感受性の分からないコリネバクテリウムにダプトマイシンは使いにくい、という話。
ダプトマイシンのMICがやや高いCorynebacteriumはしばしば目にしますが、そこまでよくあることでもないので、実際どのくらいなのか気になって調べてみました。
以下のようにダプトマイシン耐性株の症例報告はちょこちょこ引っかかります。
NVE:Antimicrob Agents Chemother. 2012 Jun;56(6):3461-4.
HSCT後の菌血症:J Clin Microbiol. 2009 Jul;47(7):2328-31.
PJI:BMC Infect Dis. 2022 Mar 26;22(1):290.
Antimicrob Agents Chemother. 2003 Jan;47(1):337-41.
これは米国のサンプルサイズのやや大きい研究ですが、29/31 (94%) がダプトマイシンに感受性あり、ということでした。
Rev Inst Med Trop Sao Paulo. 2021 Jun 18;63:e49.
ブラジルの報告、1/10 (90%) が感受性あり。
Clin Microbiol Rev. 2013 Oct;26(4):759-80.
CMRのレビュー。コリネのダプトマイシンの耐性について、「めったに観察されないことだが、高レベルのダプトマイシン耐性は、ダプトマイシン療法の副次的効果の可能性がある」と書かれています。
Antimicrob Agents Chemother. 2017 Oct 24;61(11):e01111-17.
J Infect Chemother. 2019 Nov;25(11):906-908.
ダプトマイシンの投与歴がある症例で高度耐性株が誘導された、という報告が複数あります(JICは阪大からの報告)。
上のAACでは感受性のある株にダプトマイシンを24時間曝露すると、全て耐性株となったというin vitroのデータが示されています。
バンコマイシン、テイコプラニンではこういうことはないようです。
ということで、まとめると、
- 何の曝露もない状態だと、Corynebacteriumのダプトマイシン感受性率は90%以上
- ダプトマイシンの曝露後に、急速に高度耐性株が選択されることがある
ダプトマイシン投与中や投与歴のある場合は、MICの動向に注意が必要なようです。
どうしても長期投与が必要になる骨髄炎、IE、PJIなどでは気をつけたいですね。
0 件のコメント:
コメントを投稿