2020年5月4日月曜日

運動負荷心エコーは強皮症におけるPH進展を予測する

手間がかかりそうな検査ですが、症例を選べば役に立つかもしれません。


J Rheumatol. 2020 May 1;47(5):708-713.
Exercise Echocardiography Predicts Future Development of Pulmonary Hypertension in a High-risk Cohort of Patients With Systemic Sclerosis.

Design

  • 前向き観察研究

対象

  • 強皮症でPHではないがPHハイリスクの患者
  • PHハイリスクの定義:労作時呼吸苦、DLCO<60%, FVC%<60%, FVC%/DLCO% >1.6, 安静時RVSP>30mmHgかつ<50mmHg
  • 除外基準:冠動脈疾患、LVEF<50%、Grade2以上の拡張障害、トレッドミル施行不能者、安静時RVSP>50mmHg

方法

  • 全例に運動負荷心エコー(EE)を行い、RVSP≥ +20mmHgを陽性とした
  • 陽性者は全例右心カテーテルでの評価を行った
  •  EEの評価は、トレッドミルでBruceプロトコルを実施し、予測最大心拍数の85%を達成後、1分以内にRVSPを測定した

結果

  • 85名が登録され、罹病期間は平均7.7±6.6年で、うち13名が中央値3.5年(IQR 1.5~5年)でPHを発症した
  • PH発症はEE陽性群10/43(23%)、EE陰性群3/42(7%)で、有意にEE陽性群に多かった (p=0.04)
  • EE陽性群のPHを発症しなかった残り33人のうち22人(67%)が、平均5年間の追跡期間で持続的陽性を示した

結論

  • EE陽性はPHへの進展を予測し、EE陰性はPH低リスクを予測するかもしれない
  • EE陽性の大部分はPHに進展しないものの、持続陽性を示す

感想

手動で計算してみるとEEの感度76.9%、特異度54.2%、PPV 30.3%、陽性尤度比1.68、となりますので、陽性の場合のPHリスクは1.7倍程度と見積もられ、凄くリスクが高いわけではないが警戒度は少し上がる、と解釈しました。
偽陽性が問題になるので実臨床での運用としては、右心カテをするか迷う場合の最後のひと押しの評価といったくらいの位置づけになるでしょうか。

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