今回はめちゃくちゃマニアックな記事ですね。興味ない方はすみません。読み飛ばしてください。刺さる人には刺さる(はず)
ある症例:
東南アジアに居住歴があるM. abscessusによる蜂窩織炎の50代女性。薬剤感受性はクラリスロマイシンは誘導体性がなくSであったが、イミペネムがI、ドキシサイクリン、モキシフロキサシン、ST合剤のいずれもRであった。
クラリスロマイシン+アミカシン+イミペネム+チゲサイクリンで治療を開始したところ、翌日から嘔気・嘔吐が出現した。
チゲサイクリンによる嘔気と思われる経過だが、薬剤変更の選択肢が乏しい中でチゲサイクリンを中止せざるを得ないのだろうか?
本題:
この症例は、代替薬はリネゾリドやクロファジミンなど、あるにはありますが、選択肢が少ない中で大事に使いたい薬剤なので、チゲサイクリンの嘔気への対処法について少し調べてみました。
チゲサイクリンの論文は古いものしか出てこないのですが、嘔気の対処について書かれたよさげなレビューと忍容性試験を見つけました。
Clin Infect Dis. 2006 Aug 15;43(4):518-24.
- チゲサイクリンの最も高頻度である副作用は嘔気、嘔吐
- 嘔気、嘔吐は用量依存性であり、薬物注入速度を遅くしても軽減されない
- 制吐薬の投与でチゲサイクリンの忍容性は改善する
- 嘔気は通常、最初の 1~2日間で発生し、ほとんどの患者では一過性である
- チゲサイクリンの中止率は5%で、嘔気 (1.3%) と嘔吐 (1.0%) に関連したものが最多
Antimicrob Agents Chemother. 2005 Jan;49(1):220-9.
- 単回投与でプラセボと比較した健常人の忍容性試験
- 投与時間はむしろ60分より30分の方が嘔気が少ない
- 食後に投与すると嘔気が軽減する
- チゲサイクリンが胆汁から排泄され、消化管を刺激する機序が推定されている
ということで、対処法をまとめると以下。
- 投与時間は30分の方が良い(消化管の通過時間の問題?)
- 投与前に何か食べ物を摂取していただく
- 制吐剤はもちろん使ってもらう
- 一過性の症状である可能性も高いので、もう少しだけ我慢してもらうよう励ます
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