2020年4月18日土曜日

抗CarP抗体:RA-ILDにおける新規自己抗体

実用化されそうなレベルで差が出ている、RA-ILDの新規バイオマーカーの論文です。


Ann Rheum Dis. 2020 May;79(5):587-594. 
Anti-carbamylated Proteins Antibody Repertoire in Rheumatoid Arthritis: Evidence of a New Autoantibody Linked to Interstitial Lung Disease

目的

  • RAにおける抗carbamylated protein抗体(Anti-Carp)とILDの関連を分析する

デザイン

  • 横断研究

対象

  • 2010ACR/EULAR基準を満たすRA

方法

  • HRCTでILDと診断された群(RA-ILD)と、そうでない群(non-RA-ILD)を比較
  • 3つのAnti-CarP-IgG (Anti-FCS、Anti-Fib、Anti-CFFHP)、1つのAnti-CarP-IgA (Anti-FCS-IgA)がELISA法で測定された

結果

  • 179人の患者を登録し、37人(21%)がRA-ILDと診断
  • Anti-CarP抗体陽性はnon-RA-ILDと比較してRA-ILDに有意に多かった
    • Anti-FCS: 92% vs 48%, p<0.005
    • Anti-Fib: 76% vs 58%, p=0.12
    • Anti-CFFHP: 36% vs 18%, p=0.08

  • この差はロジスティック回帰分析を用いて、年齢、罹病期間、ACPA、RF、性別、累積喫煙量で補正しても有意であった
    • Anti-FCS: OR 3.42, 95%CI 1.13-10.40
    • Anti-CFFHP: OR 3.12, 95%CI 1.06-9.14
    • Anti-FCS-IgA: OR 4.30, 95%CI 1.41-13.04

2020年4月11日土曜日

COVID-19に対するレムデシビルの治療成績

日本の施設も参加しているレムデシビルのCompassionate useのまとめがNEJMに掲載されています。
従来治療と比較してとりわけ成績が良いようにも見えませんが貴重なデータです。


N Engl J Med. April 10, 2020
Compassionate Use of Remdesivir for Patients with Severe Covid-19.

  • Background: レムデシビルはSARS-CoV2ウィルスに対するin vitro活性が示されている
  • Design: Opne labelの前向き観察研究(compassionate use)
  • P: 室内気SpO2≤94%または酸素療法が必要なCOVID-19 
  • E: レムデシビル(初日200mg、その後の9日間100mg、計10日間静注)
  • C: なし
  • O: Endpoint設定なし。酸素サポート要件、有害事象、血液検査値、臨床的改善率などを評価

結果

  • 61人を登録、53人のデータを解析可能だった(7名がデータ不足、1名が投与エラーで除外)
  • 40人(75%)が10日間、10人(19%)が5〜9日、3人(6%)が5日未満のレムデシビル投与を受けた
  • 発症からレムデシビル投与までの期間は中央値12日(IQR: 9-15)
  • ベースラインでは30人 (57%)が人工呼吸器、4人(8%)がECMOだった
  • 観察期間中央値は18日(IQR: 12-23)
  • 36/53(68%)が酸素サポートが改善、8/53(15%)が悪化
  • IPPVでは17/30(57%)が抜管、ECMOでは3/4(75%)が離脱した
  • 最終観察時に25/53(47%)が退院、7/53(13%)が死亡
  • 死亡はIPPV患者で16/34(18%)、非IPPV患者では1/19(5%)だった
  • 28日後における臨床的改善(6段階尺度の2以上改善または生存退院)は84%(95%CI 70-99%)
    ※6段階尺度 1:非入院, 2:室内気, 3:酸素あり, 4:NHF or NIPPV, 5:IPPV or ECMO, 6:死亡
  • 有害事象は肝酵素上昇、下痢、発疹、腎障害、低血圧が多かった
  • 重篤な有害事象は12人(23%)に発生し、内訳は多臓器不全症、敗血症性ショック、AKI、低血圧だった

2020年4月5日日曜日

SARS-CoV2の経時的Viability

SARS-CoV2の経時的Viabilityを検討した論文が出ています。
COVID-19を真面目に診療している病院のベッドはもう限界に達しており、早急に新たな退院基準を検討する時期に来ています。退院基準の根拠となりうる非常に重要な論文です。

Nature. 01 April 2020
Virological assessment of hospitalized patients with COVID-2019.
  • 9症例のCOVID-19患者の各検体におけるウィルス学的解析
  • 発症1~5日目の咽頭・鼻咽頭PCRは100%陽性で、平均ウィルス量は6.76x10^5  copies
  • 発症5日目以降の咽頭・鼻咽頭PCRは39.93%陽性で、平均ウィルス量は 3.44x10^5 copies
  • 尿と血清サンプルで陽性のものはなかった
  • 発症1週間以内の咽頭・鼻咽頭の16.66%、痰の83.33%でウィルス培養が陽性だった
  • 発症8日目以降の咽頭・鼻咽頭では高ウィルス量にも関わらず、ウィルス培養は陰性だった
  • Probitモデルによる推定で、発症から培養陰性化までの期間は9.78日 (95%CI: 8.45~21.78)

  • 同様の推定で培養陰性化に相当するウィルス量は、6.51 Log10 (95%CI:-4.11~5.40)
  • 全ての便でウィルス培養は陰性だった(発症6~12日に採取)
  • ウィルスの活発な複製を意味するsgRNAは、咽頭は4/5日目で高く、6/7日目以降は検出されなかった
  • 痰のsgRNAは10/11日目まで持続的に減少しつつも検出され続けた


感想:

ウィルス量と臨床症状、ウィルスのViabilityの相関はかなり悪そうです。Probitモデルの推定でも95%CIは0を跨いでおり、使い物にならない印象です。
想像していたとおりPCR陰性化まで隔離を続ける意味は低そうで、鼻咽頭スワブのウィルス培養が陰性化すると考えられる発症10日目がベッドを有効活用するための退院の目安の一つだと思いますが、痰のウィルス複製がそれを超えてかなり長期間持続している点は気になりました。