2020年2月2日日曜日

腎代替療法下の抗菌薬投与量

腎代替療法下の薬物投与量は文献によって記載がバラバラなことが多く、いつもどれを採用してよいか悩みます(特にCHDFのバンコマイシン)。色々文献を読んでみた結果、血液浄化の設定から薬物クリアランスを推定する方法が参考になったので紹介します。


日本における血液浄化療法の設定について

よく使われる間欠血液透析(IHD)と持続血液濾過透析(CHDF)の、日本における一般的な設定は以下です。

  • IHD: Qb 200mL/min, Qd 500mL/min
  • CHDF:  Qb 100mL/min, Qd 7-10mL/min, Qf 5-8mL/min

CHDFの設定が見慣れない数値だと思いますが、実際の機械に表示されるQd, Qfの単位はmL/hになっている点に注意です。

話は少し横道にそれますが、よく急性期血液浄化のstudyで見かける"High volume"、"Low volume"などの浄化量の単位はmL/kg/hourのようですので、勘違いしないように注意です。体重60kgなら数値は同じになるので勘違いしやすいです。私も勘違いしていました。


腎代替療法のクリアランスの基本的な考え方

  • IHDの場合、QdがQbより大きいため、クリアランスはQbに依存する
  • CHDFの場合、 Qd, QfがQbと比較して極めて小さいため、クリアランスはQd, Qfに依存する
  • IHDでは少分子量であるほど除去されやすい
  • CHF(CHDFを含む)では中分子量物質(MW 500-20000)も除去されやすくなる
  • アルブミン(MW 60000)と結合している物質は血液浄化での除去は期待できない


IHDにおけるクリアランス推定

IHDの場合、QdがQbより大きいため、クリアランスはほぼQbに依存します。

MW110で蛋白結合率0%であるクレアチニンのIHDにおけるクリアランスは、Qb 200mL/minで150mL/min程度になるようです。
IHDが1回4時間、週3回なので、Ccr 10.7mL/min相当と計算されます。
バンコマイシンはMW 1449、蛋白結合率34%ですので、5-10mL/min程度のクリアランスになると推定できます。


CHDFにおけるクリアランス推定

CHDFの場合、 Qd, QfがQbと比較して極めて小さいため、クリアランスはQd, Qfに依存します。

CHDFの場合は透析と限外濾過で除去される量からクリアランスが推定でき、流量が少ないためほぼQd+Qf(=浄化量)に等しい値と考えて良いようです。
したがって一般的な設定だと、Ccrは12-14mL/min相当になります。


クリアランス推定と投与量設計のまとめ

上記のクリアランス推定を基本として、

  • 自尿(残腎機能)があるとクリアランスは尿量分上がる。
  • CHDFではIHDと比べて低効率長時間のため分布容積が大きくても除去されやすい。

などの要素を加えて、推定クリアランスを修正して投与設計すれば良いと思われます。
細かいことを述べましたが、結局ほとんどどの場合はクリアランス5-10ml/min相当になるので、めんどくさい人はそれで覚えても大体のケースでは大丈夫だと思います。



参考文献
1) 日本内科学会雑誌 第103巻 第 5 号
2) Jpn J Nephro1 Pharmacother 2014; 3(1): 3-19.
3) 白鷺病院ホームページ
http://www.shirasagi-hp.or.jp/goda/fmly/gate.html

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