in vitroですが、MTX投与者のCOVID-19ワクチンの抗体反応、およびCD8+ T細胞応答はやや減弱するというデータが、ARDに出ています。
これが実際の個人の免疫や集団免疫にどの程度影響するかというと、あまり問題にならないのではないか、というのが個人的な推測(感想)です。
Methotrexate hampers immunogenicity to BNT162b2 mRNA COVID-19 vaccine in immune-mediated inflammatory disease.
Ann Rheum Dis. 2021 May 25:annrheumdis-2021-220597.
- 免疫介在性炎症疾患(IMID)における、BNT162b2(Pfizerワクチン)の抗体価及びT細胞応答を、MTX投与者とそれ以外の治療に分けて調査
- 健常コントロール26例、non-MTX 26例、MTX 25例を検討
- 平均年齢は健常群49.2歳、non-MTX群49.1歳、MTX群63.2歳
- non-MTXの治療は、TNF阻害薬11例(42.3%)、他のサイトカイン・JAK阻害薬が9例(34.6%)、その他7例
- MTXの投与量は15.7±5 mg/w
- 十分な抗体反応(>5000U)が得られた割合は、健常人96.1%、non-MTX群92.3%、MTX群72.0%だった
- スパイク特異的B cell、cTfh(CD4+ICOS+CD38+)、活性化CD4+ T cell、HLADR+ CD8+ T cellの割合は全てのグループで有意に増加した
- 活性化CD8+ T cell(Ki67+ CD38、GZMB+)は、MTX投与群では誘導されなかった
補足:
MTX群の平均年齢は10才以上高く、COVID-19既往も半分以下ですので、これがかなり大きなバイアスになっている可能性があります。
Pfizerワクチンの治験データでも高齢者の抗体反応は若干低下していました。
N Engl J Med 2020; 383:2439-2450
この検討では抗体価5000Uをカットオフにしていますが、NEJMのFigureを見る限り、健常高齢者の5000以上の抗体反応率は90%を切っていそうであり、回復期血漿の抗体価が平均600くらいみたいなので、MTX群の抗体反応の低下が実際にはどのくらいsevereな問題なのかはよくわかりませんね。
あとインフルエンザワクチンのRCTと同じく、MTX投与量が多いことが影響している可能性があります。
Ann Rheum Dis. 2018 Jun;77(6):898-904.
- インフルエンザワクチン前のMTX2週間休薬は非休薬と比較して抗体反応率を有意に上げる
- サブ解析でMTX7.5mg以下の抗体反応率は有意差なし(用量依存性)
- ただし休薬群のRA flareは2倍になった
ACRはあまり根拠なく接種前のMTX1週間休薬を推奨していますが、JCR推奨は基本的に休薬せずに接種する、という記載になっています。
本検討ではMTX投与量も日本と比べるとかなり多いので、日本で多いMTX8mg/w前後の方への影響は軽微かもしれないとも思えます。
個人的には少なくとも全員一律にMTXを休薬する必要はなく、よほど落ち着いている人では検討すればいいのではないかと考えています。
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