2022年3月29日火曜日

Pantoea agglomerans菌血症

 血培2/2セットからPantoea agglomeransという耳慣れない菌の発育があり、フォーカスもよくわからなかったため基本的な情報を調べてみました。例によって、もともと自動分析装置では同定が難しかったが、質量分析で同定できるようになった菌、ということのようですね。


サマリー

  • 植物などの環境菌で、通性嫌気性グラム陰性桿菌
  • 感染臓器としては、汚染された点滴やカテーテルによる血流感染、創部から感染した膿瘍・骨関節感染が多い
  • ペニシリン、セファゾリンの感受性は5割程度、BLBLI、第三世代以降のセファロスポリン、カルバペネム、AG、ST、キノロンにはほぼ100%感性


Pantoea agglomerans, a Plant Pathogen Causing Human Disease
J Clin Microbiol. 2007 Jun; 45(6): 1989–1992.
Published online 2007 Apr 18. doi: 10.1128/JCM.00632-07
  • テキサス小児病院で、2000年1月から2006年12月に培養で記録されたすべてのP. agglomerans感染症をレビュー
  • 53の無菌部位、26の喀痰、3つの尿、3つの表面スワブ、および2つの中咽頭源からの88の患者培養で同定された
  • 無菌培養からP. agglomeransが検出された症例のエントリーはCRBSI 21例,膿瘍14例,関節または骨培養10例,UTI4例,非CV関連菌血症2例,腹膜炎1例,胸部外傷1例
  • 患者の43%(23/53)が菌血症を発症し,その91%が中心静脈ラインと関連していた
  • 膿瘍のドレナージ中にP. agglomeransが分離された小児は、すべて多菌性だった
  • 骨髄炎を発症した7例は,棒,植物のとげ,ガラスの破片による貫通外傷の4~6週間後に局所症状を呈した.
  • 無菌室から分離された53株はすべてアミカシン,ゲンタマイシン,メロペネム,STに感性で,広域セファロスポリンおよび合成ペニシリンには92.5%,広域セファロスポリンには62.3%,アンピシリンには47.2%が感性だった
  • P. agglomerans菌血症は一過性で治療中に再発することはなく,10〜14日間の無菌期間の抗生物質投与で治癒した


Bacteremia caused by Pantoea agglomerans at a medical center in Taiwan, 2000–2010
J Microbiol Immunol Infect. 2013 Jun;46(3):187-94.
doi: 10.1016/j.jmii.2012.05.005.
  • Pantoea agglomeransは、以前はErwinia herbicolaまたはEnterobacter agglomeransとして知られていた、植物によく付着する通性嫌気性グラム陰性桿菌
  • 台湾大学病院で過去10年間のP. agglomerans菌血症の患者を調査(N=18名)
  • 感染臓器は、一次性血流感染12例(66.6%)、腹腔内感染3例(16.7%),軟部組織感染2例(11.1%),肺炎1例(5.6%)
  • 10株(56%)アンピシリン感性,11株(61%)がセファゾリン(MIC ≦2 μg/ml)に感性,6株(33%)がホスホマイシン(MIC ≦64 μg/ml)に感性だった


おまけ

経験した症例は腎盂腎炎として治療されていたのですが、診察しに行くと術後間もない胃瘻の創部疼痛・排膿が続いていたエピソードがわかり、そこからのエントリーであろうと推定されました。いつもながら微生物の知識が診断を助けてくれることを再確認する事例でした。

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