2020年10月28日水曜日

COVID-19に対するトシリズマブのRCT

NEJMに載った話題のトシリズマブRCTの結果です。


Efficacy of Tocilizumab in Patients Hospitalized with Covid-19.

NEJM October 21, 2020

DOI: 10.1056/NEJMoa2028836


  • Design: double-blind RCT
  • P: 38度以上、肺浸潤影、酸素投与のうち2つ以上、かつCRP>5、Ferritin>500、D-dimer>1のうち1つ以上を満たすCOVID-19
  • I: トシリズマブ8mg/kg (Max 800mg) 単回投与+標準治療
  • C: プラセボ(2:1)+標準治療
  • O: 挿管もしくは死亡までの時間
  • ※標準治療はレムデシビルを一部含むが、デキサメサゾンを投与された患者はいなかった
  • ※標準治療によるイベント発生を30%と想定し、トシリズマブによるリスク軽減が15%の仮定で、検出力80%におけるサンプル数は243と試算された


結果

  • 243人の患者が登録され、161人がトシリズマブ群、81人がプラセボ群に割り付けられた
  • プラセボと比較したトシリズマブ群の挿管・死亡までのHRは0.83 (95%CI 0.38-1.81)で有意差なし


  • 年齢、性別、人種、糖尿病の状態、ベースラインIL-6で調整したHRは0.66 (95%CI 0.28-1.52)で有意差なし。調整前及び調整後HRの差異は、主に年齢の違いに起因していた
  • プラセボ群ではGrade3以上の感染症が有意に多く、トシリズマブ群ではGrade3以上の好中球減少が多かった


感想

かなり頑強なデザインのRCTでサンプル数が十分であったにも関わらず、主要エンドポイントだけでなく代替エンドポイントもことごとく有意差がなく、トシリズマブの有効性はかなり否定的になってしまったと考えざるを得ません。サンプル計算の想定よりもイベント数がかなり少ないので検出力不足の可能性は残るものの、あまりに厳しい差なのでNを増やしても結果が変わるとは思い難いです。

JAMA姉妹誌のEditorialにトシリズマブRCTの素晴らしい比較が出ていました。観察研究では高い有効性の報告が多いが、RCTでは結果が出せていないと考察されています。いずれのRCTもハードエンドポイントでの有効性が示せていないか、もしくはEffect sizeがかなり小さくなっており、なかなか厳しい展開に感じます。

JAMA Intern Med. October 20, 2020. doi:10.1001/jamainternmed.2020.6557


重症COVID-19の濾胞外B cellのprofileがSLEと類似しており、Long haul COVID-19における自己免疫現象と、SLEを関連付けている報告が話題になっているようです。  

Nat Immunol (2020). doi.org/10.1038/s41590-020-00814-z

なんとなくJAK阻害薬の方が効きそうな気がしてきます。ルキソリチニブのRCTが近いうちに結果が出ると思いますので楽しみですね。


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