白内障の術前抗菌薬の相談を受けたのですが、恥ずかしながら全く知らなかったので調べてみました。
眼科領域の術式別のSSIの発生率
引用:佐々木香る 眼科抗菌薬適正使用マニュアル
- 白内障手術:0.02%
- 硝子体手術:0.03‐0.05%
- 硝子体内注射:0.03-0.04%
- 緑内障手術:2%(濾過胞炎含む)
- 角膜移植:0.2%
- 屈折矯正手術:0.02%
- 結膜手術、斜視手術、眼瞼・眼窩手術:極めて稀
白内障手術の起因菌
J Cataract Refract Surg. 2013 Sep;39(9):1421-31.
- 白内障手術のSSIの起因菌は、大半がブドウ球菌と連鎖球菌
- 結膜嚢および外眼部常在菌層に由来するようです。
Ophthalmology. 2002 Jan;109(1):13-24.
周術期SSI予防の方法として、全身投与の抗菌薬は有効性が否定されています。
2002年のSRで既に、抗菌薬洗浄、抗菌薬点眼、結膜下抗菌薬投与などの有効性は否定され、術前のポピドンヨード消毒のみが有効性があると報告されていたようです。
セフロキシムの前房内投与
2007年にESCRS(欧州白内障屈折矯正手術学会)からセフロキシムの前房内投与の有効性を示すRCTが出ました。以降の欧州各国はセフロキシム前房内投与が主流で、導入後の術後眼内炎の減少が報告されているようです。
なおこのRCTで同時にフルオロキノロン点眼の有効性がないことも示されており、欧州では以降使用しない流れになっているようです。
Prophylaxis of postoperative endophthalmitis following cataract surgery: results of the ESCRS multicenter study and identification of risk factors.
J Cataract Refract Surg. 2007 Jun;33(6):978-88.
- Design: 多施設RCT、部分盲検
- P: 糖尿病を含む白内障手術を受ける患者
- I&C: 2×2グループの比較
- 術後セフロキシム1mg前房内投与の有無
- 術前レボフロキサシン0.5%点眼(手術1時間前に1滴、30分前に2滴、術直後5分間隔で3滴)
- O: 術後感染性眼内炎
結果:
- 29例が眼内炎を呈し,そのうち20例が感染性眼内炎と診断
- セフロキシム前房内投与を行わない場合、眼内炎のOR 4.92 (95%CI 1.87~12.9
- 強膜トンネルと比較した角膜切開の使用は、OR 5.88 (95%CI 1.34-25.9)
- アクリルと比較したシリコーン眼内レンズ(IOL)光学材料の使用 OR 3.13 (95%CI 1.47-6.67)
日本のガイドライン
日本感染症学会・抗菌化学療法学会から出されて、日本眼感染症学会、日本眼科学会も監修しているようです。
術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン(2020年5月追補版)
http://www.chemotherapy.or.jp/guideline/jyutsugo_shiyou_tuiho.html
- 白内障手術は、リスク因子がなければ全身投与での予防は不要、と明記されてます
- 術前点眼は術前3日から投与されることになっている
ちょっと世界の潮流からは遅れている感じがする記載ではありますね。
日本では術後4週間程度フルオロキノロン点眼を継続している施設が多いようですが、米国では1週間が主流とのことです(ASCRS:米国白内障屈折矯正手術学会の調査)。
J Cataract Refract Surg. 2015 Jun;41(6):1300-5.
0 件のコメント:
コメントを投稿