話題のトシリズマブRECOVERY試験のPre-printです。トシリズマブは散々の紆余曲折となりましたが、何となくこれで結論が出たのだろうという気がします。
それにしても、イギリスの発信力は凄まじいものがありますね。
medRxiv. Pre-print Posted February 11, 2021.
https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2021.02.11.21249258v1
- Design: Open-label RCT
- P: SpO2<92%、CRP≥7.5mg/dLを満たすCOVID-19
- I: トシリズマブ
- BW>90kg: 800mg, 90≥BW>65: 600mg, 65≥BW>40: 400mg, 40kg≥BW: 8mg/kg
- ※改善が不十分な場合、12~24時間後に2回目の投与を行うことができる
- C: 標準治療 1:1割付
- O: 28日死亡率、ITT解析
- 標準治療群の28日死亡率が25%の場合に、有意水準1%、検出力90%で、TCZ群の死亡率減少効果が20%と想定したサンプルサイズは各群2000と試算された
結果:
- TCZ群に2022名、標準治療群に2094名が割り付けられた
- データ収集が終了したのはTCZ群1602名、標準治療群で1664名で、それらのうちTCZ群では17%にTCZが投与されず、標準治療群の2.6%にTCZが投与された
- 評価対象となった4116例の重症度は、機械換気562例(14%)、NIPPV 1686例(41%)、酸素投与1868例(45%)であった
- CRP中央値は14.3 [IQR 10.7-20.4] mg/dLで、3385人(82%)が組入時にステロイドを投与されていた
- 28日死亡率は、TCZ群29% (596/2022)と、通常治療群33% (694/2094)と比較して有意に低かった (RR 0.86, 95%CI: 0.77-0.96, p=0.007)
- 死亡率の改善効果はステロイド使用者でより顕著だった(RR 0.80, 95%CI: 0.70−0.90, Fig3)
- 機械換気を受けていない患者における、機械換気移行率+死亡率はTCZ群で有意に低かった(33% vs. 38%, RR 0.85, 95%CI 0.78-0-93, p=0.0005)
考察:
対象は70才以下の患者が主に組み入れられており、86%が未挿管の酸素投与患者と、最も視聴率が高い集団です。これまでの主要な複数のRCTで示されなかった死亡率の改善が、NNT25という十分なEffect sizeで示されています。
なぜこれまでのRCTと結果が異なるのか、というのが最大の問題ですが、CRPが高い患者を組み入れたこと、デキサメサゾン使用率が80%を超えており、高炎症状態でのステロイドとの併用効果が主な要因として考察されています。
これ以上ないほどに頑強なデザインのRCTなので、Figure4のメタ解析も含めて考えるとTCZは有効であるという結論が有力と考えて良さそうです。しかしこれまでと全く真逆の結果が出ていることは、まだ何となく釈然としない部分もありますね。
サブ解析ではWhiteしか有意差がついておらず、Asianに全ての場面で適応できるか、個人的には慎重に考えたいですが、今後は挿管になりそうな場面では積極的に使っていってよさそうな気がします。
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