の有無
    • 術前レボフロキサシン0.5%点眼(手術1時間前に1滴、30分前に2滴、術直後5分間隔で3滴)
  • O: 術後感染性眼内炎

結果:

  • 29例が眼内炎を呈し,そのうち20例が感染性眼内炎と診断
  • セフロキシム前房内投与を行わない場合、眼内炎のOR 4.92 (95%CI 1.87~12.9
  • 強膜トンネルと比較した角膜切開の使用は、OR 5.88 (95%CI 1.34-25.9)
  • アクリルと比較したシリコーン眼内レンズ(IOL)光学材料の使用 OR 3.13 (95%CI 1.47-6.67)



日本のガイドライン

日本感染症学会・抗菌化学療法学会から出されて、日本眼感染症学会、日本眼科学会も監修しているようです。

術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン(2020年5月追補版)

http://www.chemotherapy.or.jp/guideline/jyutsugo_shiyou_tuiho.html

  • 白内障手術は、リスク因子がなければ全身投与での予防は不要、と明記されてます
  • 術前点眼は術前3日から投与されることになっている


ちょっと世界の潮流からは遅れている感じがする記載ではありますね。

日本では術後4週間程度フルオロキノロン点眼を継続している施設が多いようですが、米国では1週間が主流とのことです(ASCRS:米国白内障屈折矯正手術学会の調査)。

J Cataract Refract Surg. 2015 Jun;41(6):1300-5.


2020年5月19日火曜日

ACR痛風ガイドライン2020

ACRの痛風ガイドラインが改定されています。
以前ほど生活習慣の影響は強くないと考えて良さそうで、プリン体摂取もそれほどアウトカムに影響しないようです。体重と飲酒は弱くフレアと関連がありそうですが、基本は薬物療法であると解釈できそうです。

フェブキソスタットがアロプリノールと比較して、心血管死がわずかに増加するかもしれないという話題や、
N Engl J Med. 2018 Mar 29;378(13):1200-1210. 
Circulation. 2018 Sep 11;138(11):1116-1126.
ロサルタンの尿酸減少効果については知らなかったので、非常に勉強になりました。
Hypertension. 2011 Jul;58(1):2-7.


Arthritis Care Res (Hoboken). 2020 May 11.
2020 American College of Rheumatology Guideline for the Management of Gout.

尿酸降下治療の適応

  • 1個以上の皮下痛風結節、痛風性X線変化、年2回以上の痛風発作では尿酸降下治療を強く推奨する
  • 低頻度(年2回未満)の繰り返す痛風発作に対する尿酸降下治療を弱く推奨する
  • 初回痛風発作では尿酸降下治療を一般に推奨しないが、CKD stage3以上、尿酸>9mg/dL、尿路結石を合併する場合は検討して良い
  • 無症候性高尿酸血症に対する尿酸降下治療は推奨しない

尿酸降下治療の薬剤選択

  • CKD stage3以上も含めて、1st line治療にはアロプリノールを強く推奨する
  • CKD stage3以上ではプロベネシドよりアロプリノールかフェブキソスタットを強く推奨する
  • Pegloticase(尿酸オキシダーゼ)は1st line治療として使用しないことを強く推奨する
  • アロプリノールとフェブキソスタットは低用量から漸増することを強く推奨する
  • プロベネシドは低用量から漸増することを弱く推奨する 
  • 抗炎症薬(コルヒチン、NSAID、ステロイド)の予防的併用を強く推奨する(最低3~6ヶ月)

尿酸降下治療の開始時期

  • 痛風発作中ではなく発作が軽快した後に尿酸降下治療を開始することを強く推奨する
  • 尿酸値をガイドにして目標尿酸値を目指す "Treat to target” 戦略を強く推奨する
  • 尿酸6mg/dL以下に維持することを強く推奨する
  • T2T strategy最適化のため、患者教育やshared decision‐makingを含む非医師による尿酸降下治療の拡張プロトコルの提供を強く推奨する

尿酸降下治療の期間

  • 無期限に継続することを弱く推奨する

アロプリノールに関する推奨

  • 東南アジア民族(漢民族、韓国、タイ等)及びアフリカ系アメリカ人では、開始前にHLA–B*5801 alleleを検査することを弱く推奨する(HLA–B*5801はアロプリノール過敏症のリスク)
  • 上記以外の民族にHLA–B*5801を検査しないことを弱く推奨する
  • アロプリノールは100mg/day以下(CKDでは更に低用量)から開始することを強く推奨する
  • アロプリノール脱感作は他の尿酸降下治療で代用できない場合に弱く推奨する

フェブキソスタットに関する推奨

  • 心血管の新規イベントまたは既往患者では、他の推奨に反しない限り、可能な場合は他の尿酸降下治療への切り替えを弱く推奨する

尿酸排泄促進薬に関する推奨

  • 投与前及び投与中に尿中尿酸の測定を行わないことを弱く推奨する(食事の影響を受けるため)
  • 尿酸排泄促進薬投与中の尿のアルカリ化は行わないことを弱く推奨する(有用性の証拠なし)

いつ尿酸降下治療の変更を検討すべきか

  • 最初のキサンチンオキシダーゼ阻害薬(XOI)を最大容量で投与しているにも関わらず、尿酸>6mg/dLが持続し、かつ皮下痛風結節や年2回以上の痛風発作が軽快しない場合には、尿酸排泄促進薬の追加ではなく別のXOIに切り替えることを弱く推奨する
  • XOI、尿酸排泄促進薬、他の治療介入によっても目標の尿酸値に到達せず、かつ皮下痛風結節や年2回以上の痛風発作が改善しない場合に、Pegloticaseの使用を強く推奨する
  • 皮下痛風結節がなく、年2回未満の痛風発作の場合は、尿酸値が目標に達しなくともPegloticaseは使用しないことを強く推奨する

痛風発作の管理

  • IL-1阻害薬やACTHよりも、コルヒチン、NSAID、ステロイド(経口、関注、筋注)を1st line治療とすることを強く推奨する
  • コルヒチンは有効性が同等で低リスクであることから、低用量での使用を強く推奨する
  • 局所冷却を補助療法として弱く推奨する
  • 上記の抗炎症治療が全て無効か忍容性がないか禁忌の場合、IL-1阻害薬の使用を弱く推奨する
  • 内服不能の場合はIL-1阻害薬やACTHではなく、ステロイド静注・筋注・関注で治療することを強く推奨する

生活習慣の管理

  • 疾患活動性に関わらず、アルコール、プリン体、高果糖コーンシロップを制限することを弱く推奨する
  • 疾患活動性に関わらず、過体重の患者では減量プログラムを弱く推奨する
  • ビタミンCサプリメントは推奨しない(有効性の証拠なし)

併用薬の管理

  • ヒドロクロロチアジドを別の降圧薬に切り替えることを弱く推奨する
  • 降圧薬としてロサルタンを優先的に選択することを弱く推奨する(尿酸の減少効果がある)
  • 適切な適応で低用量アスピリンを内服している場合、(尿酸降下を期待しての)アスピリン中止を行わないことを弱く推奨する
  • コレステロール降下薬を(尿酸降下を期待して)フェノフィブラートに変更または併用することは行わないことを弱く推奨する

2020年3月31日火曜日

AAVに対するRTXメンテナンス BSR: Expert consensus guidelines

BSRからAAVに対するRTXメンテナンスのガイドラインが出ました。Expert consensusということですが、割と強固なエビデンスに基づいた記載もあって勉強になりました。


Rheumatology (Oxford). 2020 Apr 1;59(4):e24-e32.
Rituximab for maintenance of remission in ANCA-associated vasculitis: expert consensus guidelines


1. 維持療法としてRTXをいつ使用すべきか

1.1 新規及び再発GPA/MPA

  • RTXで寛解導入したGPA/MPAで、RTXによる維持療法を推奨する (Level 2b, grade B, vote100%)
  • CYで寛解導入したGPA/MPAで、RTXによる維持療法を推奨する (Level 1b, grade A, vote100%)

1.2 EGPA

  • 維持療法のRTXのエビデンスは不足しているが、GPA/MPAと同様のアプローチを勧める (Level 4, grade C, vote83%)
  • EGPAにおけるRTXの治療反応はGPA/MPAとは異なり、ステロイドの離脱は困難かもしれない

2. AAVにどのRTXメンテナンスレジメンを使用するか

2.1 用量と投与間隔

  • 固定間隔投与で、500mg or 1000mg /body /6 months 2年間使用 (Level 1b, grade B, vote100%)
  • RTX終了後も再発リスクは継続するためモニタリングは継続する必要がある。

2.2 RTXメンテナンスで再発する場合

  • 再発時の治療変更は疾患活動性と臓器病変により決定する (Level 4, grade C, vote100%)
  • 再発時は以下を検討せよ
    • 症状はActivity由来かDamage由来か
    • 代替診断、併存症の有無
    • Disease driver(感染、コカイン使用の有無)
    • 不完全なB細胞除去
  • 可能な治療選択肢
    • 寛解導入の反復(薬剤を変更しても良い)
    • RTX投与間隔の短縮
    • 併用療法(AZA、MMF、MTX等)
    • 臨床研究エントリーを考慮

2.3 RTXメンテナンスの延長

  • 2年の維持療法後も再発リスクの高い患者では維持療法の延長も検討する (Level 5, grade D, vote94.4%)
  • 初回維持療法での再発、ANCAの持続的上昇、再発により臓器・生命の危機が予測される場合が該当する。

2.4 RTXメンテナンスにおけるバイオマーカーの役割

  • AAVにおけるRTX維持療法のガイドとなるバイオマーカー(ANCA、B細胞リターン等)の役割はさらなる研究が必要 (Level 2a, grade B, vote100%)

3. 併用療法

3.1 免疫抑制剤、DMARD

  • 維持療法で免疫抑制剤(AZA, MTX, MMF等)を既に使用している患者にRTXを開始する場合、これらの中止を提案する (Level 4, grade C, vote83.3%)

3.2 ステロイド

  • ステロイドの漸減は、RTX開始後6~12ヶ月での中止を目指すべきである (Level 5, grade D, vote94.4%)

4. 予防

4.1 PCP

  • RTXメンテナンスを行う全ての患者でPCP予防を提案する (Level 4, grade C, vote88.9%)

4.2 ワクチン

  • インフルエンザと肺炎球菌ワクチンは全ての患者に推奨する。生ワクチンは避けるべきである
  • ワクチンはRTX 1ヶ月前の接種が理想だが、タイミング設定が接種を妨げるべきではない (Level 5, grade D, vote100%)

5. 有害事象

5.1 低ガンマグロブリン血症

  • (i) RTXメンテナンスにおいて
    • a. 免疫グロブリンはすべての患者でモニタリングすべきである (Level 2a, grade B, vote100%)
    • b. 非定型感染や感染を繰り返す場合、IgG<300mg/dL (小児では年齢補正する)の場合は精査を推奨する (Level 5, grade C, vote100%)
  • (ii) 低ガンマグロブリン血症でRTXが臨床的に有効な患者では、免疫グロブリン補充の併用を考慮する (Level 5, grade C, vote100%)

5.2 遅発性好中球減少症

  • 臨床医と患者は、RTXによる遅発性好中球減少症の可能性に注意する
  • 合併症のない遅発性好中球減少症の既往でRTX使用を断念する必要はない (Level 4, grade C, vote88.9%)

補足

推奨内容は主にMAINRITSAN試験で得られたエビデンスに基づいています。
  • MAINRITSAN試験でRTXによる維持療法はAZAと比較して有意に優れていることが示された。
  • 28ヶ月後の主要再発率 5% vs 29% (HR 6.61, 95%CI:1.56-27.96, p=0.002)
  • RTXによる維持療法の効果はNNT 4
  • この優位性は60ヶ月後のフォローアップでも持続した

2020年3月6日金曜日

性と生殖に関するACRガイドライン2020

リウマチ性疾患(RMD: Rheumatic and Musculoskeletal Diseases)における、性と生殖に関するACRガイドライン2020が出ました。

MMFはホルモン避妊薬の有効性を低下させる、体外受精は卵巣刺激中のエストロゲン濃度上昇により血栓リスクが高度に懸念される、など、知らないことが多かったので、とても勉強になりました。
例によって時間のない方はFigure1,2だけ見れば良いかもしれません。


Arthritis Rheumatol. 2020 Feb 23.
2020 American College of Rheumatology Guideline for the Management of Reproductive Health in Rheumatic and Musculoskeletal Diseases
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/art.41191

避妊法

  • Non-SLEのRMDでは、効果の低い避妊薬や避妊なしより、ホルモン避妊薬やIUDの使用を推奨する
  • aPL(-)の低活動性SLEでは、避妊なしよりも効果的な避妊薬(ホルモン避妊薬やIUD)の使用を強く推奨する
  • SLEでは経皮エストロゲン-プロゲスチンパッチを使用しないことを推奨する
  • 腎炎を含む中~重度活動性のSLEでは、エストロゲン含有避妊薬の臨床データが乏しいため、プロゲステロン避妊薬かIUDの使用を強く推奨する
  • aPL陽性者は合併症の有無に関わらず、エストロゲンを含む避妊薬は血栓リスク増大のため禁忌
  • aPL陽性者ではDMPAを除くプロゲステロン避妊薬は使用できるが、避妊効果は劣る
  • ステロイドや基礎疾患に伴う骨粗鬆症リスクが高い場合、DMPAを避けることを検討する
  • MMFは血清エストロゲン及びプロゲステロンレベルを下げる可能性があるため、ホルモン避妊薬の有効性が妨げられる懸念がある
  • MMF服用者は、IUD単独または他の2つの避妊方法の併用を検討する

生殖補助療法(ART)  

  • 妊娠適応薬を服用下に疾患活動性が安定した、aPL(-)で合併症のないRMDでは、必要に応じてARTを行って良い
  • 中~重度活動性のSLEでは、妊娠リスクが高い懸念からARTを延期することを推奨する
  • ART処置中のSLEでは、経験的なステロイド増量を検討しても良い
  • ART処置中の無症候性aPL陽性者では、ヘパリンまたは低分子量ヘパリンによる予防的抗凝固療法を検討する
  • 状態が安定しているRMDで卵母細胞または胚の凍結保存の際、免疫抑制剤・生物学的製剤の継続を強く推奨する(シクロフォスファミドは除く。MTXは継続して良い)

妊孕性

  • IVCYを行う閉経前RMDの卵巣機能不全予防のため、毎月のGnRHアゴニスト療法を検討してよい
  • 男性の健児を妊娠する生殖能力保全のため、CY治療前の凍結精子保存を希望する場合は行うことを強く推奨する

閉経後ホルモン療法(HRT)

  • aPL(-)のSLE患者では、重度の血管運動症状に対するHRTの希望がある場合、考慮しても良い(ループスフレアのリスクがわずかに増加するため条件付き推奨となっている)
  • 無症候性aPL陽性者では、HRTを行わないほうが良い
  • obstetric and/or thrombotic APSでは、HRTを行わないことを強く推奨する
  • 抗凝固療法中のAPSやaPLが陰性化しているAPSも、HRTを行わないほうが良い
  • aPL陽性の既往がある、現在は陰性化している無症候性陽性者は、HRTの希望がある場合、検討しても良い

2020年2月16日日曜日

COVID19の診断と治療

COVID19の臨床像と対処法がわかりやすくまとめられた、中国のガイドラインがとても参考になったので紹介します。
CT画像がたくさん掲載されているので、時間がない方はリンク先の写真だけでも見ると参考になるかと思います。


Mil Med Res. 2020 Feb 6;7(1):4.
https://mmrjournal.biomedcentral.com/articles/10.1186/s40779-020-0233-6

疫学

  • ヒトーヒト感染するウィルスで、主な伝播経路は飛沫による呼吸器感染
  • 潜伏期間は3〜7日で最大14日、SARSと異なり潜伏期間中にも感染性を有する
  • ほとんどは予後良好で少数が重篤化するが、小児の症状は比較的軽度
  • 死亡例は高齢や慢性疾患(糖尿病、高血圧、心疾患)を有する者で多く認められる

症状・診断

  • 主な症状は発熱、疲労、乾性咳嗽、呼吸困難で、鼻汁・鼻閉等の上気道症状が見られることもある
  • 典型的なCT画像は、両肺の 区域性・亜区域性分布する多発性・斑状すりガラス陰影
  • 白血球数はやや減少、リンパ球数が減少、単球はやや増加することが多い
  • ほとんどの重症患者でD-dimerが著増し、凝固障害と末梢血管の微小血栓形成を伴っていた

治療

  • 薬物治療でエビデンスのあるものはない
  • IFN-α吸入(500万単位 1日2回)は弱い推奨
  • SARS/MERSで重症化抑制効果のあったロピナビル+リトナビルはRCTで検証中
  • ステロイドはcontroversial


2020年1月30日木曜日

IDSA市中肺炎ガイドライン2019

少し前ですが、IDSA(米国感染症学会)の市中肺炎ガイドラインが改定されました。
内容を全部解説すると冗長になるので、重要な点だけサマライズしてご紹介します。


Am J Respir Crit Care Med. 2019 Oct 1;200(7):e45-e67.

  • 喀痰グラム染色、血液培養、尿中肺炎球菌・レジオネラ抗原はルーチンで行わない
  • 喀痰グラム染色と血液培養は、重症例、MRSA・緑膿菌が疑われる例で検討する
  • プロカルシトニンを抗菌薬治療の判断に使用しない
  • 軽症肺炎を外来で治療する場合はアモキシシリン単独でも良い
  • 入院が必要な肺炎はβラクタム+マクロライドで治療する
  • 介護関連肺炎はそれほどMRSAや緑膿菌の関与が多くはないことがわかったため、ルーチンにはカバーしないことを推奨
  • 誤嚥性肺炎で嫌気性菌をルーチンにカバーすることは不要
  • 市中肺炎では重症であってもステロイドをルーチンに使用することは不要
  • インフルエンザ陽性の肺炎では抗菌薬と抗ウィルス薬を併用することを推奨
  • 肺炎の抗菌薬は臨床症状が改善するまで、最低5日以上投与する
  • 胸部のフォローアップ画像検査はルーチンには行わない


雑感:
グラム染色不要、改善後のX線画像不要など、いかにもアメリカ的な内容で、日本のプラクティスとしては適用しかねるような記載もありますが、nallow spectrumが意識されている箇所も随所にあり、興味深い内容ではあります。
このガイドラインを利用するに当たって最も重要な点として、軽症肺炎の外来処方例にマクロライド単独レジメンの記載がありますが、日本の肺炎球菌のマクロライド耐性は50%を超えているため、マクロライド単独では肺炎を治療できないことに注意が必要です。