SARS-CoV-2陽性妊婦が入院し、入院中に分娩になり、新生児がPCR陽性、という稀有な経験をしました。
と、思っていたら、ちょうどピッタリの論文がJAMAに掲載されましたので紹介します。
先にサマライズすると、
- SARS-CoV-2陽性妊婦は早産・新生児異常が有意に増えるが、垂直感染には起因していない
- 垂直感染は1%以下と稀で、肺炎の頻度も低いと思われる
Association of Maternal SARS-CoV-2 Infection in Pregnancy With Neonatal Outcomes.
JAMA. 2021 Apr 29. doi: 10.1001/jama.2021.5775.
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2779586
- Design: スウェーデンの前向きコホート
- 対象:2020.3.11~2021.1.31にスウェーデンの全出生児の92%を登録。奇形のある新生児は除外
- 方法:SARS-CoV-2 陽性妊婦からの出生児を、傾向スコアを用いて最大4人の対照群とマッチさせて比較した
結果:
- 88159名の新生児を登録、うち2323名(1.6%)がSARS-CoV-2陽性の母親から出生した
- SARS-CoV-2陽性の母親の平均在胎期間は39.2 ± 2.2 週、対照群は39.6 ± 1.8 週
- 早産(37週未満)の割合は,SARS-CoV-2陽性妊婦で205/2323 (8.8%),対照群で4719/85836 (5.5%)だった
- 母親のSARS-CoV-2検査陽性は、新生児の複数の病的異常と有意に関連していた
- 新生児の入院ケア (11.7% vs.8.4%, OR 1.47, 95%CI 1.26-1.70)
- 新生児呼吸促迫症候群 (1.2% vs. 0.5%, OR 2.40, 95%CI 1.50-3.84)
- 他のあらゆる新生児呼吸器疾患 (2.8% vs. 2.0%, OR 1.42, 95%CI 1.07-1.90)
- 高ビリルビン血症(3.6% vs. 2.5%, OR 1.47, 95%CI 1.13-1.90)
- 新生児死亡率 (0.30% vs. 0.12%, OR 2.55, 95%CI 0.99-6.57)
- 退院時の母乳育児率 (94.4% vs. 95.1%, OR 0.84, 95%CI 0.67-1.05),NICU滞在期間 (中央値6日 vs. 6日, 95%CI -2-7日) は両群間で有意差はなかった
- SARS-CoV-2陽性妊婦からの出生児のうち21人(0.90%)がSARS-CoV-2陽性だったが、先天性に肺炎を発症していた児はいなかった
解釈:
陽性妊婦からの出生では新生児以上の発生頻度が高くなり、死亡リスクも上がるようですが、これは在胎期間の短縮など母体の異常に起因しており、新生児のCOVID-19の発症・重症化によるものではないと解釈できそうです。
垂直感染はあったとしても1%以下と稀で、PCR陽性の新生児もこのコホートでは全て軽症でした。
Nは大きいですがイベント数が少なめなので、解釈には慎重であるべきですが、更に大規模なコホートが後に出てきても、大きく解釈が変わる可能性は低そうです。
コホートの本質とは外れますが、陽性妊婦でもほとんどが母乳育児をしており、問題は起きていないようですね。
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