2021年12月26日日曜日

COVID-19に対するモルヌピラビルの効果(MOVe-OUT試験)

モルヌピラビル(ラゲブリオ)が製造販売承認されました。

発症早期の選択肢が、モノクローナル抗体、モルヌピラビル、レムデシビルOPAT、パクスロビド、など突然増えたので、今後はどのように使い分けるか考えなくてはなりませんね。

ひとまずモルヌピラビルのRCTをまとめました。
禁忌が少ないことやEffect sizeからは抗体療法が僅かに勝っているように感じましたが、
変異株の影響を受けにくいだろうことや(多分)コストの点ではモルヌピラビルが有利になりそうです。


Molnupiravir for Oral Treatment of Covid-19 in Nonhospitalized Patients

N Engl J Med. 2021 Dec 16.

doi: 10.1056/NEJMoa2116044.


  • Design: Double-blind RCT
  • P: 発症5日以内でリスク因子が1つ以上ある、軽症・中等症の入院していないCOVID-19
    • リスク因子:60歳以上、活動性の癌、CKD、COPD、BMI≥30、重篤な心疾患、糖尿病
    • 除外基準:透析、eGFR<30、妊婦、ワクチン2回以上接種者、好中球<500、Plt<10万
  • I: モルヌピラビル800mg 1日2回 5日間
  • C: プラセボ 1:1
  • O: day29における入院or死亡(ITT集団)


結果:

  • 716名がモルヌピラビル群、717名がプラセボ群に割り付けられた
  • 年齢中央値は43才で、危険因子は肥満73.7%、60歳以上17.2%、DM 15.9%が含まれた
  • ベースラインのSARS-CoV-2抗体は19.8%で陽性
  • バリアントはデルタ株32.1%、ミュー株11.3%、ガンマ株5.9%、データなし44.7%

  • day29の入院または死亡は、モルヌピラビル群7.3% (28/385)、プラセボ群14.1% (53/377)、絶対リスク差6.8% (95%CI -11.3 ~ -2.4; P=0.001) →NNT=14.7
  • Time-to-Event解析も同様で、入院または死亡のハザード比は0.69 (95%CI: 0.48-1.01) →グラフ目視上ARR2.5%くらいなので、NNT=40




  • 死亡はモルヌピラビル群1例(29日死亡率0.1%)、プラセボ群9例(29日死亡率1.3%)
  • モルヌピラビル群はday3, 5, 10においてウイルス量の減少がプラセボより大きかった
  • WHO Scaleの評価で、モルヌピラビル群はプラセボ群と比較してday5までに臨床転帰が改善し、day10とday15で最も大きな差が観察された(Supple S5)
  • サブ解析では、女性、発症4日以降、SARS-CoV-2抗体陰性、肥満、白人でのメリットが有意だった(発症3日以内、SARS-CoV-2抗体陽性、DM、60才以上は有意差なし)
  • 試験レジメンに関連する頻度の高い有害事象は、下痢(1.7% vs 2.1%)、吐気(1.4% vs 0.7%)、めまい(1.0% vs 0.7%)などで、両群で明らかな差はなかった


補足:

  • レムデシビルOPATと異なり、重症化率、死亡率、症状の改善はウィルス量とリンクしており、信憑性が高い試験に見えます
  • 妊婦やeGFR<30が対象外であり、この点は抗体療法(と一応禁忌ではないレムデシビル)が有利です
  • レムデシビルより有害事象が少なそうに見えます
  • Time-to-EventのNNTを単純比較すれば、ソトロビマブ(17)>レムデシビルOPAT(20)>モルヌピラビル(40)であり、抗体療法が最も良い成績
  • どの薬剤も現時点ではオミクロン株の臨床データがないので、デルタ株データからの推定



参考文献

  • ソトロビマブ:N Engl J Med 2021; 385:1941-1950.  DOI: 10.1056/NEJMoa2107934
  • レムデシビルOPAT:N Engl J Med Dec 22, 2021 [Epub].  DOI: 10.1056/NEJMoa2116846


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