血液培養の小型GPRといえばCorynebacteriumが大半であり、ほとんどがコンタミかCRBSIですが、Actinotignum schaalii に年1,2回くらいは出会います(よね?)。
知っていると役立つこともあるので、一番新しいと思われる総説を抜粋してまとめました。
先にサマライズすると、
- 尿路・生殖器の常在菌でコリネ等と誤認しやすいが、高齢者UTIの原因になる
- 好気で発育しにくい小型GPRで、検出には5%炭酸培養・嫌気培養が有用
- βラクタムは何でも効くが、ST・キノロンは耐性が多く、嫌気性菌なのにMNZが無効
Actinobaculum schaalii: review of an emerging uropathogen.
J Infect. 2012 Mar;64(3):260-7.
doi: 10.1016/j.jinf.2011.12.009.
微生物学的特徴
- 非運動性、非芽胞形成、直線もしくは軽度弯曲したグラム陽性の球桿菌で、一部に枝分かれしているものもある
- カタラーゼ、オキシダーゼ、ウレアーゼは陰性で、ウレアーゼ陰性であることでA. schaaliiとA. urinaleを区別できる(Table1)
- 硝酸塩を亜硝酸塩に還元しない
- 35℃の嫌気環境で48時間培養した5%コロンビアヒツジ血液寒天培地では、直径1mm以下の小さな灰色のコロニーを形成する(Fig2b)
- 5%CO2の空気中では発育し、大気中ではあまり発育しない
- 菌株によっては3~5日後に弱いβ溶血を示すものもある
疫学
- 尿路または生殖器系の常在菌叢の一部と考えられている
- 分離・同定が難しい微生物であるため、検出頻度は不明で、臨床的意義も過小評価されている可能性がある。
- PCR法を用いた検討で、41/252(16%)の尿検体でA. schaaliiが検出され、菌数は10^4 CFU/mL以上だった。60歳以上の患者ではさらに高頻度だった(34/155、22%)
- 無症候性細菌尿が10~20%あるため、Colonizationと感染の区別は難しいが、従来考えられていたよりも A. schaalii 感染症の頻度は高いと考えられている。
臨床症状
- 現在までに117例の A. schaalii 感染症が症例報告されていた
- 約60%が男性、約40%が女性とそれほど性差はない。
- 泌尿器系疾患のある高齢者においてUTIの原因となることが多い(Table2)
- UTI以外では脊椎炎、菌血症、心内膜炎などを引き起こすことがある
微生物学的診断
- 好気環境では他の細菌にovergrownされたり、皮膚・粘膜の常在菌に似ているため見過ごされたり、CorynebacteriumやLactobacillusなどの汚染菌と誤認されたりする
- 塗抹所見と好気培養の同定結果が一致しない場合や無菌性膿尿ではA. schaaliiを検索する必要があり、尿定性試験の亜硝酸が陰性であることも重要である
- A. schaalii の検出には5%CO2や嫌気下での血液寒天培地の培養が必要である
- 自動分析装置での検出には限界があり、MALDI-TOF-MSによる同定が非常に有用である
薬剤感受性
- ブレイクポイント設定はないが、non-species-related(訳注:EUCASTのPK/PDブレイクポイントを指していると思われる)や他の泌尿器系病原体の基準を用いることができるかもしれない
- ペニシリン、セファロスポリン、アミノグリコシド、テトラサイクリン,バンコマイシン,リネゾリドには高い感受性がある
- クリンダマイシンは概ね感受性があるが、一部に高度耐性が見られた
- シプロフロキサシンの活性は低いが、レボフロキサシン、モキシフロキサシンには感受性を示す
- STには概ね耐性で、メトロニダゾールとコリスチンは内因性に耐性である
治療
- アモキシシリン、セフロキシム、セフトリアキソンの単独投与、もしくはアミノグリコシド(ゲンタマイシン)の併用投与が選択される
- 治療期間は明確に定まっていないが、アモキシシリン1週間での治療失敗例があるため、少なくとも2週間治療すべきである
- A. schaaliiは嫌気性菌だがメトロニダゾール無効である
- キノロン系は感受性があっても推奨されない
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