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2021年5月1日土曜日

SARS-CoV-2感染妊婦と新生児転帰の関連性

SARS-CoV-2陽性妊婦が入院し、入院中に分娩になり、新生児がPCR陽性、という稀有な経験をしました。

と、思っていたら、ちょうどピッタリの論文がJAMAに掲載されましたので紹介します。

先にサマライズすると、

  • SARS-CoV-2陽性妊婦は早産・新生児異常が有意に増えるが、垂直感染には起因していない
  • 垂直感染は1%以下と稀で、肺炎の頻度も低いと思われる



Association of Maternal SARS-CoV-2 Infection in Pregnancy With Neonatal Outcomes. 

JAMA. 2021 Apr 29.  doi: 10.1001/jama.2021.5775.

https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2779586


  • Design: スウェーデンの前向きコホート
  • 対象:2020.3.11~2021.1.31にスウェーデンの全出生児の92%を登録。奇形のある新生児は除外
  • 方法:SARS-CoV-2 陽性妊婦からの出生児を、傾向スコアを用いて最大4人の対照群とマッチさせて比較した


結果:

  • 88159名の新生児を登録、うち2323名(1.6%)がSARS-CoV-2陽性の母親から出生した
  • SARS-CoV-2陽性の母親の平均在胎期間は39.2 ± 2.2 週、対照群は39.6 ± 1.8 週
  • 早産(37週未満)の割合は,SARS-CoV-2陽性妊婦で205/2323 (8.8%),対照群で4719/85836 (5.5%)だった
  • 母親のSARS-CoV-2検査陽性は、新生児の複数の病的異常と有意に関連していた
    • 新生児の入院ケア (11.7% vs.8.4%, OR 1.47, 95%CI 1.26-1.70)
    • 新生児呼吸促迫症候群 (1.2% vs. 0.5%, OR 2.40, 95%CI 1.50-3.84)
    • 他のあらゆる新生児呼吸器疾患 (2.8% vs. 2.0%, OR 1.42, 95%CI 1.07-1.90)
    • 高ビリルビン血症(3.6% vs. 2.5%, OR 1.47, 95%CI 1.13-1.90)
    • 新生児死亡率 (0.30% vs. 0.12%, OR 2.55, 95%CI 0.99-6.57)
  • 退院時の母乳育児率 (94.4% vs. 95.1%, OR 0.84, 95%CI 0.67-1.05),NICU滞在期間 (中央値6日 vs. 6日, 95%CI -2-7日) は両群間で有意差はなかった
  • SARS-CoV-2陽性妊婦からの出生児のうち21人(0.90%)がSARS-CoV-2陽性だったが、先天性に肺炎を発症していた児はいなかった


解釈:

陽性妊婦からの出生では新生児以上の発生頻度が高くなり、死亡リスクも上がるようですが、これは在胎期間の短縮など母体の異常に起因しており、新生児のCOVID-19の発症・重症化によるものではないと解釈できそうです。

垂直感染はあったとしても1%以下と稀で、PCR陽性の新生児もこのコホートでは全て軽症でした。

Nは大きいですがイベント数が少なめなので、解釈には慎重であるべきですが、更に大規模なコホートが後に出てきても、大きく解釈が変わる可能性は低そうです。

コホートの本質とは外れますが、陽性妊婦でもほとんどが母乳育児をしており、問題は起きていないようですね。


2020年3月6日金曜日

性と生殖に関するACRガイドライン2020

リウマチ性疾患(RMD: Rheumatic and Musculoskeletal Diseases)における、性と生殖に関するACRガイドライン2020が出ました。

MMFはホルモン避妊薬の有効性を低下させる、体外受精は卵巣刺激中のエストロゲン濃度上昇により血栓リスクが高度に懸念される、など、知らないことが多かったので、とても勉強になりました。
例によって時間のない方はFigure1,2だけ見れば良いかもしれません。


Arthritis Rheumatol. 2020 Feb 23.
2020 American College of Rheumatology Guideline for the Management of Reproductive Health in Rheumatic and Musculoskeletal Diseases
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/art.41191

避妊法

  • Non-SLEのRMDでは、効果の低い避妊薬や避妊なしより、ホルモン避妊薬やIUDの使用を推奨する
  • aPL(-)の低活動性SLEでは、避妊なしよりも効果的な避妊薬(ホルモン避妊薬やIUD)の使用を強く推奨する
  • SLEでは経皮エストロゲン-プロゲスチンパッチを使用しないことを推奨する
  • 腎炎を含む中~重度活動性のSLEでは、エストロゲン含有避妊薬の臨床データが乏しいため、プロゲステロン避妊薬かIUDの使用を強く推奨する
  • aPL陽性者は合併症の有無に関わらず、エストロゲンを含む避妊薬は血栓リスク増大のため禁忌
  • aPL陽性者ではDMPAを除くプロゲステロン避妊薬は使用できるが、避妊効果は劣る
  • ステロイドや基礎疾患に伴う骨粗鬆症リスクが高い場合、DMPAを避けることを検討する
  • MMFは血清エストロゲン及びプロゲステロンレベルを下げる可能性があるため、ホルモン避妊薬の有効性が妨げられる懸念がある
  • MMF服用者は、IUD単独または他の2つの避妊方法の併用を検討する

生殖補助療法(ART)  

  • 妊娠適応薬を服用下に疾患活動性が安定した、aPL(-)で合併症のないRMDでは、必要に応じてARTを行って良い
  • 中~重度活動性のSLEでは、妊娠リスクが高い懸念からARTを延期することを推奨する
  • ART処置中のSLEでは、経験的なステロイド増量を検討しても良い
  • ART処置中の無症候性aPL陽性者では、ヘパリンまたは低分子量ヘパリンによる予防的抗凝固療法を検討する
  • 状態が安定しているRMDで卵母細胞または胚の凍結保存の際、免疫抑制剤・生物学的製剤の継続を強く推奨する(シクロフォスファミドは除く。MTXは継続して良い)

妊孕性

  • IVCYを行う閉経前RMDの卵巣機能不全予防のため、毎月のGnRHアゴニスト療法を検討してよい
  • 男性の健児を妊娠する生殖能力保全のため、CY治療前の凍結精子保存を希望する場合は行うことを強く推奨する

閉経後ホルモン療法(HRT)

  • aPL(-)のSLE患者では、重度の血管運動症状に対するHRTの希望がある場合、考慮しても良い(ループスフレアのリスクがわずかに増加するため条件付き推奨となっている)
  • 無症候性aPL陽性者では、HRTを行わないほうが良い
  • obstetric and/or thrombotic APSでは、HRTを行わないことを強く推奨する
  • 抗凝固療法中のAPSやaPLが陰性化しているAPSも、HRTを行わないほうが良い
  • aPL陽性の既往がある、現在は陰性化している無症候性陽性者は、HRTの希望がある場合、検討しても良い