待ちに待ったバリシチニブのRCT結果がNEJMに掲載されました。
RECOVERY試験ほどのインパクトはありませんが、酸素が始まったタイミング、あるいは5L以上になるような場合に良い適応なのではないかと思われます。選択肢が増えるのは良いことですが、デカドロンとの使い分けや併用すべきなのかなど、実際に使う場合には色々と課題が残ります。
Baricitinib plus Remdesivir for Hospitalized Adults with Covid-19
N Engl J Med. Dec 11, 2020.
DOI: 10.1056/NEJMoa2031994
- Design: 国際共同多施設 double-blind RCT
- P: 入院が必要な成人COVID-19
- I: バリシチニブ(4mg/day, 14日間, eGFR<60は2mg/day)+レムデシビル(10日間or退院まで)
- C: プラセボ+レムデシビル 1:1割付
- 両群ともステロイドの併用はしていない
- O: 主要エンドポイントは回復(カテゴリー3以下)までの日数(層別Log-rank test)
※ 重症度カテゴリーはACTT-1と同じ(下記参考)
1=活動制限なし
2=活動制限があるが入院不要
3=酸素や医療ケアは不要だが入院が必要(感染管理のための入院)
4=酸素は不要だがCOVID-19に関連した活動制限による医療ケアが必要
5=酸素が必要
6=NIPPVや高流量の酸素が必要
7=機械的換気やECMOが必要
8=死亡
結果
- 1067人を登録、515人がバリシチニブ群、518人がプラセボ群に割り付けられた
- 発症から登録までの日数の中央値は8日だった
- バリシチニブ群、プラセボ群のベースライン重症度は、各々カテゴリ4が13.6%, 13.9%、カテゴリ5が55.9%, 53.3%、カテゴリ6が20.0%, 21.8%、カテゴリ7が10.5%, 11.0%
- バリシチニブ群の回復までの日数は中央値7日で、プラセボ群の8日と比較して有意に短かった (RR 1.16, 95%CI: 1.01-1.32; P<0.03)
- カテゴリ6 (N=216) における回復率比が1.51 (95%CI: 1.10-2.08) と最も大きく、改善までの日数を中央値で8日間短縮した
- カテゴリ5 (N=564) における回復率比は1.17 (95%CI: 0.98-1.39) だった
- カテゴリ7 (N=111) における回復率比は1.08 (95%CI: 0.59-1.97) だった
- バリシチニブ群の28日死亡率はプラセボ群と比較して低い傾向だった(5.1% vs 7.8%, HR 0.65, 95%CI: 0.39-1.09)
- 機械換気・ECMOへの移行はバリシチニブ群で有意に少なかった(10.0% vs 15.2%; リスク差 −5.2%; 95%CI: −9.5 ~ −0.9)
- 重篤な有害事象はバリシチニブ群で40.7%、プラセボ群で46.8%、内訳は貧血、AKI、腎機能障害、高血糖などだが、両群における発生率に大きな差はない
感想
気になる点はEffect sizeが期待よりもかなり小さいことですが、比較的重症化したカテゴリ6(高流量酸素)の状態で最も効果が大きいにも関わらずACTT-1よりも軽症者が多く登録されてしまった影響が大きいように見えます。
軽症者が多いことや、ベースでレムデシビルが入っているせいなのか、死亡率も軒並み低いので、死亡率の評価も惜しい感じにとどまっているようです。死亡率や挿管率の低減効果も含めて、重症度を上げた適切な組入基準での追試が必要でしょうね。
サンプルサイズも、軽症者が多いため最重要であるカテゴリ6で100 vs 100であり、他の虹エンドポイントもUnder estimateされている可能性が十分残されています。挿管率では有意差が出ているので、死亡率もNを増やすことで有意差が出るかもしれないと期待させてくれるポテンシャルを感じます。
色々問題点を残しているとはいえ、臨床的有効性はあまり疑いようがなさそうに見えますので、今後レムデシビル+デカドロンで病勢が止まらなそうな症例には使っていきたいですね。
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