慶応大からオラネキシジンのSSI予防に関するポピドンヨードへの優位性を示した報告が出ています。
有害事象が若干多い感じもしますが、少なくとも腹腔鏡手術に関してはオラネキシジンに移行していく可能性がありそうです。
Lancet Infect Dis. 2020 Jun 15;S1473-3099(20)30225-5.
Aqueous Olanexidine Versus Aqueous Povidone-Iodine for Surgical Skin Antisepsis on the Incidence of Surgical Site Infections After Clean-Contaminated Surgery: A Multicentre, Prospective, Blinded-Endpoint, Randomised Controlled Trial.
- Design: RCT、評価者と参加者は盲検で、担当医は非盲検
- P: 準清潔(CDC-classII, clean-contaminate)の予定手術患者
- I: 1.5%オラネキシジンでの皮膚消毒
- C: 10%ポピドンヨードでの皮膚消毒
- O: 30日以内のSSI発生率
- 補足:術前抗菌薬は通常通り使用。SSIかどうかは担当医の情報から評価者が判断
結果
- 883名が適格性スクリーニングを受け、計597名がランダム化され、オラネキシジン群の294名、ポピドンヨード群の293名が解析対象となった
- 組入時の除外の内訳は146名が活動性感染あり、66名が緊急手術、
など - 患者背景は年齢中央値69歳、腹腔鏡手術が434件(74%)で、内訳は上部消化管手術161例(27%)、下部消化管手術165例(28%)、肝胆膵手術252例(43%)、その他の手術が9例(2%)だった
- 30日以内のSSIはオラネキシジン群で19件(7%)発生し、ポピドンヨード群の39件(13%)と比較して有意に少なかった
- SSIの内訳は表層SSI 4件(1%) vs.13件(4%)、深部SSI 1件(<1%) vs. 1件(<1%)、臓器体腔SSI 14件(5%) vs. 25件(9%)であり、表層SSIと臓器体腔SSIは有意にオラネキシジン群に少なかった
- 有害事象はオラネキシジン群で皮膚紅斑(4件vs.1件)、皮膚炎 (2件vs.1件)が多かったが、有意ではなかった
解釈
評価者が盲検化されているにしても、担当医の情報にバイアスが入る可能性は高そうです。表層SSIの診断・定義は大分適当なので(MethodにはCDCガイドラインの定義としか書いていない)、発生件数に若干のバイアスは生じうると読みました。
とはいえEffect sizeに見合った十分なNがあり、臓器体腔SSIでも有意差がついており、多少非盲検部分によるバイアスが入ったところで結果が変わるほどの影響は出なそうです。基本的には信頼できそうな結果だと思いました。
相対リスク減少は52%、NNTは14なので実臨床のプラクティスを変えるほどのインパクトがありそうです。しかし試験の大半の手術が腹腔鏡であり、サブ解析でもSSIの減少効果は開腹では差がつかず、ベネフィットは腹腔鏡で大きいようです。
開腹手術での効果を評価するにはNが不足している可能性が高いので、今後の展開が期待されますが、現時点のデータではオラネキシジンの優位性は腹腔鏡のみと考えるのが妥当と思われます。
最後に非常に重要な点として、COI開示によると1st authorとLast authorが大塚製薬(オラネキシジンの販売元)のグラントを受けて行った研究のようです。
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