2023年8月4日金曜日

偽痛風関節炎の関節分布

院内発熱+股関節痛で、CTでは石灰化が見えないけれど、関節エコーで石灰化が認められ、偽痛風と診断できたという症例がありました。

股関節の偽痛風はレアだと思っていたのですが、調べてみたら意外と多いようです。



Arthritis Care Res (Hoboken). 2019 Dec;71(12):1671-1677.

  • 関節液でCPPD結晶を証明した偽痛風において、エコー、レントゲンの検査特性を比較(N=50)
  • 罹患関節の分布
    • Knee 47 (94.0%)
    • Hip joint 14 (28.0%)
    • Radiocarpal joint 6 (12.0%)
    • Ankle 5 (10.0%)
    • Shoulder 4 (8.0%)
    • Elbow 2 (4.0%)


  • 股関節におけるUSとXPの感度・特異度
    • US 感度90% (95%CI: 78-97%) 特異度85% (95%CI: 70-94%)  
    • XP 感度86% (95%CI: 73-94%) 特異度90% (95%CI: 76-97%)


  • Disease control (N=40) を含むXPとUSの石灰化検出の一致率
    • US(+) XP(+) 32.8%
    • US(+) XP(-) 12.2%
    • US(-) XP(+) 10.0%
    • US(-) XP(-) 45.0%


レントゲンとエコーは案外一致しないものなので注意が必要ですね。


2023年7月28日金曜日

チゲサイクリンの嘔気の対処法

今回はめちゃくちゃマニアックな記事ですね。興味ない方はすみません。読み飛ばしてください。刺さる人には刺さる(はず)


ある症例:

東南アジアに居住歴があるM. abscessusによる蜂窩織炎の50代女性。薬剤感受性はクラリスロマイシンは誘導体性がなくSであったが、イミペネムがI、ドキシサイクリン、モキシフロキサシン、ST合剤のいずれもRであった。

クラリスロマイシン+アミカシン+イミペネム+チゲサイクリンで治療を開始したところ、翌日から嘔気・嘔吐が出現した。

チゲサイクリンによる嘔気と思われる経過だが、薬剤変更の選択肢が乏しい中でチゲサイクリンを中止せざるを得ないのだろうか?



本題:

この症例は、代替薬はリネゾリドやクロファジミンなど、あるにはありますが、選択肢が少ない中で大事に使いたい薬剤なので、チゲサイクリンの嘔気への対処法について少し調べてみました。


チゲサイクリンの論文は古いものしか出てこないのですが、嘔気の対処について書かれたよさげなレビューと忍容性試験を見つけました。


Clin Infect Dis. 2006 Aug 15;43(4):518-24.

  • チゲサイクリンの最も高頻度である副作用は嘔気、嘔吐
  • 嘔気、嘔吐は用量依存性であり、薬物注入速度を遅くしても軽減されない
  • 制吐薬の投与でチゲサイクリンの忍容性は改善する
  • 嘔気は通常、最初の 1~2日間で発生し、ほとんどの患者では一過性である
  • チゲサイクリンの中止率は5%で、嘔気 (1.3%) と嘔吐 (1.0%) に関連したものが最多


Antimicrob Agents Chemother. 2005 Jan;49(1):220-9.

  • 単回投与でプラセボと比較した健常人の忍容性試験
  • 投与時間はむしろ60分より30分の方が嘔気が少ない
  • 食後に投与すると嘔気が軽減する
  • チゲサイクリンが胆汁から排泄され、消化管を刺激する機序が推定されている


ということで、対処法をまとめると以下。

  • 投与時間は30分の方が良い(消化管の通過時間の問題?)
  • 投与前に何か食べ物を摂取していただく
  • 制吐剤はもちろん使ってもらう
  • 一過性の症状である可能性も高いので、もう少しだけ我慢してもらうよう励ます


2023年7月21日金曜日

化膿性仙腸関節炎

ある事例:

16歳の男子高校生、2か月前から続く左腰部~臀部の痛みで来院した。MRIでは左の仙腸関節炎が認められ、精査目的に入院となった。入院してみると微熱があり、入院時の血液培養1/2セットからMSSAが発育した。


本題:

我々リウマチ医にとって仙腸関節炎といえば、もっぱら強直性脊椎炎や乾癬性関節炎などの脊椎関節炎なわけですが、感染症内科的には黄色ブドウ球菌の関節炎がCommon presentationです。

リウマチ医にも相談が来る(かもしれない)黄色ブドウ球菌の仙腸関節炎の特徴について基本的なレビューを元に概要をまとめてみました。


先に重要な点をまとめると、

  • 化膿性仙腸関節炎は小児を含む若年者、男性、左側に多い
  • 起因菌は半分以上がMSSA
  • 画像検査では、XP/CTの感度が低く、MRIで診断する
  • 外科デブリされている症例はあまり多くない



Pediatrics (1980) 66 (3): 375–379.

  • 小児のコホートでは、Septic arthritisの1~2%が仙腸関節炎
  • 男児に多く、3分の2が亜急性に発症する
  • 殆どの場合、X線所見は永続的に残るが、適切に管理した場合の生命予後は良好である


Rheumatology (Oxford). 2007 Nov;46(11):1684-7.

  • 仙腸関節炎の小児11例と成人22例のケースシリーズ
  • 小児では免疫不全を背景に発症する例は少ない(9.1% vs 31.8%)
  • CTの陽性率は36.4%、MRIは84.6%、骨シンチは93.3%
  • 治療は静注2~6週後に、2~3週の経口抗菌薬が実施されていた
  • 外科的デブリは9.1%で行われていた
  • 後遺症として5名の慢性股関節痛、4名の歩行異常、1名の下肢衰弱、1名の神経根障害があり、小児と成人での発症率の差はなかった


BMC Infect Dis. 2012 Nov 15;12:305.

  • 39名の感染性仙腸関節炎のコホート
  • 微生物は16例が関節穿刺、14例が血液培養、2例が尿の細菌学的検査、1例が腰筋穿刺で同定された
  • MSSAが16/33で最多、CNSが5/33、連鎖球菌が5/33、緑膿菌が3/33であった
  • 平均年齢は39.7歳、全例が片側性で左が優位だった(59%)
  • 臨床症状は、腰痛92%、発熱44%、乾癬5%、股関節痛3%
  • 仙腸関節X線は39.4%が正常、CTは48%で仙腸関節炎を同定、29.6%で腰筋膿瘍を同定、22.2%が正常。MRIの陽性率は92.5%だった



原則血流感染によって起きる疾患ですが、鍼治療による直達性の症例報告もあります。

化膿性関節炎が10万人に2~5人ということなので、その1~2%が仙腸関節炎ということだと、少なくともすごく多い疾患ではないですね。

とはいえ、これだと100万人に1人もいない?となって若干少なすぎる気もしますが・・・


治療期間は報告によってバラバラですが、4週間くらいが妥当というところでしょうか。

小児の急性化膿性骨髄炎の治療期間が短いために、報告もばらついているのだと思われます。


なお、仙腸関節症の検出に最も良い身体診察は、パトリックテストと大腿スラスト試験の組み合わせということです("化膿性"仙腸関節炎に限らない)

J Chiropr Med. 2021 Jun;20(2):95.

Adv Orthop.2022 Dec 28;2022:3283296.


大腿スラスト試験(Thigh thrust test):https://rehabilitation01.com/216/

パトリックテスト(Faber test):https://rehabilitation01.com/225/


2023年7月14日金曜日

Corynebacteriumに対するダプトマイシン曝露により、高度耐性株が選択される現象

感受性の分からないコリネバクテリウムにダプトマイシンは使いにくい、という話。


ダプトマイシンのMICがやや高いCorynebacteriumはしばしば目にしますが、そこまでよくあることでもないので、実際どのくらいなのか気になって調べてみました。


以下のようにダプトマイシン耐性株の症例報告はちょこちょこ引っかかります。

NVE:Antimicrob Agents Chemother. 2012 Jun;56(6):3461-4.

HSCT後の菌血症:J Clin Microbiol. 2009 Jul;47(7):2328-31. 

PJI:BMC Infect Dis. 2022 Mar 26;22(1):290.


Antimicrob Agents Chemother. 2003 Jan;47(1):337-41.

これは米国のサンプルサイズのやや大きい研究ですが、29/31 (94%) がダプトマイシンに感受性あり、ということでした。


Rev Inst Med Trop Sao Paulo. 2021 Jun 18;63:e49.

ブラジルの報告、1/10 (90%) が感受性あり。


Clin Microbiol Rev. 2013 Oct;26(4):759-80. 

CMRのレビュー。コリネのダプトマイシンの耐性について、「めったに観察されないことだが、高レベルのダプトマイシン耐性は、ダプトマイシン療法の副次的効果の可能性がある」と書かれています。


Antimicrob Agents Chemother. 2017 Oct 24;61(11):e01111-17.

J Infect Chemother. 2019 Nov;25(11):906-908.

ダプトマイシンの投与歴がある症例で高度耐性株が誘導された、という報告が複数あります(JICは阪大からの報告)。

上のAACでは感受性のある株にダプトマイシンを24時間曝露すると、全て耐性株となったというin vitroのデータが示されています。

バンコマイシン、テイコプラニンではこういうことはないようです。



ということで、まとめると、

  • 何の曝露もない状態だと、Corynebacteriumのダプトマイシン感受性率は90%以上
  • ダプトマイシンの曝露後に、急速に高度耐性株が選択されることがある



ダプトマイシン投与中や投与歴のある場合は、MICの動向に注意が必要なようです。

どうしても長期投与が必要になる骨髄炎、IE、PJIなどでは気をつけたいですね。


2023年7月7日金曜日

抗菌薬による薬剤性腎障害は、類似薬に交差性があるか?


ある症例:

腹腔内膿瘍に対してセフェピム+メトロニダゾールで治療していた患者さんが、治療開始12日目にCrが0.8から1.3に上昇、14日目の再検で1.9とさらに上昇しました。

セフェピムによる腎障害を疑い、セフェピムは中止。

代替薬を選択するにあたり、もちろんキノロンやST合剤は選択肢に上がりますが、他のβラクタム薬は選択肢に入れて良いのでしょうか?(類似薬は交差するのでしょうか?)



本題:


Int J Mol Sci.2021 Jun; 22(11): 6109.

まず、薬剤性腎障害のメカニズムですが、主に以下の3通りになります。


  1. 急性尿細管壊死 (ATN):アミノグリコシド、アムホテリシンB、テノホビル、シドフォビル、シスプラチン
  2. 尿細管分泌による閉塞:メトトレキサート、アシクロビル、スルファジアジン、シプロフロキサシン
  3. 急性尿細管間質性腎炎 (ATIN):PPI、NSAID、免疫チェックポイント阻害剤、βラクタム、ST合剤


ATNは細胞内蓄積によるので用量依存性、原則として緩徐進行です。

対策は補液。


尿細管分泌は薬剤の尿細管タンパクとの反応で結晶化や円柱による尿細管閉塞性の障害が起きます。

対策は結晶化を抑制する尿pH管理です(適正値は薬剤による)


ATINはハプテンや遅延型IV型アレルギーが関与する免疫原性であり、抗原提示されて免疫反応が起きる過程なので10日以内の急性に起こります。

予防はありませんが、早期にはステロイド治療が有効です。


余談になりますが、バンコマイシンは3つのメカニズム全てが関与していて複雑のようです。補液をしても予防できず、テイコプラニンと交差したりしなかったりするのはこのせいですね。納得。


閑話休題。


ということで交差するかどうかを考えなければならない薬剤性腎障害はATINのみなのですが、先にβラクタム薬の側鎖推定の考え方についておさらいしておきます。


Lancet. 2019 Jan 12;393(10167):183-198

こちらは薬剤アレルギー全般の考え方が述べられている総説です。

βラクタムの薬剤アレルギーが交差するかどうかは、主にペニシリン、セファロスポリンの側鎖(R1)が関係しています。

各クラス間の交差率は以下の図の通りで、R1側鎖で大きく5つのグループに分かれます。

  • ペニシリンと第一世代セファロスポリンの一部
  • 第一世代と第二世代セファロスポリン
  • 第三世代と第四世代セファロスポリン
  • カルバペネム系
  • モノバクタム系


メカニズムを考えれば皮膚で起きていることが腎臓で起きているだけなので、薬疹と同じ考え方(側鎖推定)をしても問題ないと理解して良さそうですが、そもそもATINが交差性の薬剤で反応するのかデータ不足なのと、理論上の死亡リスクがあることからリスクベネフィットバランスが取れていないのではないかという意見でした。

この総説ではATIN(論文中ではAINと表記されている)は臓器障害なので重篤な病変と考え、側鎖のみの交差性では選ばず、βラクタム全般を避ける安全マージンを取った意見になっています(下図)。


側鎖推定をする場合は専門家に相談してね、と書いてあるので絶対に使ってはダメということではないです。もちろん既往有害事象の程度の問題もあるでしょう。



Adv Chronic Kidney Dis. 2017 Mar;24(2):64-71.

もう1個総説を読んでみます。薬剤性間質性腎炎の総説で、ATINを交差性で考えてよいかについて書かれた部分が少しだけありました。


以下、該当部分を和訳抜粋。

モノバクタム系を除くすべてのβ-ラクタム系抗菌薬は、5員環または6員環で構成されている。モノバクタム系にペニシリン系との交差反応性が報告されておらず、ATINの原因として報告されていないのは、このためである。

ペニシリンアレルギーの患者におけるセファロスポリンとの交差反応は12%と推定されているが、この注意は主にI型反応に対してであり、ATINのようなIV型反応に対しては推測に過ぎない。



冒頭の症例の結論:

今回の腎障害がセフェピムによるATINと考えると、安全マージンを取れば、βラクタムで使ってよいのはアズトレオナム(モノバクタム系)のみ。

ペニシリン系、1,2世代セファロスポリン、カルバペネムは2%未満のごく低確率での交差性は推定されるので、必要性が高い場合は専門家に相談の上で使用を考慮する。


2023年6月30日金曜日

βDグルカンの診断能と偽陽性の原因について


今回の記事は研修医、レジデント向けです。


ある事例:

カンジダ血症の治療後に測ったβDGが更に上昇していたので、ミカファンギンを開始され、コンサルトになった膠原病患者さん。

血培は陰性、発熱も症状も一切なくお元気そうで、バイタルも安定しています。

「どう見ても菌血症や侵襲性真菌症とは思えないが・・・」

では原因は何なのでしょう?



本題:

βDグルカンは、そもそも陰性的中率が高く、陽性的中率は低めという特性があるので、診断ではなく除外に使うべきというのが一般的な理解です。


Open Forum Infect Dis. 2020 Feb 12;7(3):ofaa048.

  • 糸状菌予防投与を受けている血液内科患者の侵襲性真菌症(IFI)をレトロスペクティブに検討した
  • 造血幹細胞移植101例 (49.8%)、寛解導入化学療法89例 (43.8%)、GVHD13例 (6.4%)を解析
  • 評価可能な141例のうち、probable/proven IFIは8例 (5.7%)
  • βDGは真の陽性4 (2.8%)、真の陰性112 (79.4%)、偽陽性21 (14.9%)、偽陰性4 (2.8%)
  • 診断とサーベイランスの場面での陽性適中率はそれぞれ26.7%、0%だった
  • 結論:βDグルカンは、診断のためではなく除外のために使用すべきである


Open Med (Wars). 2018 Sep 8;13:329-337.

  •  メタ解析を行い、β-Dグルカンの侵襲性真菌感染症バイオマーカーとしての診断能を評価した
  • 37の関連する研究が包括基準を満たした
  • 感度0.83 (95%CI 0.38-0.61)、特異度0.81 (95%CI 0.80-0.82)、陽性尤度比5.13 (95%CI 3.98-6.62)、陰性尤度比0.23 (95%CI 0.18-0.30) であった



では、どのような場面で偽陽性になるのかというと、こんなレビューがあります。


J Fungi (Basel). 2020 Dec 29;7(1):14.

  • βDグルカンのレビュー。偽陽性の原因について解説されている
  • IVIgや血清アルブミンなどの血液分画製剤が、セルロース系のデプスフィルターで濾過する際に、植物性βDGが溶出し、偽陽性を起こしうる
  • このような製剤混入によるβDG上昇は、比較的速やかに低下する


  • 他の偽陽性の原因として、スポンジ・ガーゼなどの手術材料の使用、抗菌薬へのβDG混入、抗腫瘍薬のアジュバントへのβDG混入、
  • 腸管細胞障害・粘膜炎(その原因や結果となりうる広範囲熱傷、透析時低血圧、腸球菌血症を含む)、キノコなど菌糸体を多く含む食品の摂取、等がある
  • 腸球菌以外にも、ノカルジア、緑膿菌、肺炎球菌の菌血症で高値となる報告がある
  • 再生セルロースの透析膜による偽陽性は、最近ではβDGを溶出しない合成膜に置き換えられているため、可能性は低くなっている


βDG偽陽性が疑われる場合の検討すべき事項

  1. 医療品関連の偽陽性
    1. IVIg の点滴を受けたことがあるか。
    2. ヒト血清アルブミンの輸液を受けたことがあるか?
    3. TPNを受けたことがあるか?
    4. 過去4日以内に侵襲的な手術を受けたことがあるか?
    5. ガーゼや手術用スポンジを留置しているか?
    6. その他の侵襲的なセルロース製医療機器を使用しているか?
  2. 病状に関連した誤検出
    1. 重度の粘膜炎または腸炎を示す証拠があるか?
    2. 血液透析を受けているか?
    3. 侵襲性ノカルジア症があるか?
    4. 腸管虚血や低酸素症が疑われないか?
    5. ニューモシスチスは除外されているか?


βDGは非特異的マーカーなので、真菌感染症でも診断の基本は培養・病理であり、EORTC/MSG基準がゴールドスタンダードです。


EORTC/MSG基準

Clin Infect Dis. 2020 Sep 12;71(6):1367-1376.


マーカーだけで診断せざるを得ない場面はありますが、微生物同定の試みを一切しないのは問題です。


1,3-βDGは真菌の細胞壁の成分なので、これがあまり含まれない病原体は上がりにくいようです。

カンジダ、アスペルギルス、ニューモシスチスでは上がる

クリプトコッカス、ムーコルでは上がらないというのが有名(もちろん例外はある)

クリプトコッカスの細胞壁成分は主に1,6-βDGだそうです。


ノカルジアでβDGが高くなる報告が散見されており、治療が全く違う病原体なので要注意です。

BMC Infect Dis. 2017 Apr 13;17(1):272.

Int J Infect Dis. 2017 Jan;54:15-17.

Diagn Microbiol Infect Dis. 2015 Feb;81(2):94-5


非特異的マーカーであることを理解してないと、不適切にβDGを使いがちです。半分くらいは不適切なオーダーだという研究があります。


Open Forum Infect Dis. 2018 Aug 9;5(9):ofy195.

  • 334名の入院患者が少なくとも1回のBDG検査を受け、49% (165/334) の患者で不適切検査と判定された
  • 真の陽性:合計27例(Candidemia 6例、IPA 14例、ムーコル症 2例、クリプトコッカス症 2例、ブラストマイセス 1例,PCP 4例)
  • 血清学的、微生物学的、病理学的に真菌感染を支持するデータが得られなかった陽性患者は39例で,このほとんど(n=34)で偽陽性の原因が同定された
  • 5名が真菌感染の証拠がないBDG陽性に対して,39日間の不必要な抗真菌療法が行われた
  • ほとんどの参加者(40/47)は,BDG が偽陽性であった原因を特定することができなかった



さて、冒頭の症例は、あまりこの偽陽性の項目のなかに該当するものはなさそうです。カンジダ血症後にどのくらいβDG高値が続くのでしょうか。


Clin Vaccine Immunol. 2011 Mar;18(3):518-9.

  • 血液培養によるカンジダ陽性、その後に血液培養陰性化が得られた造血幹細胞移植患者6名における、βDグルカンの経時的測定の報告
  • βDG陽性は血培陰性化後も長期間持続した(中央値48日、範囲は17~102日)

 


ということで、この症例は「カンジダ血症後の高値持続」の可能性が最も高いのではないかと考えられます。

βDGは用法用量を守って正しく使いましょう!


2022年11月10日木曜日

EULAR推奨2022:自己免疫疾患における日和見感染スクリーニングと予防

 欧州リウマチ学会(EULAR)から自己免疫疾患の日和見感染予防とスクリーニングの推奨が出ました。日本の論文がたくさん引用されており、何だか嬉しいですね。


内容的には日本の生物学的製剤のガイドラインに準じた内容なので、あまり大きくプラクティスが変わることは書いてないのですが、個人的に驚いたところは、

  • なぜかHIVスクリーニングを推奨している
  • ハイリスク例のLTBIの定期スクリーニング(なるほど・・・!)
  • RAのPCP予防についてたくさん引用している割に推奨していない(残念)



2022 EULAR recommendations for screening and prophylaxis of chronic and opportunistic infections in adults with autoimmune inflammatory rheumatic diseases.

Ann Rheum Dis 2022 [Epub 03 November]

doi: 10.1136/ard-2022-223335


包括的原則

  • (A) csDMARDs、tsDMARDs、bDMARDs、免疫抑制剤、ステロイドによる治療の前に、すべてのAIIRD患者と検討・協議し、慢性及び日和見感染リスクを定期的に評価すべきである。
  • (B) リウマチ専門医と感染症専門医、消化器専門医、肝臓専門医、呼吸器専門医など、他の専門医との連携は重要である。
  • (C) 慢性及び日和見感染のスクリーニングと予防を決める際は、個々の危険因子を考慮し、定期的に再評価すべきである。
  • (D) 流行性感染症に関する国・地域レベルの要因のうち、国内ガイドライン・勧告を考慮すべきである。


推奨事項

  • (1) bDMARDs、tsDMARDsの開始前は、LTBIスクリーニングを推奨する(*1)。csDMARDs、免疫抑制剤、ステロイド(用量・期間による)の開始前も、LTBIリスクが高い患者(*2)ではスクリーニングを検討する。
  • (2) LTBIスクリーニングは、胸部XPとIGRA(ツ反ではなく)を含めるべきである。
  • (3) LTBI治療薬の選択と導入時期は、国内and/or国際ガイドラインに従うべきである。AIIRDの治療薬との相互作用に特別な注意を払う必要がある(*3)。
  • (4) csDMARDs、bDMARDs、tsDMARDs、免疫抑制剤、ステロイド(用量・期間による)の開始前は、全ての患者にHBVスクリーニングを行うべきである(*4)。
  • (5) csDMARDs、bDMARDs、tsDMARDs、免疫抑制剤、ステロイド(用量・期間による)の開始前は、HCVスクリーニングを考慮する(*5)。ALT高値や既知の危険因子がある場合(例:薬物の静脈内使用)は、HCVスクリーニングを推奨する。
  • (6) bDMARDs開始前にHIVのスクリーニングを推奨する(*6)。csDMARDs、tsDMARDs、免疫抑制剤、ステロイド(用量と期間による)治療前にも考慮する。
  • (7) csDMARDs、bDMARDs、tsDMARDs、免疫抑制剤、ステロイド(用量と期間による)開始前に、VZV免疫がない患者には曝露後予防について説明すべきである。
  • (8) 高用量ステロイド(特に免疫抑制剤併用)使用者では(*7)、リスク・ベネフィットに応じてPCP予防(*8)を考慮する。


気になったところの補足

  • *1: Bio治療中のIGRA陽性化が報告されているので、高リスク者では定期的な再スクリーニングを推奨している
  • *2: おそらく重度飲酒、喫煙者、流行国居住歴、医療従事者等を想定している
  • *3: 相互作用で重要なものは、RFPによるステロイド・JAK-Iの代謝促進(CYP3A4)、INHとMTX・LEF併用による肝障害
  • *4: HBV再活性化予防は、抗リウマチ治療中止後少なくとも 6-12 ヶ月継続を推奨(リツキシマブはさらに延長)
  • *5: HCV再活性化は稀だが、TNF阻害薬では一応報告があるので推奨された模様
  • *6: HIVスクリーニングはちゃんとした引用がなく根拠不明ですが、もし未治療のHIVがあった場合に、潜在する日和見感染を増悪させることを懸念しているのかもしれません(完全に想像)
  • *7: PSL15-30mg、2~4週間以上を有益と考察している
  • *8: ST 0.5T/day相当レジメンの有用性についても触れられてます