自己免疫疾患の治療中に見られるCMV抗原血症をPre-emtiveに治療してしまうということは時々あるのですが、どのくらい妥当なのか改めて調べてみました。
固形臓器レシピエントのCMV再活性化を予測する因子を解析した前向き研究が、参考になりそうでした。
今回読んだ2つの論文では、固形臓器移植のCMV抗原血症の発症率は47~62%、CMV diseaseは3~20%、一方SLE、non-SLE自己免疫疾患のCMV抗原血症は、それぞれ58.6%、11.4%、という前向き観察研究があり(PLoS One. 2019 Aug 28;14(8):e0221793)、CMV diseaseはループス腎炎の後ろ向き観察研究で5.3%程度(Clin Exp Med. 2017 Nov;17(4):467-475.)ということでした。
固形臓器移植では使用している薬剤もPSL、MMF、Cyclosporine、TacrolimusなどSLEと類似しています。これを踏まえると固形臓器移植のCMV diseaseのリスクは、自己免疫疾患より少し高いくらいなのかなと思います。
抗原10程度だとPPVが20~60%くらいなので、Pre-emptiveに全例治療するレベルではない気がしますが、30などもう少し高い値になってくるとPPVが100%に近くなっているので、Pre-emtiveが成立するレベルのリスクなのかなという気がします。
Transplantation. 1999 Nov 15;68(9):1305-11.
- デザイン:前向き観察研究
- 対象:97人の連続肝移植レシピエント
- 方法:毎週の定量的PCRによるウイルス量測定、および抗原血症アッセイ
- ※抗原定量アッセイはReferenceを読んでみましたが、C10/11法だと思われます(Journal of Medical Virology, 25(2), 179–188.)
- 結果
- CMV抗原血症は62.9% (61/97)、CMV diseaseは20.6% (20/97)
- 抗原定量値は、CMV diseaseでは39.2±22.2、無症候性では2.9±0.6
- PCRのウィルス量は、CMV diseaseでは33624±10126、無症候性では1902±369
- CMV disease予測のROC曲線は以下の通りで、適切なカットオフは、PCRは>5000(PPV 64.3%, NPV 95.7%)、抗原では>6(PPV60.7%, NPV 94.2%)
2つ目は固形臓器移植で同様の検討をしている論文です。このStudyではPCRしか見ていませんが、Validationコホートのサンプルサイズは252と大きいです。
J Clin Virol. 2013 Jan;56(1):13-8.
- デザイン:前向き観察研究
- 対象:CMV抗体陽性の連続した腎・肝・心移植患者(N=252)
- 方法:CMV-PCRを移植100日目までは2週毎、101~180日目は4週毎に実施して評価した
- 結果:
- CMV抗原血症は47.2% (119/252)、Pre-emptive治療を60例に実施し、CMV diseaseは3.6%(9/252)
- CMV disease予測の適切なカットオフは>3983(PPV 20.7%、NPV 99.2%)
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