全くこれまで気にしていませんでしたが、嗅覚障害や味覚障害などの神経症状は5~7%程度に見られる比較的common presentationのようです。
嗅神経に発現したACE2受容体を介したCNSへの侵入が示唆されており、これにより呼吸停止などの延髄障害が起きるのではないかとの意見もあるようで大変興味深いです。
せっかくなので関連論文をまとめてみました。
medRxiv. Posted February 25, 2020.
Neurological Manifestations of Hospitalized Patients with COVID-19 in Wuhan, China: a retrospective case series study.
- PCRで診断したCOVID-19患者214名(うち重症88名)を解析
- 神経筋症状が78名(36.4%)に認められた
- 内訳は、めまい16.8%、頭痛13.1%、筋障害10.7%、意識障害7.5%、味覚障害5.6%、嗅覚障害5.1%
- 重症例で神経筋症状の合併が多く (45.5% vs 30.2%, p<0.05)、特に筋障害(19.3% vs 4.8%)、意識障害(14.8% vs 2.4%)、脳卒中(5.7% vs 0.8%)が多かった
J Virol. 2008 Aug; 82(15): 7264–7275.
Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus Infection Causes Neuronal Death in the Absence of Encephalitis in Mice Transgenic for Human ACE2
※「SARS-CoV2」ではなく「SARS-CoV」の in vivo データです
- SARS-CoVを鼻腔内感染させたマウスで、ウイルス抗原は60〜66時間まで検出されないが、この時点で嗅球および嗅球に接続した脳領域にウィルスが検出された
- さらに6〜12時間後、ウイルス抗原が脳全体に検出された
- 主に嗅覚神経を介して脳にウィルスが入ったことが示唆された
- 鼻腔内感染させたマウスでは4日目までに瀕死となり、組織学的に誤嚥性肺炎が観察された
- 4日目を超えて生存したマウスでは、ウイルスが除去された領域にニューロンの喪失が伴っていた
ACS Chem Neurosci. 2020 Mar 13. [Epub ahead of print]
Evidence of the COVID-19 Virus Targeting the CNS: Tissue Distribution, Host-Virus Interaction, and Proposed Neurotropic Mechanisms.
- SARS-CoV2ウィルスはACE2受容体を介して体内へ侵入する
- ヒトのグリア細胞とニューロンにはACE2受容体が発現している
- 急性期COVID-19患者の脳脊髄液中にウィルスが存在することが示されている
- COVID-19における神経症状が、嗅球を介したウィルスのCNS侵入による可能性を示唆している
J Med Virol. 2020 Feb 27.
The neuroinvasive potential of SARS-CoV2 may play a role in the respiratory failure of COVID-19 patients.
- 感染の初期段階で感染した脳領域の非神経細胞でウイルスがほとんど検出されないため、血行性やリンパ行性の侵入は否定的と考えられている
- SARS-CoV2が最初に末梢神経終末に侵入し、次にシナプス接続ルートを介してCNSにアクセスする可能性を示す証拠が増えている
- ウイルス抗原は疑核・孤束核を含む脳幹で検出される
- 孤束核は肺・気道の感覚性求心線維の入力、疑核・孤束核からの遠心性線維は気道平滑筋、腺、血管の神経支配に関与していることから、死因の一つに脳幹の心肺機能不全が考えられている(文献は見つけられませんでしたが、突然の呼吸停止などが見られることがあるようです)
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