2020年5月19日火曜日

ACR痛風ガイドライン2020

ACRの痛風ガイドラインが改定されています。
以前ほど生活習慣の影響は強くないと考えて良さそうで、プリン体摂取もそれほどアウトカムに影響しないようです。体重と飲酒は弱くフレアと関連がありそうですが、基本は薬物療法であると解釈できそうです。

フェブキソスタットがアロプリノールと比較して、心血管死がわずかに増加するかもしれないという話題や、
N Engl J Med. 2018 Mar 29;378(13):1200-1210. 
Circulation. 2018 Sep 11;138(11):1116-1126.
ロサルタンの尿酸減少効果については知らなかったので、非常に勉強になりました。
Hypertension. 2011 Jul;58(1):2-7.


Arthritis Care Res (Hoboken). 2020 May 11.
2020 American College of Rheumatology Guideline for the Management of Gout.

尿酸降下治療の適応

  • 1個以上の皮下痛風結節、痛風性X線変化、年2回以上の痛風発作では尿酸降下治療を強く推奨する
  • 低頻度(年2回未満)の繰り返す痛風発作に対する尿酸降下治療を弱く推奨する
  • 初回痛風発作では尿酸降下治療を一般に推奨しないが、CKD stage3以上、尿酸>9mg/dL、尿路結石を合併する場合は検討して良い
  • 無症候性高尿酸血症に対する尿酸降下治療は推奨しない

尿酸降下治療の薬剤選択

  • CKD stage3以上も含めて、1st line治療にはアロプリノールを強く推奨する
  • CKD stage3以上ではプロベネシドよりアロプリノールかフェブキソスタットを強く推奨する
  • Pegloticase(尿酸オキシダーゼ)は1st line治療として使用しないことを強く推奨する
  • アロプリノールとフェブキソスタットは低用量から漸増することを強く推奨する
  • プロベネシドは低用量から漸増することを弱く推奨する 
  • 抗炎症薬(コルヒチン、NSAID、ステロイド)の予防的併用を強く推奨する(最低3~6ヶ月)

尿酸降下治療の開始時期

  • 痛風発作中ではなく発作が軽快した後に尿酸降下治療を開始することを強く推奨する
  • 尿酸値をガイドにして目標尿酸値を目指す "Treat to target” 戦略を強く推奨する
  • 尿酸6mg/dL以下に維持することを強く推奨する
  • T2T strategy最適化のため、患者教育やshared decision‐makingを含む非医師による尿酸降下治療の拡張プロトコルの提供を強く推奨する

尿酸降下治療の期間

  • 無期限に継続することを弱く推奨する

アロプリノールに関する推奨

  • 東南アジア民族(漢民族、韓国、タイ等)及びアフリカ系アメリカ人では、開始前にHLA–B*5801 alleleを検査することを弱く推奨する(HLA–B*5801はアロプリノール過敏症のリスク)
  • 上記以外の民族にHLA–B*5801を検査しないことを弱く推奨する
  • アロプリノールは100mg/day以下(CKDでは更に低用量)から開始することを強く推奨する
  • アロプリノール脱感作は他の尿酸降下治療で代用できない場合に弱く推奨する

フェブキソスタットに関する推奨

  • 心血管の新規イベントまたは既往患者では、他の推奨に反しない限り、可能な場合は他の尿酸降下治療への切り替えを弱く推奨する

尿酸排泄促進薬に関する推奨

  • 投与前及び投与中に尿中尿酸の測定を行わないことを弱く推奨する(食事の影響を受けるため)
  • 尿酸排泄促進薬投与中の尿のアルカリ化は行わないことを弱く推奨する(有用性の証拠なし)

いつ尿酸降下治療の変更を検討すべきか

  • 最初のキサンチンオキシダーゼ阻害薬(XOI)を最大容量で投与しているにも関わらず、尿酸>6mg/dLが持続し、かつ皮下痛風結節や年2回以上の痛風発作が軽快しない場合には、尿酸排泄促進薬の追加ではなく別のXOIに切り替えることを弱く推奨する
  • XOI、尿酸排泄促進薬、他の治療介入によっても目標の尿酸値に到達せず、かつ皮下痛風結節や年2回以上の痛風発作が改善しない場合に、Pegloticaseの使用を強く推奨する
  • 皮下痛風結節がなく、年2回未満の痛風発作の場合は、尿酸値が目標に達しなくともPegloticaseは使用しないことを強く推奨する

痛風発作の管理

  • IL-1阻害薬やACTHよりも、コルヒチン、NSAID、ステロイド(経口、関注、筋注)を1st line治療とすることを強く推奨する
  • コルヒチンは有効性が同等で低リスクであることから、低用量での使用を強く推奨する
  • 局所冷却を補助療法として弱く推奨する
  • 上記の抗炎症治療が全て無効か忍容性がないか禁忌の場合、IL-1阻害薬の使用を弱く推奨する
  • 内服不能の場合はIL-1阻害薬やACTHではなく、ステロイド静注・筋注・関注で治療することを強く推奨する

生活習慣の管理

  • 疾患活動性に関わらず、アルコール、プリン体、高果糖コーンシロップを制限することを弱く推奨する
  • 疾患活動性に関わらず、過体重の患者では減量プログラムを弱く推奨する
  • ビタミンCサプリメントは推奨しない(有効性の証拠なし)

併用薬の管理

  • ヒドロクロロチアジドを別の降圧薬に切り替えることを弱く推奨する
  • 降圧薬としてロサルタンを優先的に選択することを弱く推奨する(尿酸の減少効果がある)
  • 適切な適応で低用量アスピリンを内服している場合、(尿酸降下を期待しての)アスピリン中止を行わないことを弱く推奨する
  • コレステロール降下薬を(尿酸降下を期待して)フェノフィブラートに変更または併用することは行わないことを弱く推奨する

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