2021年3月31日水曜日

梅毒と関節炎

大関節主体の多関節炎をきたした二期梅毒の症例を経験しました。

分布はやや右有意で、手関節、足関節のエコーではかなり著しい腱鞘滑膜炎が認められましたが、腱鞘滑膜の肥厚に比してドップラー血流は乏しかったです。でも関節はめちゃくちゃ痛がっており、問診・診察上の関節炎所見は明らかです。脊椎、付着部などはintactでした。


梅毒では滑膜炎や関節痛が起きうる、と成書には書いてありますが、頻度や臨床像など、あまり詳しい記載はありません。僕もよく知らなかったので少し調べてみましたが、あまりまとまった報告はないようで、少なくとも多関節炎の鑑別で出てくるほどメジャーなものではないですよね。


Joint Bone Spine. 2009 May;76(3):293-5.

  • 梅毒の関節炎は主に二期に生じる。
  • 多関節痛、多発性関節炎、腱鞘炎、椎間板炎、仙腸関節炎、骨炎、骨膜炎が生じうる(要するに病型は何でもあり・・・頻度の差はあるのでしょうがレビューはされていない)


Scand J Rheumatol. 2016 Jul;45(4):336-7.

Ann Med Interne (Paris). 1989;140(2):152.

  • 梅毒の関節炎は急性のOligo arthritisで、大関節が主体、移動性のことが多い。
  • リウマチ熱や反応性関節炎に類似する。


Bull Epidemiol Hebd 2011;26–8.

  • 関節痛は梅毒の10%に見られるが、関節炎は稀。


Rev Rhum Mal Osteoartic. 1970 Jun-Jul;37(6):431-6.

  • 60000例の梅毒のうち、関節炎4例の報告。


Rheum Dis Clin North Am. 1993 May;19(2):379-98.

  • 梅毒における関節痛、関節炎、筋骨格症状は抗菌薬治療で速やかに軽快する。
  • ちなみに、他の症例報告でも全て速やかに軽快しているようでした。


Arthritis Rheumatol. 2018 Jan;70(1):133.

  • 三期梅毒で破壊性関節炎に至った症例報告。


J Eur Acad Dermatol Venereol. 2017 Aug;31(8):e381-e382.

  • HIV-IRISの関節炎で、関節液Nested PCRで梅毒の増幅産物が検出されたという報告。



反応性関節炎に類似した病型なので、二期梅毒の関節炎の多くは免疫学的機序なのだろうと思いますが、HIVの症例報告のように化膿性関節炎として発症することもあるようですし、三期だと骨破壊もあるみたいなので、菌体そのもののによる直接的関節炎も結構あるのかもしれないと思いました。

エコー所見など、詳しい方がいたら教えて下さい(Pubmedの報告は皆無)


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