緑膿菌が血培から生えたVAPで、
このVAPをピペラシリン(もしくはピペラシリン・タゾバクタム)で治療することは可能なのでしょうか?
CLSI-M100 28th
PIPCは内因性耐性とは書かれていないです(左から4列目)。
なおEUCASTにPIPCの記載はありません
Kucers' The Use of Antibiotics 7th edition
Section2:10 メスロシロン・アズロシリン・アパルキリン・ピペラシリン より抜粋
ピペラシリンは腸内細菌科細菌に対して良好な活性を示すが、
腸内細菌科細菌の耐性の主なメカニズムは、β-
このため、
メスロシリン、アズロシリン、アパルキリン、ピペラシリンは、
つまりAmbler分類Aのβラクタマーゼ産生腸内細菌化細菌は
(注:AmpCの話ではないです。AmpCはAmbler class C。下図参照:日本臨床微生物学雑誌 Vol. 24 No. 3 2014)
少し横道にそれますが、Kucerによると、
S. pneumoniaeやViridans groupのペニシリン耐性は、
ピペラシリン活性に対するPBP変異の影響は、
つまり、連鎖球菌はPCGが中等度耐性以上(>0.
さて、Serattia marscesensなどの染色体性にAmpCを持っている菌で
下記レビューを読んで結構頭が整理できたので紹介します。
AmpC β-lactamase-producing Enterobacterales: what a clinician should know.
Infection. 2019 Jun;47(3):363-375.
染色体性にAmpCをコードしている(cAmpC)
- Enterobacter (Enterobacter cloacae complex, Enterobacter aerogenes)
- Serratia marcescens
- Citrobacter freundii
- Providencia stuartii
- Morganella morganii
cAmpCの主な特徴は、
抗菌薬のcAmpC発現を誘導する性質と、
1. 誘導性/不安定型β-ラクタム
例:アミノペニシリン系、第一世代セファロスポリン、
AmpCの発現を強く誘導し、2. 誘導性/安定型β-ラクタム
例:カルバペネムAmpCの発現を強く誘導するが、抗菌薬自体は分解されない。
3. 弱い誘導性/不安定型β-ラクタム
例:ウレイドペニシリン(例:ピペラシリン)、
AmpC誘導能は弱いため、
したがって、
ピペラシリン・タゾバクタムを例にすれば、
AmpCはピペラシリンを加水分解し、
AmpC誘導能は弱いため、
したがって、
ピペラシリン・タゾバクタムを例にすれば、
AmpCはピペラシリンを加水分解し、
4. 弱い誘導性/安定型β-ラクタム
例:セフピロム、セフェピム(第4世代セファロスポリン)
誘導能は弱く、かつAmpCが過剰に誘導された場合も、
誘導能は弱く、かつAmpCが過剰に誘導された場合も、
拡張スペクトルペニシリン(チカルシリン、チカルシリン-
(Ann Intern Med. 1991 Oct 15;115(8):585-90.)
ちなみにプラスミドAmpCはほぼ常に構成的に発現し、
例外として、BlaDHA-
(Clin Microbiol Rev. 2009;22:161–82.)
cAmpCの治療で、
ピペラシリン・
今後の追試が必要です。
Open Forum Infect Dis. 2021 Aug 2;8(8):ofab387.
- Design: 多施設RCT、Open-label
- P: Enterobacter spp、Klebsiella aerogenes、Serratia marcescens、Providencia spp、Morganella morganii、Citrobacter freundiiの血流感染。かつ、第3世代セファロスポリン、ピペラシリン・タゾバクタム、メロペネムに感受性あり 
- I: ピペラシリン・タゾバクタム4.5g q6h
- C: メロペネム1g q8h
- O: 30日死亡率、臨床的失敗(5日目での体温or白血球増加)、微生物学的失敗(3~5日目での指標菌検出)、 30日時点での微生物学的再発、の複合エンドポイント 
結果:
- ピペラシリン・タゾバクタム群40名、メロペネム群39名が割り付けられた 
- 主要評価項目達成は、ピペラシリン・タゾバクタム群では38例中11例(29%)、 メロペネム群は34例中7例(21%)、リスク差8%(95% CI -12%~28%) 
- 微生物学的失敗は、ピペラシリン・タゾバクタム群では38例中5例(13%)、 メロペネム群では34例中0例(0%)だった。リスク差13%( 95%CI、2%~24%) 
- 微生物学的再発は、ピペラシリン・タゾバクタム群0%、メロペネム群9%だった 
- 微量液体希釈法による感受性率は、ピペラシリン・タゾバクタムが96.5%、メロペネムが100%であった 
結論:
- AmpC産生菌による血流感染症に対するピペラシリン・タゾバクタムは、微生物学的再発は少なかったが, 微生物学的失敗が多くなった 
長くなりましたが、まとめると
- 染色体性AmpCの腸内細菌目(ESCPM)に対しては、セフェピムかカルバペネムが鉄板 
- ピペラシリン、セフトリアキソンも感受性があれば、現場の判断で慎重に使っても良さそう 
- 血流感染はやめておいた方がいいかも(MERINO-2)


 
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