2020年1月27日月曜日

新型コロナウィルス肺炎 (2019-nCoV) の臨床的特徴

話題になっている論文なのでご紹介します。

殆どが40~50代の健常人に発症している点が特筆すべき点です。
死亡率が高いように見えますが疾患の発見初期のコホートなので、重症例がピックアップされやすいバイアスがあることに注意が必要です。
1/27までの情報から計算すると死亡率は81/2863 (2.83%)であり、SARSの10%、MERSの37%と比較すると重症度は低めと見積もって良いと思われます(参考文献1-4)。


Lancet. 2020 Jan 24. [Epub ahead of print]
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)30185-9/fulltext

デザイン:前向き単施設観察研究

対象:

  • Realtime-PCR・次世代シークエンスにより確認された2019-nCoV感染患者
    (2019-nCoVが疑われるすべての患者は、武漢の指定病院に入院しているとのこと)

結果:

  • 41名の2019-nCoV感染が確定した患者を分析した
  • 男性73%、基礎疾患あり32%(糖尿病20%、高血圧15%、心血管疾患15%)
  • 年齢中央値は49歳 (IQR 41-58)で、華南シーフード市場の曝露歴は66%だった
  • 発熱98%、咳76%、呼吸困難55%、筋痛・疲労44%、痰28%、頭痛8%、喀血5%、下痢3%
  • 発症から呼吸困難出現までの中央値は8.0日(IQR 5-13)
  • リンパ球減少を63%、胸部CTでの肺炎を100%に認めた
  • 29%がARDS発症、32%がICU入室、15%が死亡
  • ICU患者は血漿IL2、IL7、IL10、GSCF、IP10、MCP1、MIP1A、TNFαレベルが高かった

考察

  • 発熱、乾性咳嗽が特徴で、SARS/MERSと異なり下痢はほとんどない(v.s. 20~25%)
  • 2019-CoVでは炎症性のTh1サイトカインのレベルが重症度に関連しているが、抗炎症性Th2サイトカインのIL4、IL10も高く、この点はSARS-CoVと異なっている
  • SARSに有効性が期待されている抗ウィルス療法であるロピナビル+リトナビルの、2019-CoVに対するRCTが既に開始されている



参考文献

  1. Lancet 2020 Jan 24. [Epub ahead of print]
    A novel coronavirus outbreak of global health concern.
    https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)30185-9/fulltext
  2. WHO: Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV). Geneva: World Health Organization.
    http://www.who.int/emergencies/mers-cov/en/
  3. WHO: Summary of probable SARS cases with onset of illness from 1 November 2002 to 31 July 2003. Geneva: World Health Organization.
    http://www.who.int/csr/sars/country/table2004_04_21/en/
  4. Ann Intern Med. 2004; 141: 662-673


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