IgG4関連疾患分類基準の概要
Arthritis Rheumatol. 2020 Jan;72(1):7-19.Ann Rheum Dis. 2020 Jan;79(1):77-87.
・以下3つのプロセスを全て満たせばIgG4-RDと分類する
1. 11の臓器病変のうち最低1つが証明され、
2. 32の除外基準のいずれにも該当せず、
3. 8つのドメインからなるスコアリングで20点以上
・Validation cohort 1では、感度85.5%、特異度99.2%だった
・Validation cohort 2では、感度82.0%、特異度97.8%だった
・除外基準を削除すると、感度90.0%、特異度89.2%となる
・生検に関する基準を削除すると、感度48.6%、特異度98.9%となる
感想:
感度よりも特異度を重視してcut-off valueを設定した分類基準です。
EGPAやキャッスルマンなどIgG4RDと区別が難しい症例で真価を発揮すると思われますが、分類基準の例に漏れず、臨床より臨床研究で活用されるべき、という理解になると思います。
臨床で活用するとすれば、生検なしで分類基準を満たすような症例では、敢えての生検は不要(特異度が生検ありと殆ど変わらないので)。
基準を満たさない場合に(感度を上げるため)生検を考慮するといったところでしょうか。従来のプラクティスとあまり大きくは変わらないでしょうが・・・
IgG4関連疾患分類基準の内容
以下、分類基準 (Table4) の和訳です。Step1: 前提基準
IgG4-RDに典型的臓器の1つに、臨床的・X線学的な臓器病変の所見がある、
または病理学的に証明されたリンパ形質細胞浸潤を伴う原因不明の炎症所見を認める。
典型的臓器:膵、唾液腺、胆管、眼窩、腎、肺、大動脈、後腹膜、肥厚性硬膜炎、甲状腺
臓器病変は臓器腫大または腫瘤様病変を指す。
(胆管狭窄、動脈瘤・動脈壁肥厚、気管支血管速の肥厚を除く)
Step2: 除外基準
発熱
・ステロイドに反応しない(38度以上、PSL40mg/day = 0.6mg/kg/dayを4週以上)
血清学
・説明のつかない白血球減少や血小板減少
・末梢好酸球増加(≥ 3000/μL)
・ANCA陽性
・抗SS-A/B抗体陽性
・抗dsDNA/RNP/Sm抗体陽性
・その他の疾患特異的自己抗体が陽性(抗ARS, Scl70, PLA2抗体を指す)
※ RF, ANA, AMA, LKM, aPLなどの特異性の低い抗体は含まない
・クリオグロブリン血症
X線学
・悪性腫瘍または感染症の疑いがある、十分に精査されていない放射線学的所見
・X線学的所見の急速な進行(4~6週単位)
・エルドハイム・チェスター病と一致する長管骨異常
※ 一般的には長管骨の両側性の多巣性骨硬化性病変
・脾腫(門脈圧亢進症などで説明がつかない場合で、14cm以上)
病理
・十分に精査されていない、悪性腫瘍を示唆する細胞浸潤
・炎症性筋線維芽細胞腫瘍と一致するマーカー(ALKやROS1)
・著明な好中球性炎症
・壊死性血管炎
・著しい壊死
・原発性の肉芽腫性炎症
・マクロファージ・組織球性障害の病理所見
以下の診断歴
・多中心性キャッスルマン病
・クローン病または潰瘍性大腸炎(膵胆管疾患のみの場合)
・橋本甲状腺炎(甲状腺病変のみの場合)
Step3: 選択基準(各ドメインの最高点のみ加算)
病理組織像
・情報価値のない検体 0点
・高度のリンパ球浸潤 +4点
・高度のリンパ球浸潤+閉塞性静脈炎 +6点
・高度のリンパ球浸潤+花筵状線維化 (storiform fibrosis) +13点
免疫染色
・IgG4/IgG <40% or 不定、かつIgG4+ cells/HPF 0〜9個 0点
・IgG4/IgG ≥41%、かつIgG4+ cells/HPF 0〜9個 or 不定 7点
・IgG4/IgG <40% or 不定、かつIgG4+ cells/HPF ≥10 or 不定 7点
・IgG4/IgG 41〜70%、かつIgG4+ cells/HPF ≥10 14点
・IgG4/IgG ≥71%、かつ IgG4+ cells/HPF 10〜50 14点
・IgG4/IgG ≥71%、かつ IgG4+ cells/HPF ≥51 16点
※リンパ節、胃・腸管粘膜、皮膚生検は、免疫染色ドメインのスコアリングに使用できない。
※「不定」とは陽性細胞数を明確に定量できないが、細胞数 ≥10/HPFである状況。
血清IgG4濃度
・正常または測定なし 0点
・正常上限~正常上限の2倍 +4点
・正常上限の2〜5倍 +6点
・正常上限の5倍以上 +11点
涙腺、耳下腺、舌下腺、顎下腺(両側で1セット)
・1セット未満 0点
・1セット +6点
・2セット以上 +14点
胸部
・未検査または以下のいずれも存在しない 0点
・気管支血管周囲および(小葉間?)隔壁の肥厚 +4点
・傍胸椎の帯状軟部組織(通常右側、Th8-11に位置) +10点
胆膵
・未検査または以下のいずれも存在しない 0点
・びまん性膵腫大(小葉の喪失) +8点
・びまん性膵腫大および造影効果の低下した被膜様構造 +11点
・膵病変(上記のいずれか)+胆道系病変 +19点
腎
・未検査または以下のいずれも存在しない 0点
・低補体血症 +6点
・腎盂の肥厚・軟部組織 +8点
・両側腎皮質の(造影)低吸収域 +10点
後腹膜
・未検査または以下のいずれも存在しない 0点
・腹部大動脈のびまん性壁肥厚 +4点
・腎動脈下大動脈or腸骨動脈の全周性か前外側の軟部組織 +8点
Step4: 合計点
前提基準が満たされ、除外基準が存在せず、合計20点以上であれば
IgG4-RDの分類基準を満たすと判定する。
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