2020年3月18日水曜日

SARS-CoV2のエアロゾル・環境表面における安定性

結構環境で安定しているようですので、やはりエアロゾル対策、接触感染対策が重要です。
Figureがキレイでわかりやすいので、ぜひ御覧ください。


N Engl J Med. 2020 March 17
Aerosol and Surface Stability of SARS-CoV-2 as Compared with SARS-CoV-1
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMc2004973

  • エアロゾル中や環境表面上のSARS-CoV-2の安定性を評価し、ベイジアン回帰モデルでその減衰率を推定した
  • エアロゾル中のSARS-CoV-2は、実験中の3時間を通じてviableな状態が保たれ、感染力価も保持した
  • SARS-CoV-2は銅や段ボールより、プラスチックやステンレス鋼でより安定していた
  • viableなウィルスが検出されなくなるのは、銅では4時間後、ダンボールでは24時間後、ステンレス・プラスチックでは72時間後だった
  • SARS-CoV-2のエアロゾル中の半減期は中央値で1.1〜1.2時間(95%CI 0.64〜2.64)
  • これらの結果はSARS-CoV-2が、エアロゾル感染及び接触感染することが十分ありえることを示す

2020年3月15日日曜日

ANCA関連血管炎に対するC5a受容体阻害薬アバコパンの効果

アバコパンのPSL freeを検討したPilot studyを今更ながら読んでみたので、ご存じの方が多いかもしれませんが備忘録的に共有します。
この結果を受けてPhase3 (N=300)が始まったようで、Study自体は2018年に既に終了しており、まもなく結果も発表されるようです(JMIR Res Protoc. 2020 Feb 3. doi: 10.2196/16664. [Epub ahead of print] )。
2020年第1四半期までに結果がリリースされるのではないか、と書いてあります。


J Am Soc Nephrol. 2017 Sep;28(9):2756-2767.
Randomized Trial of C5a Receptor Inhibitor Avacopan in ANCA-Associated Vasculitis.


  • Design: Double blind RCT
  • P: ANCA陽性MPA/GPA(RPGN、低酸素のある肺胞出血、急性多発単神経炎、CNS病変は除外)
  • I: アバコパン(30mg 1日2回)+PSL20mg/day、またはアバコパン(30mg 1日2回) 単独
  • C: プラセボ+PSL60mg/day(1:1:1の3群比較)
  • O: 12週時のBVAS 50%減少かつ新規病変なしの達成率
  • 補足:すべての患者にCYまたはRTXが併用された


結果


  • 67名が登録され、高用量群23名、減量群22名、PSL free群22名に割り付けられた
  • 主要エンドポイントは、高用量群14/20 (70.0%)で達成された
  • 減量群では19/22 (86.4%)で達成され、対照との差は16.4%だった(90%CI −4.3% - +37.1%; 非劣性の場合P=0.002)
  • PSL free群では17/21 (81.0%)で達成され、対照との差は11.0%だった(90%CI -11.0% - +32.9%; 非劣性の場合P=0.01)
  • 有害事象の発生率は、 高用量群21/23 (91%)、減量群19/22人 (86%)、 PSL free群21/22 (96%)


補足


  • 重症例が除外されており、腎炎の患者がほとんどです
  • Table3がAEですが、アバコパン投与群には血管炎(元病増悪?)、白血球減少、高血圧が多く見えます

2020年3月14日土曜日

重症ANCA関連血管炎に対する血漿交換の意義(PEXIVAS trial)

全身性血管炎の寛解導入戦略における極めて重要なRCTの結果が論文化されました。
金字塔的studyになると思われますので、真面目に隅々まで読んでみました。


N Engl J Med. 2020 Feb 13;382(7):622-631.
Plasma Exchange and Glucocorticoids in Severe ANCA-Associated Vasculitis.


  • デザイン:Open-label RCT
  • 対象:ANCA陽性のGPA/MPAで、肺胞出血またはeGFR<50の腎病変を伴う患者
  • 介入:血漿交換あり・なし、ステロイド標準用量群・低用量群、2x2の4群を比較
  • 主要エンドポイント:1年時点の全死亡及び腎死
  • 二次エンドポイント:全死亡、腎死、持続的寛解、SAE、重篤な感染


統計解析


  • 164イベントにおける血漿交換のHR 0.64を想定し、両側α=0.05、検出力80%を設定
  • ステロイド用量による解析は、非劣性マージン11%、片側α=0.05、検出力80%を設定
  • 血漿交換はITT解析、ステロイド用量はPer-protocol解析された


治療プロトコル


  • ランダム化の前にIVCY、POCY、RTXの選択を主治医の裁量で行った
  • 全例mPSL pulse 1g 1~3日で治療開始
  • ステロイド標準容量群は、いわゆるBSRの減量プロトコルやRAVE試験と同じ
  • 減量群は2週目以降の投与量が標準用量群の半分(15週で5mgまで減量される)
  • 血漿交換は60ml/kg(実体重)のアルブミン置換で、隔日にて14日間施行
  • 出血リスクが高い場合は血漿交換終了後にFFP投与を行った


結果


  • 16か国、95センターで704人を登録、フォローアップ期間中央値は2.9年
  • 血漿交換352人、血漿交換なし352人、ステロイド減量群353人、標準用量群351人に割り付けられた
  • 死亡または腎死は、血漿交換群100/352 (28.4%)、対照群109/352 (31.0%)で有意差なし(HR 0.86; 95%CI 0.65-1.13, P=0.27)
  • 死亡または腎死は、減量群92/330 (27.9%)、標準用量群83/325 (25.5%)で非劣性を証明(絶対リスク差 -2.3%; 95%CI -4.5〜9.1)
  • 重篤な感染は1年間で、減量群96人(27.2%)142回、標準用量群116人(33.0%)180回と、減量群に有意に少なかった(IRR 0.69; 95%CI 0.52-0.93)

感想

残念な結果ですが、血漿交換のKaplan-Meier曲線を見ると少し差があるようにも見えます。

アルブミン置換なので肺胞出血の出血傾向に悪影響を与えたかもしれないことや、ただでさえ厳しいエンドポイント設定の中で、血漿交換のHRを0.64とかなり厳しめ目標を想定したデザインにより十分な検出力を担保できず、有意差が出なかったのではという懸念が残るように思います。

また二次エンドポイントも含めて寛解導入のスピードは検討されていません。もし早く寛解導入する効果があればCr doubling timeが延長することも期待できるので、Cr 2倍などを加えたソフトエンドポイントを検証しても良かったのでは、と思いました。

そもそも血漿交換に腎死・全死亡を4割も改善する効果があるとは思えないので、もう少し現実的な研究デザインでも良かったような印象を受けます。血漿交換は費用対効果や人的コストがイマイチなので、できれば省略したいという意図なのかもしれませんが。

個人的には「血漿交換は重症例全てに使用する断定的な根拠はなくなったが、少しでもadditive effectが欲しい勝負どころの症例では引き続き使用を検討してもよいのではないか」と解釈しました。

ステロイドはこれまで減量群と標準群の中間くらいのスピードで減量していたのですが、もっと早く減らすこともできるのでしょうね。

2020年3月8日日曜日

レテルモビルの薬理作用と臨床効果

先日、レテルモビルを飲んでいる患者にアシクロビルでヘルペス予防する必要があるのか議論になり、せっかくなので根拠についても色々調べてみました。
結論を先に書くと「レテルモビルはHSV、VZVに効果がない」ということになります。


PMDAに提出されたMSD株式会社のレテルモビル基礎検討資料より
https://www.pmda.go.jp/drugs/2018/P20180402006/170050000_23000AMX00455_H100_1.pdf

概要


  • 既存の抗CMV薬(ガンシクロビル、バラガンシクロビル、ホスカルネット)はDNAポリメラーゼの阻害を介して作用するが、レテルモビルはウイルスのターミナーゼ複合体を阻害することで抗ウィルス作用を発揮する。
  • ターミナーゼ複合体は哺乳類には存在しないため、理論上は副作用が少ないと考えられる。
  • レテルモビルはCMV-DNAの複製を抑制できないが、感染性粒子の産生を抑制することで抗ウィルス作用を発揮する。


レテルモビルの抗ウィルス作用はCMV選択的である

各種ウィルスに感染した培養細胞を用いたin vitro実験で、VZV、HSV-1、HSV-2、マウスCMV、ラットCMV、HHV-6、EBV、ヒトアデノウィルス、HBV、HIV、HCV、インフルエンザA、いずれのウィルスにも抗ウィルス活性を持たず、ヒトCMVに選択的な抗ウィルス薬であることが示された。


レテルモビルと抗HIV薬はお互いの抗ウィルス効果に影響を与えない

HIV及びCMVに感染した培養細胞を用いたin vitro実験で、 レテルモビルと抗HIV薬を加えて培養すると、いずれもEC50の2.5倍を超える変動はなく、同時に使用した場合の相互の抗ウィルス作用には影響しないと考えられた。
(抗HIV薬は、FTC, TDF, EFV, ETR, NPV, RPV, ATV, DRV, LPV, RTV, RAL, ELVを使用)


レテルモビルの第3相試験

ついでなのでこれも読みました。

N Engl J Med. 2017 Dec 21;377(25):2433-2444
Letermovir Prophylaxis for Cytomegalovirus in Hematopoietic-Cell Transplantation


  • Design: double-blind RCT
  • P: 18才以上のAllo-HSCT予定でCMV-seropositiveの患者
  • I: レテルモビル 480mg/day (シクロスポリン投与中は240mgに減量) 移植後14週間投与
  • C: プラセボ (実薬:プラセボ=2:1)
  • O: 主要エンドポイントはCMV disease、またはpre-emptive治療が必要なCMV抗原血症

結果

  • 738名の組入患者のうち、495名がランダム化され解析対象となった。
  • 移植後24週までの主要エンドポイントは レテルモビル群122/325 (37.5%)、プラセボ群103/170 (60.6%)で、 レテルモビル群に有意に少なかった (P<0.001)
  • CMV diseaseはレテルモビル群の1.5%、プラセボ群の1.8%であり、主要エンドポイントは主にCMV抗原血症によって規定されていた
  • 有害事象の頻度と重症度は、両群でほぼ同じだった
  • 24週の全死亡率はレテルモビル群で有意に低かった (10.2% vs 15.9%, p=0.03) が、48週の全死亡率はレテルモビル群で低いものの有意ではなかった (20.9% vs 25.5%, p=0.12)
  • 移植高リスク群と低リスク群におけるpost-hoc解析では、レテルモビルによるCMV予防効果が同等にも関わらず、高リスク群のレテルモビル投与の死亡率減少効果が顕著であること、死亡率の上昇が臨床的に重度のCMV感染の存在と関連していることより、他のCMV治療薬(ガンシクロビル等)を回避することによるメリットが推定された。

2020年3月7日土曜日

COVID-19患者の病室内環境汚染

シンガポールからの短報です。Primitiveなデータであり、Table2だけ見ればOKかと思います。
これまで散々推測されている通り、COVID-19は接触感染がかなり重要な感染経路と考えられ、インフルエンザ以上に接触感染対策、環境清掃、手指衛生が重要になりますね。


JAMA. 2020 Mar 4.
Air, Surface Environmental, and Personal Protective Equipment Contamination by Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2 (SARS-CoV-2) From a Symptomatic Patient


方法


  • SARS-CoV-2アウトブレイクセンターで、控え室と浴室を備えた空中感染隔離室の3人の患者で26箇所の表面環境サンプルを採取し、SARS-CoV2のRT-PCRを行った


結果


  • ルーチン清掃後に採取された患者A,Bの環境サンプルは全て陰性だった
  • ルーチン清掃前に採取された患者Cのサンプルは、病室内の15箇所中13箇所、トイレの5箇所中3箇所(ドアノブ、便器を含む)でSARS-CoV2が検出された
  • 環境汚染の程度に関わらず、空気サンプルは陰性だったが、患者Cの排気口は陽性だった

Limitation

  • ウィルス培養を施行しておらずViabilityは不明
  • 採取プロトコルが一定でなく、サンプルサイズも小さかった(特に空気は希釈されている可能性が高い)

2020年3月6日金曜日

性と生殖に関するACRガイドライン2020

リウマチ性疾患(RMD: Rheumatic and Musculoskeletal Diseases)における、性と生殖に関するACRガイドライン2020が出ました。

MMFはホルモン避妊薬の有効性を低下させる、体外受精は卵巣刺激中のエストロゲン濃度上昇により血栓リスクが高度に懸念される、など、知らないことが多かったので、とても勉強になりました。
例によって時間のない方はFigure1,2だけ見れば良いかもしれません。


Arthritis Rheumatol. 2020 Feb 23.
2020 American College of Rheumatology Guideline for the Management of Reproductive Health in Rheumatic and Musculoskeletal Diseases
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/art.41191

避妊法

  • Non-SLEのRMDでは、効果の低い避妊薬や避妊なしより、ホルモン避妊薬やIUDの使用を推奨する
  • aPL(-)の低活動性SLEでは、避妊なしよりも効果的な避妊薬(ホルモン避妊薬やIUD)の使用を強く推奨する
  • SLEでは経皮エストロゲン-プロゲスチンパッチを使用しないことを推奨する
  • 腎炎を含む中~重度活動性のSLEでは、エストロゲン含有避妊薬の臨床データが乏しいため、プロゲステロン避妊薬かIUDの使用を強く推奨する
  • aPL陽性者は合併症の有無に関わらず、エストロゲンを含む避妊薬は血栓リスク増大のため禁忌
  • aPL陽性者ではDMPAを除くプロゲステロン避妊薬は使用できるが、避妊効果は劣る
  • ステロイドや基礎疾患に伴う骨粗鬆症リスクが高い場合、DMPAを避けることを検討する
  • MMFは血清エストロゲン及びプロゲステロンレベルを下げる可能性があるため、ホルモン避妊薬の有効性が妨げられる懸念がある
  • MMF服用者は、IUD単独または他の2つの避妊方法の併用を検討する

生殖補助療法(ART)  

  • 妊娠適応薬を服用下に疾患活動性が安定した、aPL(-)で合併症のないRMDでは、必要に応じてARTを行って良い
  • 中~重度活動性のSLEでは、妊娠リスクが高い懸念からARTを延期することを推奨する
  • ART処置中のSLEでは、経験的なステロイド増量を検討しても良い
  • ART処置中の無症候性aPL陽性者では、ヘパリンまたは低分子量ヘパリンによる予防的抗凝固療法を検討する
  • 状態が安定しているRMDで卵母細胞または胚の凍結保存の際、免疫抑制剤・生物学的製剤の継続を強く推奨する(シクロフォスファミドは除く。MTXは継続して良い)

妊孕性

  • IVCYを行う閉経前RMDの卵巣機能不全予防のため、毎月のGnRHアゴニスト療法を検討してよい
  • 男性の健児を妊娠する生殖能力保全のため、CY治療前の凍結精子保存を希望する場合は行うことを強く推奨する

閉経後ホルモン療法(HRT)

  • aPL(-)のSLE患者では、重度の血管運動症状に対するHRTの希望がある場合、考慮しても良い(ループスフレアのリスクがわずかに増加するため条件付き推奨となっている)
  • 無症候性aPL陽性者では、HRTを行わないほうが良い
  • obstetric and/or thrombotic APSでは、HRTを行わないことを強く推奨する
  • 抗凝固療法中のAPSやaPLが陰性化しているAPSも、HRTを行わないほうが良い
  • aPL陽性の既往がある、現在は陰性化している無症候性陽性者は、HRTの希望がある場合、検討しても良い

2020年3月4日水曜日

免疫チェックポイント阻害剤による炎症性関節炎

免疫チェックポイント阻害剤(ICI)による炎症性関節炎の前向き観察研究です。
腫瘍内科医、リウマチ医、いずれにとっても好ましい結果が得られていると思われ(それがバイアスの可能性がありますが)、とりあえず治療のプラクティスは変える必要がなさそうですね。


Immune checkpoint inhibitor-induced inflammatory arthritis persists after immunotherapy cessation.
Ann Rheum Dis. 2020 Mar;79(3):332-338.

デザイン


  • 前向き観察研究


方法


  • 対象はICI関連炎症性関節炎で、元々リウマチ性自己免疫疾患がある患者は除外
  • 関節炎持続に関する因子をCOX比例ハザードモデルを用いて解析
  • 関節炎治療の腫瘍反応性に対する影響をロジスティック回帰分析で解析


結果


  • 60人の患者を登録し、ICI中止後の追跡期間中央値は9ヶ月だった
  • 血清反応陰性関節炎が大半だった(RF 1.8%, CCP 5.5%, ANA 14.3%)
  • 最終観察時点において53.3%の患者で活動性関節炎が持続していた
  • 関節炎の持続は、複数のICIで治療していること、他のirAEの存在、腫瘍反応性が良好であることと関連していた
  • 関節炎治療薬の選択(ステロイド、csDMARD、Biologics、NSAIDs)による腫瘍反応性の低下との関連は見いだせなかった