2020年3月28日土曜日

SScに対するACE阻害薬の投与はSRC発症リスクである

個人的にACEiの使用頻度が低いとはいえ、相当驚きの論文です。
RASが著増するいわゆる狭義のSRCだけが含まれているわけではないでしょうし、薬剤そのもの作用とも思えず、因果関係があるようには思えません。恐らく何か交絡因子が複数関与していると思うのですが、よくわかりませんでした。
とはいえ大変重要な知見と思いますので、結果をまとめました。


Arthritis Res Ther. 2020 Mar 24;22(1):59.
ACE inhibitors in SSc patients display a risk factor for scleroderma renal crisis—a EUSTAR analysis

  • Design: EUSTARの前向きコホート
  • Patient: 最低1回の受診歴があり、SRCの既往がないSSc
  • Method: SRC、(動脈性)高血圧、降圧薬、糖質コルチコイド(GC)に関して分析


結果


  • 14524名のSScのうち7648人の患者を解析した
  • 27450人年で102人の患者がSRCを発症し、発症率は3.72/1000人年(95%CI 3.06-4.51)だった
  • SRC初発までの期間の中央値は1.7年(IQR 0.5-4.2)
  • 単変量で有意なSRCリスクは男性(24 vs 14%, p<0.001)、発症初期(3.1 vs 5.2y, p<0.001)、Scl70抗体陽性(46 vs 33%, p=0.001)、びまん型皮膚病変(49 vs 29%, p<0.001)、高血圧(38 vs 20%, p<0.001)、腱摩擦音(17 vs 8%, p<0.001)
  • SRC患者の5年死亡率は18.6%(95%CI: 13.0-26.3%)、non-SRC-SScの5年死亡率は9.5%(95%CI: 8.8-10.3%)
  • ACEiはSRC発症者で有意に多く投与されており(35 vs 18%, p<0.001)、ステロイド、CCB、ARBで有意差は見られなかった
  • このACEiの効果は、Propensity score matching及び確率重み付けを使用して調整したモデルでも同様だった
  • 多変量COX回帰分析で6083人、78人のSRCを解析したところ、有意なリスク因子はびまん性皮膚病変(HR 1.79, 95%CI 1.06-3.02)、高血圧(HR 2.22, 95%CI 1.34-3.66)、ACEi(HR 2.07, 95%CI 1.28-3.36)であった
  •  このACEiのリスクはPropensity score matchingやInverse probability weightingによる調整後も同様だった
  • 2つの最重要リスク要因である高血圧とACEiに相互作用は認められなかった(HR of interaction term 0.83, 95%CI 0.32–2.13, p = 0.69)


結論


  • ACEiはSRC治療の中心的存在だが、発症前の投与は SRC発症の独立した危険因子である
  • ARBはSRC発症リスクの点で、SSc患者の高血圧治療における安全な選択肢かもしれない

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