免疫チェックポイント阻害剤治療中の方がPfizerワクチン接種後に、サイトカイン放出症候群をきたしたという驚愕の症例報告です。
irAEの既往がある点がポイントなのだろうと思います。
治験では癌患者の接種があまり検証されていないので見落としがちですが、機序的には全く違和感がないので、まもなく始まる一般接種では注意が必要ですね。
Cytokine release syndrome in a patient with colorectal cancer after vaccination with BNT162b2
Nat Med. 2021 May 26. doi: 10.1038/s41591-021-01387-6.
https://www.nature.com/articles/s41591-021-01387-6
- 58才男性 直腸癌
- COVID-19の既往はない
- 2019年2月 Anti-PD-1単独療法
- 2019年4月 運動失調 →irAE grade1-2の診断。PSL1mg/kgで治療
- 2019年6月 Anti-PD-1再開
- 2020年3月 副腎不全 →irAE grade1の診断。PSL3mg補充療法
- 2020年12月2日 Anti-PD-1最終投与
- 2020年12月27日 BNT162b2 初回接種
- 即時の有害事象はなく、接種部位のgrade1の炎症のみ
- 5日後 38度台発熱、筋痛、下痢。CRP 12.5、LDH 184、Plt 6.8万 →入院
- 尿培養・血液培養陰性、SARS-CoV-2 PCRの陰性、CTで感染症・血栓なし。広域抗菌薬投与したが無効
- 入院5日目 状態改善せず。39.8度、CRP 31.7、LDH 849、フェリチン6010であり、サイトカイン放出症候群(CRS)としてPSL1mg/kgで治療開始
- 入院9日目 症状は改善
- 2021年2月 Anti-PD-1再開
- ワクチンの2回目は接種しなかった
CRS急性期の免疫応答解析
- CRSの特徴であるTh1サイトカイン(MIG、IL-2R、IL-16、IFN-γ、IL-18)の亢進が、入院3日目から見られていた
- マクロファージの活性化(MCP-1、MIP、IL-8、IL-18、MIGの上昇)も見られた
- 抑制性サイトカインであるIL-10の上昇が、入院3〜8日目に認められたが、明らかに炎症亢進を抑えることができていない
- ほとんどのサイトカインはステロイド治療で大幅に減少したが、入院12日目にIL-2R、IL-2、IL-16、IL-18の上昇が持続したことから、T細胞活性化の持続が示唆された
ワクチン応答の解析
- S1反応性および中和抗体はワクチン接種の7日後から検出され、力価はステロイド投与中も上昇し続けた
- S特異的CD4 +およびCD8 + T細胞は、ワクチン接種後17日目、40日目には検出できず
- 注:COVID-19既往がない健常人でも、ワクチン1回のみ接種では同じようにT細胞応答は誘導されないようです(Lancet. 2021 Mar 27;397(10280):1178-1181.)
- エピトープ解析ではCOVID-19ワクチン接種者と類似し、スパイク蛋白シグナルは上昇し、非スパイク蛋白シグナルは検出されなかった