待ちに待った米国主導のレムデシビルRCTの結果です。
回復までの期間を4日縮めるという効果をどう解釈するのかがポイントでしょうね(回復率の改善は、回復が早まった効果による短期的なアウトカム改善に見える)。
このデータからは、酸素が始まったときが最も適切な開始時期で、それ以降は効果が期待しにくいという理解になりそうです。
N Engl J Med. May 22, 2020
Remdesivir for the Treatment of Covid-19 — Preliminary Report.
- Design: 国際共同多施設 double-blind RCT
- P: 入院が必要な成人COVID-19
- I: レムデシビル(day1: 200mg iv、day2-10: 100mg iv)
- C: プラセボ10日間 1:1割付
- O: 主要エンドポイントは回復(カテゴリー3以下)までの日数(層別Log-rank test)
※ カテゴリー
- 1=活動制限なし
- 2=活動制限があるが入院不要
- 3=酸素や医療ケアは不要だが入院が必要(感染管理のための入院)
- 4=酸素は不要だがCOVID-19に関連した活動制限による医療ケアが必要
- 5=酸素が必要
- 6=NIPPVや高流量の酸素が必要
- 7=機械的換気やECMOが必要
- 8=死亡
結果
- 1107人を登録、541人がレムデシビル群、522人がプラセボ群に割り付けられた
- 発症から登録までの日数の中央値は9日だった
- レムデシビル群、プラセボ群のベースライン重症度は、各々カテゴリ4が12.5%, 11.4%、カテゴリ5が41.0%, 38.1%、カテゴリ6が18.1%, 19.0%、カテゴリ7が23.1%, 28.2%
- レムデシビル群の回復までの日数は中央値11日で、プラセボ群の15日と比較して有意に短かった (RR 1.32, 95%CI: 1.12-1.55; P<0.001)
- カテゴリ5 (N=421) における回復率が1.47 (95%CI: 1.17-1.84) と最も大きかった
- カテゴリ7 (N=272) におけるの回復率は0.95 (95%CI: 0.64-1.42) だった
- レムデシビル群の14日時点の死亡率は7.1%で、プラセボ群の11.9%と比較して低い傾向 (HR 0.70, 95%CI: 0.47-1.04)
- 重篤な有害事象はレムデシビル群で28.8%、プラセボ群で33.0%、内訳は貧血、AKI、腎機能障害、高血糖、LFT上昇などだが、両群における発生率に大きな差はない
感想
COVID-19のエビデンスのある初の治療薬として確立したことは、疾患の認知からわずか半年という点も含め、素晴らしい成果を上げた歴史的臨床試験だと思います。
主にLimitationについて考察します。
まず解釈するに当たり極めて重要なCOIですが、資金提供がNIAID、NIHからあるようです。ギリアドからは薬剤提供のみとのことですが、社員がプロトコル開発と毎週のチームコールに参画しています。米国の威信をかけたプロジェクトであり、結果が発表されたタイミングも含めて、biasに少なからず注意して解釈する必要がありそうです。
αエラー5%、検出率80%として10%程度の改善率の検出に必要な症例数は、多めに見積もって両群350ずつくらいではないかと試算します。ごく小さな差を多めの症例数によって有意に検出した可能性はあるかもしれません。
死亡率は14日で比較されており、ほぼ肺を限局的に障害するCOVID-19の場合は、少し長めの日数で評価する必要があったと思います(Under estimateしたかもしれません)。
最も注目すべきアウトカムの一つである、機械的換気への移行率が抑えられたか、このデータからは読み取れないのは残念な点でした(Supplement S1を見ると一見差がありそうなんですが・・・)。
また1ヶ月程度の短期的な回復率を見ているだけなので(重傷者が回復する時期ではない)、線維化によるダメージなどに変化があるのか、3ヶ月後くらいの予後も気になりますね。