2021年5月18日火曜日

ループス腎炎に対するボクロスポリンの併用効果(AURORA1 study)

個人的に注目していたボクロスポリンのRCTが、Lancetに掲載されています。初見は良さそうに見えたんですが、ベリムマブとの対比で考えると、少し微妙かなと思いました。



Efficacy and safety of voclosporin versus placebo for lupus nephritis (AURORA 1): a double-blind, randomised, multicentre, placebo-controlled, phase 3 trial.

Lancet. 2021 May 7:S0140-6736(21)00578-X.

doi: 10.1016/S0140-6736(21)00578-X.

  • Design: Double-blind RCT
  • P: ループス腎炎 III, IV, V
    • 2年以内の腎生検で診断
    • eGFR>45
    • 尿蛋白≥1.5g/gCr (V型は≥2g)
  • I: ボクロスポリン 23.7mg 1日2回+MMF 1g 1日2回
  • C: プラセボ+MMF 1g 1日2回
    • ※併用されたステロイドのレジメン
    • day1,2にmPSL500mg(体重45kg未満は250mg)
    • day3以降は20~25mg/dayから急速減量
    • 16週目に2~5mg/dayまで減量、以降は主治医判断
  • O: 52週の完全腎反応率
    • 完全腎反応率の定義は、以下のすべてを満たす
    • 尿蛋白0.5g/gCr以下
    • eGFR≥60 or ベースラインからの低下が20%未満
    • レスキュー薬の投与がない
    • 44~52週において、PSL換算≥10mg/day 連続3日or7日以上の投与がない


結果:

  • 179名がボクロスポリン群、178名がプラセボ群に割り付けられた
  • ボクロスポリン群、プラセボ群の病理は各々、IIIが11%/16%、IVが51%/43%、Vが14%/14%、III+Vが13%/11%、IV+Vが11%/15%だった
  • 52週の完全腎反応率は、ボクロスポリン群で有意に高かった (73/179 [41%] vs. 40/178 [23%], OR 2.65 [95%CI 1.64-4.27], p<0.0001)
  • SAEはボクロスポリン群で37/178 (21%)、プラセボ群で38/178 (21%)であり、群間差は見られなかった
  • ボクロスポリン群で多かった有害事象は、感染症(34% vs. 17%)、神経障害(26% vs. 15%)、血管障害(21% vs. 13%)、など





感想:

Primary endpointとして、尿蛋白0.5g以下という厳しめの寛解基準が選択されています。ALMS study (J Am Soc Nephrol 2009; 20:1103–1112) のMMF群における尿蛋白0.5g以下達成率は23.8%であり、この試験のプラセボ群でも、想定通り同じ達成率が再現されています。

ややボクロスポリン群にややIV型が多く、バイアスによる過大評価も懸念されますが、それを上回るレベルで寛解率に差があるように見えるので、偶然の差ではないと思われます。サンプルサイズも適切であり、概して内的妥当性は高いRCTと考えます。


IV型よりV型に効くのかと思えば、サブ解析を見る限り、そうでもないようです。

もともとMMFが入っていた患者群でのメリットが著しいです。


MMFにベリムマブ、ボクロスポリンのいずれをを乗せるのがいいのか、BLISS-LN study (NEJM 2020; 383:1117-1128) における52週の完全腎反応率を見てみると、プラセボ20%、ベリムマブ30%で、ボクロスポリンとほぼ同じEffect sizeであり、かつ副作用面では明らかにベリムマブに分がありますので、実際のボクロスポリンの使い所はどこなのか、といわれると難しいですね。

どっちも同じくらい高価でしょうし。

ボクロスポリンが妊婦に使って良いかについてもデータ不足ですので、タクロリムスと同じように使うのは抵抗がありますね。


したがって、Pureな腎病変ではベリムマブ+MMFを優先して使い、腎以外の病変への効果も期待する場合には出番があるかもしれない、というところでしょうか。

具体例としては、MMFで完全寛解まで行かずにくすぶっていて、関節炎や漿膜炎も出てきたんだけどステロイドを増やすほどではないかな、みたいな場面に使えるのかもしれません・・・


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