2020年3月6日金曜日

性と生殖に関するACRガイドライン2020

リウマチ性疾患(RMD: Rheumatic and Musculoskeletal Diseases)における、性と生殖に関するACRガイドライン2020が出ました。

MMFはホルモン避妊薬の有効性を低下させる、体外受精は卵巣刺激中のエストロゲン濃度上昇により血栓リスクが高度に懸念される、など、知らないことが多かったので、とても勉強になりました。
例によって時間のない方はFigure1,2だけ見れば良いかもしれません。


Arthritis Rheumatol. 2020 Feb 23.
2020 American College of Rheumatology Guideline for the Management of Reproductive Health in Rheumatic and Musculoskeletal Diseases
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/art.41191

避妊法

  • Non-SLEのRMDでは、効果の低い避妊薬や避妊なしより、ホルモン避妊薬やIUDの使用を推奨する
  • aPL(-)の低活動性SLEでは、避妊なしよりも効果的な避妊薬(ホルモン避妊薬やIUD)の使用を強く推奨する
  • SLEでは経皮エストロゲン-プロゲスチンパッチを使用しないことを推奨する
  • 腎炎を含む中~重度活動性のSLEでは、エストロゲン含有避妊薬の臨床データが乏しいため、プロゲステロン避妊薬かIUDの使用を強く推奨する
  • aPL陽性者は合併症の有無に関わらず、エストロゲンを含む避妊薬は血栓リスク増大のため禁忌
  • aPL陽性者ではDMPAを除くプロゲステロン避妊薬は使用できるが、避妊効果は劣る
  • ステロイドや基礎疾患に伴う骨粗鬆症リスクが高い場合、DMPAを避けることを検討する
  • MMFは血清エストロゲン及びプロゲステロンレベルを下げる可能性があるため、ホルモン避妊薬の有効性が妨げられる懸念がある
  • MMF服用者は、IUD単独または他の2つの避妊方法の併用を検討する

生殖補助療法(ART)  

  • 妊娠適応薬を服用下に疾患活動性が安定した、aPL(-)で合併症のないRMDでは、必要に応じてARTを行って良い
  • 中~重度活動性のSLEでは、妊娠リスクが高い懸念からARTを延期することを推奨する
  • ART処置中のSLEでは、経験的なステロイド増量を検討しても良い
  • ART処置中の無症候性aPL陽性者では、ヘパリンまたは低分子量ヘパリンによる予防的抗凝固療法を検討する
  • 状態が安定しているRMDで卵母細胞または胚の凍結保存の際、免疫抑制剤・生物学的製剤の継続を強く推奨する(シクロフォスファミドは除く。MTXは継続して良い)

妊孕性

  • IVCYを行う閉経前RMDの卵巣機能不全予防のため、毎月のGnRHアゴニスト療法を検討してよい
  • 男性の健児を妊娠する生殖能力保全のため、CY治療前の凍結精子保存を希望する場合は行うことを強く推奨する

閉経後ホルモン療法(HRT)

  • aPL(-)のSLE患者では、重度の血管運動症状に対するHRTの希望がある場合、考慮しても良い(ループスフレアのリスクがわずかに増加するため条件付き推奨となっている)
  • 無症候性aPL陽性者では、HRTを行わないほうが良い
  • obstetric and/or thrombotic APSでは、HRTを行わないことを強く推奨する
  • 抗凝固療法中のAPSやaPLが陰性化しているAPSも、HRTを行わないほうが良い
  • aPL陽性の既往がある、現在は陰性化している無症候性陽性者は、HRTの希望がある場合、検討しても良い

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