モルヌピラビル(ラゲブリオ)が製造販売承認されました。
発症早期の選択肢が、モノクローナル抗体、モルヌピラビル、 レムデシビルOPAT、パクスロビド、など突然増えたので、今後はどのように使い分けるか考えなくてはなりませんね。
ひとまずモルヌピラビルのRCTをまとめました。
禁忌が少ないことやEffect sizeからは抗体療法が僅かに勝っているように感じましたが、
変異株の影響を受けにくいだろうことや(多分) コストの点ではモルヌピラビルが有利になりそうです。
Molnupiravir for Oral Treatment of Covid-19 in Nonhospitalized Patients
N Engl J Med. 2021 Dec 16.
doi: 10.1056/NEJMoa2116044.
- Design: Double-blind RCT
- P: 発症5日以内でリスク因子が1つ以上ある、軽症・
中等症の入院していないCOVID-19 - リスク因子:60歳以上、活動性の癌、CKD、COPD、
BMI≥30、重篤な心疾患、糖尿病 - 除外基準:透析、eGFR<30、妊婦、
ワクチン2回以上接種者、好中球<500、Plt<10万 - I: モルヌピラビル800mg 1日2回 5日間
- C: プラセボ 1:1
- O: day29における入院or死亡(ITT集団)
結果:
- 716名がモルヌピラビル群、
717名がプラセボ群に割り付けられた - 年齢中央値は43才で、危険因子は肥満73.7%、
60歳以上17.2%、DM 15.9%が含まれた - ベースラインのSARS-CoV-2抗体は19.8%で陽性
- バリアントはデルタ株32.1%、ミュー株11.3%、
ガンマ株5.9%、データなし44.7%
- day29の入院または死亡は、モルヌピラビル群7.3% (28/385)、プラセボ群14.1% (53/377)、絶対リスク差6.8% (95%CI -11.3 ~ -2.4; P=0.001) →NNT=14.7
- Time-to-Event解析も同様で、
入院または死亡のハザード比は0.69 (95%CI: 0.48-1.01) →グラフ目視上ARR2.5%くらいなので、NNT=40
- 死亡はモルヌピラビル群1例(29日死亡率0.1%)、
プラセボ群9例(29日死亡率1.3%) - モルヌピラビル群はday3, 5, 10においてウイルス量の減少がプラセボより大きかった
- WHO Scaleの評価で、
モルヌピラビル群はプラセボ群と比較してday5までに臨床転帰 が改善し、day10とday15で最も大きな差が観察された( Supple S5) - サブ解析では、女性、発症4日以降、SARS-CoV-
2抗体陰性、肥満、白人でのメリットが有意だった( 発症3日以内、SARS-CoV-2抗体陽性、DM、 60才以上は有意差なし) - 試験レジメンに関連する頻度の高い有害事象は、下痢(1.7% vs 2.1%)、吐気(1.4% vs 0.7%)、めまい(1.0% vs 0.7%)などで、両群で明らかな差はなかった
補足:
- レムデシビルOPATと異なり、重症化率、死亡率、
症状の改善はウィルス量とリンクしており、 信憑性が高い試験に見えます - 妊婦やeGFR<30が対象外であり、この点は抗体療法(
と一応禁忌ではないレムデシビル)が有利です - レムデシビルより有害事象が少なそうに見えます
- Time-to-EventのNNTを単純比較すれば、
ソトロビマブ(17)>レムデシビルOPAT(20)> モルヌピラビル(40)であり、抗体療法が最も良い成績 - どの薬剤も現時点ではオミクロン株の臨床データがないので、
デルタ株データからの推定
参考文献
- ソトロビマブ:N Engl J Med 2021; 385:1941-1950. DOI: 10.1056/NEJMoa2107934
- レムデシビルOPAT:N Engl J Med Dec 22, 2021 [Epub]. DOI: 10.1056/NEJMoa2116846
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