後輩にチクングニア関節炎のメカニズムについて質問を受けましたが、あまり深く考えたことはなく、いい機会なので調べてみました。
ウィルスによる関節炎は広義の反応性関節炎と理解できます。
関節炎のメカニズムは、主に3つあるとのこと(UpToDate:"Viruses that cause arthritis")
- ウィルスの直接侵入による炎症
- ウィルス関連抗原との免疫複合体形成
- ウィルスの持続感染による炎症(動物モデルのレンチウィルス感染のみのようです)
1はパルボウイルス、エンテロウイルス、アルファウイルス、
2はHBV、HCV、アルファウィルス、パルボウィルス、とのことです。
チクングニアはアルファウィルス属なので両方あり得るようです。
実際、チクングニア慢性関節炎患者の滑膜マクロファージから、チクングニアウィルスのRNAや蛋白発現が確認できるそうです。
・J Immunol. 2010 May 15;184(10):5914-27.
・PLoS ONE. 2007;2:e527.
チクングニア関節炎のメカニズムに関する論文をいくつか読んでみました。以下、ショートサマリーです。
Sci Transl Med. 2017;9(375)
チクングニア関節炎はCD4+T細胞を介して関節炎を起こすことを示した論文
- ウィルス抗原の提示を受けるためのT細胞受容体(TCR)を欠損したTCRノックアウトマウスは、チクングニアウィルスに感染しても関節炎は起こさない
- チクングニアに感染した野生型マウスのCD4+T細胞を輸注することで、TCRノックアウトマウスにも関節炎が起きる
J Virol. 2015;89(1):581. Epub 2014 Oct 22.
チクングニア関節炎の骨破壊の病態を患者サイトカインレベルと動物モデルで検証した論文
- チクングニア患者の血清では破骨細胞活性のマーカーとなるRANKL/OPG比が増加している
- チクングニア感染マウスではMCPの発現が高度に上昇し、骨量減少と相関した
- さらにこの骨破壊はMCP阻害剤であるbindaritにより有意に減少した
Diseases. 2018;6(4) Epub 2018 Oct 20.
慢性関節炎に至ったチクングニアと早期に回復した患者を比較した症例対照研究
- 慢性化例(n=121)と20か月以内に回復した症例(n=121)で年齢、性別を一致させて比較した
- 急性感染時のサイトカイン応答の強度が慢性関節痛の発生率の低下と相関した
- 急性感染時のTNFα、IL-13、IL-2、IL-4の低値は慢性関節痛の予測因子であった
- 強力なサイトカイン応答がウイルス除去に必要であり、また免疫寛容に関連するサイトカインは、慢性関節炎への進展に抑制的に働く可能性が示唆された
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