2022年5月26日木曜日

PCPに対するクリンダマイシン+プリマキンの効果

連日PCPネタばかりで申し訳ないですが、興味のある時に調べておくに限ります。

クリンダマイシン+プリマキンについて臨床効果を調べてみると、結構有用な論文がたくさん出てきたので、主なものを3つ紹介します。

一次治療、二次治療、毒性での変更、いずれでもSTと遜色ない生存率の報告が多く、普通に使える治療という印象を持ちました。

有害事象で特記すべきものはメトヘモグロビン血症(下記文献だと頻度3%)くらいでしょうか。メトヘモグロビンが著しく増えると自覚症状は乏しいがSpO2 が85%付近に収束し、BGAを確認するとPaO2は問題なくMet-Hbが増えていることで診断できます。


先にサマライズすると、

  • STとクリンダマイシン・プリマキンは、一次治療も二次治療もほぼ同等の成績(生存率)で、ペンタミジン静注はやや治療成績が低いように見える
  • 有害事象で問題になるのは血液毒性(好中球・血小板減少、メトヘモグロビン血症)



A meta-analysis of salvage therapy for Pneumocystis carinii pneumonia.

Arch Intern Med. 2001 Jun 25;161(12):1529-33.

  • デザイン:メタ解析
  • 対象試験:一次治療※が失敗したPCPに対して、代替薬が使用された臨床試験・症例シリーズ・症例報告
  • 対象患者:生検、BALF、喀痰塗抹によりPCPが微生物学的に確認された症例
  • ※ 一次治療失敗の定義:治療開始後4~5日目に臨床的悪化が起こるか、7日以上治療しても患者の状態が改善しないこと

結果:

  • 27文献から497患者を抽出(HIV 456名)
  • 失敗した一次治療は、ST 160例、静注ペンタミジン63例、吸入ペンタミジン6例、アトバコン3例、ダプソン3例、TMP+ダプソン配合剤2例、STに続いてCLDM+プリマキンを併用(2例)など
  • 失敗した一次治療の期間は、3日以上33人、4日以上20人、6日25人、5〜7日以上358人、記載なし61人
  • サルベージ治療は、トリメトレキサート159例、ペンタミジン164例、塩酸エフルニチン70例、クリンダマイシン+プリマキン48例、ST 51例、アトバコン5例が含まれた
  • 一次治療無効のPCPのサルベージ治療の中で、クリンダマイシン・プリマキン併用療法が最も有効だった

コメント:

  • PCPに対するSTとペンタミジンの大規模な前向き比較試験において
    • 治療不応のために薬剤変更を必要とする人の生存率は、ST群46%、ペンタミジン群56%
    • 毒性により治療法を変更した場合の生存率は、それぞれ97%と94%と報告されている。

(AIDS. 1992;6301- 305)



Comparison of three regimens for treatment of mild to moderate Pneumocystis carinii pneumonia in patients with AIDS. A double-blind, randomized, trial of oral trimethoprim-sulfamethoxazole, dapsone-trimethoprim, and clindamycin-primaquine. ACTG 108 Study Group.

Ann Intern Med. 1996 May 1;124(9):792-802.

  • デザイン:RCT、二重盲検
  • P: HIV患者でP.jirovecii が形態学的に確認され、AaDO2≤45mmHg以下のPCP
  • I&C: ST、ダプソン+トリメトプリム、クリンダマイシン+プリマキンに割り付け
    • PAO2-PaO2が35~45mmHgの患者にはプレドニゾンも投与した
  • O: 21日目の治療失敗(PAO2-PaO2が20mmHg以上増加したこと、ベースラインの徴候や症状が寛解しなかったこと、毒性、挿管、死亡以外の理由で抗ニューモシスチス療法を変更したことのいずれか)

結果:

  • 181例を登録、ST群64例、ダプソン+トリメトプリム59例、クリンダマイシン+プリマキン58例を割り付け
  • 投与量制限毒性、治療失敗、治療完了を示した患者の割合に治療群間の統計的有意差はなかった
  • 治療期間中およびその後2カ月間の生存率は3群間で差がなかった。


  • ALTがベースライン値の5倍以上に上昇したのはST群で多かった(P=0.003)
  • 重篤な血液毒性(好中球減少、貧血、血小板減少、メトヘモグロビン血症)はクリンダマシン・プリマキン群で多く発生した(P=0.01)



Clinical efficacy of first- and second-line treatments for HIV-associated Pneumocystis jirovecii pneumonia: a tri-centre cohort study.

J Antimicrob Chemother. 2009 Dec;64(6):1282-90.

方法:

  • コペンハーゲン、ロンドン、ミラノの3つの観察コホートで行われたHIV関連PCP患者1122人、1188エピソードの症例レビュー

結果:

  • 初回治療はST(962例、81%)、静注ペンタミジン(87例、7%)、クリンダマイシン+プリマキン(72例、6%)、その他(67例、6%:アトバコン、ダプソン+ピリメタミン、トリメトレキサート、ペンタミジン吸入)
  • 治療法を変更しなかった割合は、ST 79%、クリンダマイシン+プリマキン65%、ペンタミジン60%だった (P<0.001))
  • 一次治療は82エピソード(7%)で失敗のため、198エピソード(17%)で毒性のため変更された
  • 3ヵ月生存率はST 85%、クリンダマイシン+プリマキン81%,静注ペンタミジン76%だった (p=0.09)
  • 二次治療の生存率は、ST 85%、クリンダマイシン+プリマキン87%と比較し。静注ペンタミジンが60%で優位に低かった (p=0.01)
  • ペンタミジンは 3 ヵ月死亡リスクが有意に高く (HR 2.0, 95%CI 1.2- 3.4)、多変量分析でも同様だった (HR 3.3, 95%CI 2.2-5.0)
  • クリンダマイシン+プリマキンはSTと比較して死亡リスクに差はなかった。

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