2021年12月28日火曜日

COVID-19に対する早期レムデシビルの重症化抑制効果(PINETREE試験)

PINTREE試験(レムデシビルOPAT)のRCTをまとめました。

前回モルヌピラビルRCTの記事でNNTを比較しましたが、こちらを読み込んでみたらイベント数が少なすぎて(集団が違いすぎて)、単純比較したのはまずかったかなと思ってしまいました。

それにしてもレムデシビルはRCTをやるたびに結果が変わる不思議な薬ですね。モルヌピラビルとレムデシビルは使い分けに困るので、ぜひRCTで勝負をつけていただきたいところです・・・



Early Remdesivir to Prevent Progression to Severe Covid-19 in Outpatients

N Engl J Med. December 22, 2021

DOI: 10.1056/NEJMoa2116846

  • Design: Double-blind RCT
  • P: 12才以上、発症7日以内で重症化危険因子1つ以上または60才以上の入院していないCOVID-19
    • 危険因子:高血圧、心血管・脳血管疾患、DM、BMI≥30、免疫抑制者、CKD、慢性肝疾患、慢性肺疾患、現在の癌、鎌状赤血球症
    • 除外基準:過去のCOVID-19入院歴・治療歴、ワクチン接種者、Bw<48kgかつCcr<30、授乳婦
  • I: レムデシビル点滴静注 3日間(day1: 200mg, day2, 3: 100mg)
  • C: プラセボ 1:1
  • O: day29におけるCOVID-19による入院、またはあらゆる原因による死亡


結果:

  • 各群に292名ずつ割り付けられ、レムデシビル群の13名、プラセボ群の9名が投与を受けなかった
  • 平均年齢は50才で、危険因子は肥満55.2%、60歳以上30.2%、DM 61.6%が含まれた
  • バリアントは記載ないですが、米国における2020年9月18日~2021年4月8日の試験のため、前半はアルファ株、後半はデルタ株が主流と思われます

  • day29の入院または死亡のハザード比は0.13 (95%CI: 0.03-0.59) 
    • グラフ目視上ARR 5%くらいなので、NNT=20
  • 死亡は両群ともday29までには発生しなかった


  • 両群の鼻咽頭ウイルス量に明らかな差は認められなかった

  • 頻度の高い有害事象は、嘔気(10.8% vs 7.4%)、頭痛(5.7% vs 6.0%) などで、試験レジメンに関連する有害事象はレムデシビル群に多かった(12.2% vs 8.8%)


補足:

  • プラセボ群の入院率や死亡率を見る限り、モルヌピラビルやソトロビマブのRCTよりもかなり低リスク者が集められています
  • ウィルス量に差がないにも関わらず、臨床症状と入院率が下がるという点が不可解で、解釈に困ります
  • 本文中のDiscussionでは、アカゲザルのレムデシビル治療でも上気道ウィルス量と臨床的有効性の乖離があり、下気道ウィルスの減少で説明できるのではないか、とありました
  • COVID-19による入院、といういつもと少し違うエンドポイントが採用されていますが、全ての原因による入院or死亡も一応有意差はあります(HR 0.28, 95%CI: 0.10-0.75)


2021年12月26日日曜日

COVID-19に対するモルヌピラビルの効果(MOVe-OUT試験)

モルヌピラビル(ラゲブリオ)が製造販売承認されました。

発症早期の選択肢が、モノクローナル抗体、モルヌピラビル、レムデシビルOPAT、パクスロビド、など突然増えたので、今後はどのように使い分けるか考えなくてはなりませんね。

ひとまずモルヌピラビルのRCTをまとめました。
禁忌が少ないことやEffect sizeからは抗体療法が僅かに勝っているように感じましたが、
変異株の影響を受けにくいだろうことや(多分)コストの点ではモルヌピラビルが有利になりそうです。


Molnupiravir for Oral Treatment of Covid-19 in Nonhospitalized Patients

N Engl J Med. 2021 Dec 16.

doi: 10.1056/NEJMoa2116044.


  • Design: Double-blind RCT
  • P: 発症5日以内でリスク因子が1つ以上ある、軽症・中等症の入院していないCOVID-19
    • リスク因子:60歳以上、活動性の癌、CKD、COPD、BMI≥30、重篤な心疾患、糖尿病
    • 除外基準:透析、eGFR<30、妊婦、ワクチン2回以上接種者、好中球<500、Plt<10万
  • I: モルヌピラビル800mg 1日2回 5日間
  • C: プラセボ 1:1
  • O: day29における入院or死亡(ITT集団)


結果:

  • 716名がモルヌピラビル群、717名がプラセボ群に割り付けられた
  • 年齢中央値は43才で、危険因子は肥満73.7%、60歳以上17.2%、DM 15.9%が含まれた
  • ベースラインのSARS-CoV-2抗体は19.8%で陽性
  • バリアントはデルタ株32.1%、ミュー株11.3%、ガンマ株5.9%、データなし44.7%

  • day29の入院または死亡は、モルヌピラビル群7.3% (28/385)、プラセボ群14.1% (53/377)、絶対リスク差6.8% (95%CI -11.3 ~ -2.4; P=0.001) →NNT=14.7
  • Time-to-Event解析も同様で、入院または死亡のハザード比は0.69 (95%CI: 0.48-1.01) →グラフ目視上ARR2.5%くらいなので、NNT=40




  • 死亡はモルヌピラビル群1例(29日死亡率0.1%)、プラセボ群9例(29日死亡率1.3%)
  • モルヌピラビル群はday3, 5, 10においてウイルス量の減少がプラセボより大きかった
  • WHO Scaleの評価で、モルヌピラビル群はプラセボ群と比較してday5までに臨床転帰が改善し、day10とday15で最も大きな差が観察された(Supple S5)
  • サブ解析では、女性、発症4日以降、SARS-CoV-2抗体陰性、肥満、白人でのメリットが有意だった(発症3日以内、SARS-CoV-2抗体陽性、DM、60才以上は有意差なし)
  • 試験レジメンに関連する頻度の高い有害事象は、下痢(1.7% vs 2.1%)、吐気(1.4% vs 0.7%)、めまい(1.0% vs 0.7%)などで、両群で明らかな差はなかった


補足:

  • レムデシビルOPATと異なり、重症化率、死亡率、症状の改善はウィルス量とリンクしており、信憑性が高い試験に見えます
  • 妊婦やeGFR<30が対象外であり、この点は抗体療法(と一応禁忌ではないレムデシビル)が有利です
  • レムデシビルより有害事象が少なそうに見えます
  • Time-to-EventのNNTを単純比較すれば、ソトロビマブ(17)>レムデシビルOPAT(20)>モルヌピラビル(40)であり、抗体療法が最も良い成績
  • どの薬剤も現時点ではオミクロン株の臨床データがないので、デルタ株データからの推定



参考文献

  • ソトロビマブ:N Engl J Med 2021; 385:1941-1950.  DOI: 10.1056/NEJMoa2107934
  • レムデシビルOPAT:N Engl J Med Dec 22, 2021 [Epub].  DOI: 10.1056/NEJMoa2116846


2021年11月1日月曜日

Actinotignum schaalii菌血症

血液培養の小型GPRといえばCorynebacteriumが大半であり、ほとんどがコンタミかCRBSIですが、Actinotignum schaalii に年1,2回くらいは出会います(よね?)。

知っていると役立つこともあるので、一番新しいと思われる総説を抜粋してまとめました。

先にサマライズすると、

  • 尿路・生殖器の常在菌でコリネ等と誤認しやすいが、高齢者UTIの原因になる
  • 好気で発育しにくい小型GPRで、検出には5%炭酸培養・嫌気培養が有用
  • βラクタムは何でも効くが、ST・キノロンは耐性が多く、嫌気性菌なのにMNZが無効



Actinobaculum schaalii: review of an emerging uropathogen.

J Infect. 2012 Mar;64(3):260-7.

doi: 10.1016/j.jinf.2011.12.009.


微生物学的特徴

  • 非運動性、非芽胞形成、直線もしくは軽度弯曲したグラム陽性の球桿菌で、一部に枝分かれしているものもある
  • カタラーゼ、オキシダーゼ、ウレアーゼは陰性で、ウレアーゼ陰性であることでA. schaaliiとA. urinaleを区別できる(Table1)
  • 硝酸塩を亜硝酸塩に還元しない
  • 35℃の嫌気環境で48時間培養した5%コロンビアヒツジ血液寒天培地では、直径1mm以下の小さな灰色のコロニーを形成する(Fig2b)
  • 5%CO2の空気中では発育し、大気中ではあまり発育しない
  • 菌株によっては3~5日後に弱いβ溶血を示すものもある


疫学

  • 尿路または生殖器系の常在菌叢の一部と考えられている
  • 分離・同定が難しい微生物であるため、検出頻度は不明で、臨床的意義も過小評価されている可能性がある。
  • PCR法を用いた検討で、41/252(16%)の尿検体でA. schaaliiが検出され、菌数は10^4 CFU/mL以上だった。60歳以上の患者ではさらに高頻度だった(34/155、22%)
  • 無症候性細菌尿が10~20%あるため、Colonizationと感染の区別は難しいが、従来考えられていたよりも  A. schaalii 感染症の頻度は高いと考えられている。


臨床症状

  • 現在までに117例の A. schaalii 感染症が症例報告されていた
  • 約60%が男性、約40%が女性とそれほど性差はない。
  • 泌尿器系疾患のある高齢者においてUTIの原因となることが多い(Table2)
  • UTI以外では脊椎炎、菌血症、心内膜炎などを引き起こすことがある


微生物学的診断

  • 好気環境では他の細菌にovergrownされたり、皮膚・粘膜の常在菌に似ているため見過ごされたり、CorynebacteriumやLactobacillusなどの汚染菌と誤認されたりする
  • 塗抹所見と好気培養の同定結果が一致しない場合や無菌性膿尿ではA. schaaliiを検索する必要があり、尿定性試験の亜硝酸が陰性であることも重要である
  • A. schaalii の検出には5%CO2や嫌気下での血液寒天培地の培養が必要である
  • 自動分析装置での検出には限界があり、MALDI-TOF-MSによる同定が非常に有用である


薬剤感受性

  • ブレイクポイント設定はないが、non-species-related(訳注:EUCASTのPK/PDブレイクポイントを指していると思われる)や他の泌尿器系病原体の基準を用いることができるかもしれない
  • ペニシリン、セファロスポリン、アミノグリコシド、テトラサイクリン,バンコマイシン,リネゾリドには高い感受性がある
  • クリンダマイシンは概ね感受性があるが、一部に高度耐性が見られた
  • シプロフロキサシンの活性は低いが、レボフロキサシン、モキシフロキサシンには感受性を示す
  • STには概ね耐性で、メトロニダゾールとコリスチンは内因性に耐性である


治療

  • アモキシシリン、セフロキシム、セフトリアキソンの単独投与、もしくはアミノグリコシド(ゲンタマイシン)の併用投与が選択される
  • 治療期間は明確に定まっていないが、アモキシシリン1週間での治療失敗例があるため、少なくとも2週間治療すべきである
  • A. schaaliiは嫌気性菌だがメトロニダゾール無効である
  • キノロン系は感受性があっても推奨されない

2021年10月26日火曜日

重症COVID-19に対するデキサメサゾン12mgの効果(COVID STEROID 2 Trial)

重症COVID-19に対するデキサメサゾン12mgのRCTがJAMAに出ていました。

各ガイドラインの記載が変わりそうな重要なStudyです。HFNCになったタイミングでトシリズマブを併用するのか、デキサ12mgに増量するのか、あるいはその両方なのか、というところが今後の課題になりそうです。



Effect of 12 mg vs 6 mg of Dexamethasone on the Number of Days Alive Without Life Support in Adults With COVID-19 and Severe Hypoxemia: The COVID STEROID 2 Randomized Trial

JAMA. 2021 Oct 21. doi: 10.1001/jama.2021.18295.

https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2785529


  • Design: Double-blind RCT
  • P: 10L/min以上の酸素需要、もしくはNIV・機械換気下のCOVID-19
    • 除外基準で重要なものは、5日以上のCOVID-19に対するステロイド投与(4日以内ならOK)
  • I: デキサメサゾン12mg 10日間
  • C: デキサメサゾン6mg 10日間
  • O: 28日目における生命維持装置(呼吸器・循環補助・腎代替療法)なしでの生存日数


結果:

  • 12mg群に491名、6mg群に480名が割付けられた
  • NIV 25%、IMV 21%の患者が含まれ、レムデシビルが63%、IL-6阻害薬が11%、JAK阻害薬が1%に併用された
  • ベースライン背景・重症度は2群間でほぼ同じだったが、6mg群にDMが多かった (27% vs 37%)
  • Primary endpointは、12mgが22.0日 (IQR 6.0-28.0)、6mg群が20.5日 (IQR 4.0-28.0)、リスク差1.3日 (95%CI, 0-2.6, p=0.07) だった


  • 28日目死亡率は、12mg群で133/491 (27.1%)、6mg群で155/480 (32.3%)で、HR 0.86 (99%CI 0.68-1.08)、
  • 90日死亡率は、12mg群で157/490 (32.0%)、6mg群で180/478 (37.7%)で、HR 0.87 (99%CI 0.70-1.07)
  • サブ解析ではIL-6阻害薬を併用していない患者、ステロイド開始して2日以内の患者での利益がより大きい傾向があった
  • 重篤な有害事象は、12mg群で102人 (20.5%)、6mg群で123人(25.4%)であった
    • Supple eTable10に内訳があり、血栓症、敗血症、AKIなどが少しずつ多いようです

感想:

有意差こそついていませんが、増量ステロイドの死亡率改善効果を示す重要なRCTと考えます。あまり目立った有害事象の増加もないようであり、少なくとも大きなデメリットがなさそうに見えます。

有意差がつかなかった主な原因は、介入の効果が想定より弱かったことによるサンプルサイズの不足だと思われます。


Primary endpointは12mg群で42.6%、6mg群で40.2%と、実際の相対リスク軽減は6%しかありませんでした。サンプルサイズは15%の相対リスク軽減を想定していましたので、Nが不足であった感は否めません。


相対リスク軽減が想定よりも低かった原因としては、ランダム化の前に4日間までのステロイド治療が認められていたことで、介入の効果が低下した可能性が考察されています。


ただ事前のステロイド使用を認めるということは、極めて実臨床に即している気がするので(6mgで効かずに重症化したら12mgに増量するというプラクティスになる)、個人的には妥当なデザインではないかと思います。


介入効果に見合ったNであったなら有意差が出たであろうデータに見えるので、今後はデキサメサゾン6mgでうまくいかなければ4日以内に12mgに増量するということが、ある程度エビデンスを持った選択肢になったのだろうと、個人的には考えました。


2021年10月19日火曜日

固形臓器移植におけるCMV抗原血症

自己免疫疾患の治療中に見られるCMV抗原血症をPre-emtiveに治療してしまうということは時々あるのですが、どのくらい妥当なのか改めて調べてみました。


固形臓器レシピエントのCMV再活性化を予測する因子を解析した前向き研究が、参考になりそうでした。

今回読んだ2つの論文では、固形臓器移植のCMV抗原血症の発症率は47~62%、CMV diseaseは3~20%、一方SLE、non-SLE自己免疫疾患のCMV抗原血症は、それぞれ58.6%、11.4%、という前向き観察研究があり(PLoS One. 2019 Aug 28;14(8):e0221793)、CMV diseaseはループス腎炎の後ろ向き観察研究で5.3%程度(Clin Exp Med. 2017 Nov;17(4):467-475.)ということでした。

固形臓器移植では使用している薬剤もPSL、MMF、Cyclosporine、TacrolimusなどSLEと類似しています。これを踏まえると固形臓器移植のCMV diseaseのリスクは、自己免疫疾患より少し高いくらいなのかなと思います。


抗原10程度だとPPVが20~60%くらいなので、Pre-emptiveに全例治療するレベルではない気がしますが、30などもう少し高い値になってくるとPPVが100%に近くなっているので、Pre-emtiveが成立するレベルのリスクなのかなという気がします。



Transplantation. 1999 Nov 15;68(9):1305-11.

  • デザイン:前向き観察研究
  • 対象:97人の連続肝移植レシピエント
  • 方法:毎週の定量的PCRによるウイルス量測定、および抗原血症アッセイ
    • ※抗原定量アッセイはReferenceを読んでみましたが、C10/11法だと思われます(Journal of Medical Virology, 25(2), 179–188.)
  • 結果
    • CMV抗原血症は62.9% (61/97)、CMV diseaseは20.6% (20/97)
    • 抗原定量値は、CMV diseaseでは39.2±22.2、無症候性では2.9±0.6
    • PCRのウィルス量は、CMV diseaseでは33624±10126、無症候性では1902±369
    • CMV disease予測のROC曲線は以下の通りで、適切なカットオフは、PCRは>5000(PPV 64.3%, NPV 95.7%)、抗原では>6(PPV60.7%, NPV 94.2%)



2つ目は固形臓器移植で同様の検討をしている論文です。このStudyではPCRしか見ていませんが、Validationコホートのサンプルサイズは252と大きいです。


J Clin Virol. 2013 Jan;56(1):13-8.

  • デザイン:前向き観察研究
  • 対象:CMV抗体陽性の連続した腎・肝・心移植患者(N=252)
  • 方法:CMV-PCRを移植100日目までは2週毎、101~180日目は4週毎に実施して評価した
  • 結果:
    • CMV抗原血症は47.2% (119/252)、Pre-emptive治療を60例に実施し、CMV diseaseは3.6%(9/252)
    • CMV disease予測の適切なカットオフは>3983(PPV 20.7%、NPV 99.2%)




2021年5月30日日曜日

免疫チェックポイント阻害剤投与者におけるBNT162b2接種後のサイトカイン放出症候群

 免疫チェックポイント阻害剤治療中の方がPfizerワクチン接種後に、サイトカイン放出症候群をきたしたという驚愕の症例報告です。

irAEの既往がある点がポイントなのだろうと思います。

治験では癌患者の接種があまり検証されていないので見落としがちですが、機序的には全く違和感がないので、まもなく始まる一般接種では注意が必要ですね。



Cytokine release syndrome in a patient with colorectal cancer after vaccination with BNT162b2

Nat Med. 2021 May 26. doi: 10.1038/s41591-021-01387-6.

https://www.nature.com/articles/s41591-021-01387-6

  • 58才男性 直腸癌
  • COVID-19の既往はない
  • 2019年2月 Anti-PD-1単独療法
  • 2019年4月 運動失調 →irAE grade1-2の診断。PSL1mg/kgで治療
  • 2019年6月 Anti-PD-1再開
  • 2020年3月 副腎不全 →irAE grade1の診断。PSL3mg補充療法
  • 2020年12月2日 Anti-PD-1最終投与

  • 2020年12月27日 BNT162b2 初回接種
  • 即時の有害事象はなく、接種部位のgrade1の炎症のみ
  • 5日後 38度台発熱、筋痛、下痢。CRP 12.5、LDH 184、Plt 6.8万 →入院
  • 尿培養・血液培養陰性、SARS-CoV-2 PCRの陰性、CTで感染症・血栓なし。広域抗菌薬投与したが無効
  • 入院5日目 状態改善せず。39.8度、CRP 31.7、LDH 849、フェリチン6010であり、サイトカイン放出症候群(CRS)としてPSL1mg/kgで治療開始
  • 入院9日目 症状は改善

  • 2021年2月 Anti-PD-1再開
  • ワクチンの2回目は接種しなかった


CRS急性期の免疫応答解析

  • CRSの特徴であるTh1サイトカイン(MIG、IL-2R、IL-16、IFN-γ、IL-18)の亢進が、入院3日目から見られていた
  • マクロファージの活性化(MCP-1、MIP、IL-8、IL-18、MIGの上昇)も見られた
  • 抑制性サイトカインであるIL-10の上昇が、入院3〜8日目に認められたが、明らかに炎症亢進を抑えることができていない
  • ほとんどのサイトカインはステロイド治療で大幅に減少したが、入院12日目にIL-2R、IL-2、IL-16、IL-18の上昇が持続したことから、T細胞活性化の持続が示唆された


ワクチン応答の解析

  • S1反応性および中和抗体はワクチン接種の7日後から検出され、力価はステロイド投与中も上昇し続けた
  • S特異的CD4 +およびCD8 + T細胞は、ワクチン接種後17日目、40日目には検出できず
    • 注:COVID-19既往がない健常人でも、ワクチン1回のみ接種では同じようにT細胞応答は誘導されないようです(Lancet. 2021 Mar 27;397(10280):1178-1181.
  • エピトープ解析ではCOVID-19ワクチン接種者と類似し、スパイク蛋白シグナルは上昇し、非スパイク蛋白シグナルは検出されなかった


2021年5月29日土曜日

BNT162b2 mRNAワクチン(Pfizer COVID-19ワクチン)に対するMTX投与の影響

 in vitroですが、MTX投与者のCOVID-19ワクチンの抗体反応、およびCD8+ T細胞応答はやや減弱するというデータが、ARDに出ています。

これが実際の個人の免疫や集団免疫にどの程度影響するかというと、あまり問題にならないのではないか、というのが個人的な推測(感想)です。



Methotrexate hampers immunogenicity to BNT162b2 mRNA COVID-19 vaccine in immune-mediated inflammatory disease.

Ann Rheum Dis. 2021 May 25:annrheumdis-2021-220597.

  • 免疫介在性炎症疾患(IMID)における、BNT162b2(Pfizerワクチン)の抗体価及びT細胞応答を、MTX投与者とそれ以外の治療に分けて調査
  • 健常コントロール26例、non-MTX 26例、MTX 25例を検討
  • 平均年齢は健常群49.2歳、non-MTX群49.1歳、MTX群63.2歳
  • non-MTXの治療は、TNF阻害薬11例(42.3%)、他のサイトカイン・JAK阻害薬が9例(34.6%)、その他7例
  • MTXの投与量は15.7±5 mg/w
  • 十分な抗体反応(>5000U)が得られた割合は、健常人96.1%、non-MTX群92.3%、MTX群72.0%だった
  • スパイク特異的B cell、cTfh(CD4+ICOS+CD38+)、活性化CD4+ T cell、HLADR+ CD8+ T cellの割合は全てのグループで有意に増加した
  • 活性化CD8+ T cell(Ki67+ CD38、GZMB+)は、MTX投与群では誘導されなかった


補足:

MTX群の平均年齢は10才以上高く、COVID-19既往も半分以下ですので、これがかなり大きなバイアスになっている可能性があります。

Pfizerワクチンの治験データでも高齢者の抗体反応は若干低下していました。

N Engl J Med 2020; 383:2439-2450


この検討では抗体価5000Uをカットオフにしていますが、NEJMのFigureを見る限り、健常高齢者の5000以上の抗体反応率は90%を切っていそうであり、回復期血漿の抗体価が平均600くらいみたいなので、MTX群の抗体反応の低下が実際にはどのくらいsevereな問題なのかはよくわかりませんね。


あとインフルエンザワクチンのRCTと同じく、MTX投与量が多いことが影響している可能性があります。


Ann Rheum Dis. 2018 Jun;77(6):898-904.

  • インフルエンザワクチン前のMTX2週間休薬は非休薬と比較して抗体反応率を有意に上げる
  • サブ解析でMTX7.5mg以下の抗体反応率は有意差なし(用量依存性)
  • ただし休薬群のRA flareは2倍になった


ACRはあまり根拠なく接種前のMTX1週間休薬を推奨していますが、JCR推奨は基本的に休薬せずに接種する、という記載になっています。

本検討ではMTX投与量も日本と比べるとかなり多いので、日本で多いMTX8mg/w前後の方への影響は軽微かもしれないとも思えます。

個人的には少なくとも全員一律にMTXを休薬する必要はなく、よほど落ち着いている人では検討すればいいのではないかと考えています。


2021年5月18日火曜日

ループス腎炎に対するボクロスポリンの併用効果(AURORA1 study)

個人的に注目していたボクロスポリンのRCTが、Lancetに掲載されています。初見は良さそうに見えたんですが、ベリムマブとの対比で考えると、少し微妙かなと思いました。



Efficacy and safety of voclosporin versus placebo for lupus nephritis (AURORA 1): a double-blind, randomised, multicentre, placebo-controlled, phase 3 trial.

Lancet. 2021 May 7:S0140-6736(21)00578-X.

doi: 10.1016/S0140-6736(21)00578-X.

  • Design: Double-blind RCT
  • P: ループス腎炎 III, IV, V
    • 2年以内の腎生検で診断
    • eGFR>45
    • 尿蛋白≥1.5g/gCr (V型は≥2g)
  • I: ボクロスポリン 23.7mg 1日2回+MMF 1g 1日2回
  • C: プラセボ+MMF 1g 1日2回
    • ※併用されたステロイドのレジメン
    • day1,2にmPSL500mg(体重45kg未満は250mg)
    • day3以降は20~25mg/dayから急速減量
    • 16週目に2~5mg/dayまで減量、以降は主治医判断
  • O: 52週の完全腎反応率
    • 完全腎反応率の定義は、以下のすべてを満たす
    • 尿蛋白0.5g/gCr以下
    • eGFR≥60 or ベースラインからの低下が20%未満
    • レスキュー薬の投与がない
    • 44~52週において、PSL換算≥10mg/day 連続3日or7日以上の投与がない


結果:

  • 179名がボクロスポリン群、178名がプラセボ群に割り付けられた
  • ボクロスポリン群、プラセボ群の病理は各々、IIIが11%/16%、IVが51%/43%、Vが14%/14%、III+Vが13%/11%、IV+Vが11%/15%だった
  • 52週の完全腎反応率は、ボクロスポリン群で有意に高かった (73/179 [41%] vs. 40/178 [23%], OR 2.65 [95%CI 1.64-4.27], p<0.0001)
  • SAEはボクロスポリン群で37/178 (21%)、プラセボ群で38/178 (21%)であり、群間差は見られなかった
  • ボクロスポリン群で多かった有害事象は、感染症(34% vs. 17%)、神経障害(26% vs. 15%)、血管障害(21% vs. 13%)、など





感想:

Primary endpointとして、尿蛋白0.5g以下という厳しめの寛解基準が選択されています。ALMS study (J Am Soc Nephrol 2009; 20:1103–1112) のMMF群における尿蛋白0.5g以下達成率は23.8%であり、この試験のプラセボ群でも、想定通り同じ達成率が再現されています。

ややボクロスポリン群にややIV型が多く、バイアスによる過大評価も懸念されますが、それを上回るレベルで寛解率に差があるように見えるので、偶然の差ではないと思われます。サンプルサイズも適切であり、概して内的妥当性は高いRCTと考えます。


IV型よりV型に効くのかと思えば、サブ解析を見る限り、そうでもないようです。

もともとMMFが入っていた患者群でのメリットが著しいです。


MMFにベリムマブ、ボクロスポリンのいずれをを乗せるのがいいのか、BLISS-LN study (NEJM 2020; 383:1117-1128) における52週の完全腎反応率を見てみると、プラセボ20%、ベリムマブ30%で、ボクロスポリンとほぼ同じEffect sizeであり、かつ副作用面では明らかにベリムマブに分がありますので、実際のボクロスポリンの使い所はどこなのか、といわれると難しいですね。

どっちも同じくらい高価でしょうし。

ボクロスポリンが妊婦に使って良いかについてもデータ不足ですので、タクロリムスと同じように使うのは抵抗がありますね。


したがって、Pureな腎病変ではベリムマブ+MMFを優先して使い、腎以外の病変への効果も期待する場合には出番があるかもしれない、というところでしょうか。

具体例としては、MMFで完全寛解まで行かずにくすぶっていて、関節炎や漿膜炎も出てきたんだけどステロイドを増やすほどではないかな、みたいな場面に使えるのかもしれません・・・


2021年5月5日水曜日

COV-BARRIER試験:バリシチニブのCOVID-19に対する標準治療への上乗せ効果

先日プレスリリースされていた、COV-BARRIER試験のプレプリントを読みました。

対象はほぼ酸素投与者に限られています(挿管とECMOも除外されている)。二次エンドポイントではあるものの、死亡率が有意に改善している点が最も重要な点だと思います。


バリシチニブはデキサメサゾン併用での上乗せ効果が不明、という点で敬遠していた部分が大きいですが、これをもってデキサメサゾンと併用するエビデンスは十分得られた気がしています。


Baricitinib plus Standard of Care for Hospitalized Adults with COVID-19

medRxiv [pre-print] Posted May 03, 2021.

https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2021.04.30.21255934v1


  • Design: 国際共同 Double-blind RCT
  • P: CRP、D-dimer、LDH、フェリチンの最低1つが上昇し、NIAID-OSが4-6のCOVID-19
    • ※NIAID-OSはいつもの重症度カテゴリ
    •  1=活動制限なし
    •  2=活動制限があるが入院不要
    •  3=酸素や医療ケアは不要だが入院が必要(感染管理のための入院)
    •  4=酸素は不要だがCOVID-19に関連した活動制限による医療ケアが必要
    •  5=酸素が必要
    •  6=NIPPVや高流量の酸素が必要
    •  7=機械的換気やECMOが必要
    •  8=死亡
  • I: バリシチニブ4mg/day 14日間+標準治療
  • C: プラセボ+標準治療
    • ※ 標準治療は副腎皮質ステロイドが79%に使用された(うち90%はデキサメサゾン)
  • O: Day28の複合エンドポイント(高流量酸素、NIV、機械換気、死亡、いずれかへの移行)


結果:

  • 764名がバリシチニブ群、761名がプラセボに割り付けられ、83.1%が28日の治療を完遂した(治療中断の62.6%が死亡によるもの)
  • 平均年齢は57.6±14.1歳、83.3%が発症から7日以上経過していた
  • 重症度の内訳は4が12.3%、5が63.4%、6が24.4%だった
  • 標準治療として79.3%でステロイド、18.9%でレムデシビルが併用された
  • Day28における複合エンドポイントは、バリシチニブ群27.8%、プラセボ群30.5%と有意差を認めなかった (OR 0.85, 95%CI 0.67-1.08, p=0.18)
  • 28日の全死亡率は、バリシチニブ群が8.1%と、プラセボ群13.1%と比較して有意に少なかった (HR 0.57, 95%CI 0.41-0.78, p=0.002) →NNTは20
  • 死亡率の低下はどの重症度サブグループでも有意に認められ、高流量酸素/NIVの患者群で最も顕著だった (17.5% vs 29.4%; HR 0.52, 95%CI 0.33-0.80; p=0.007) →NNTは9
  • MACE、VTE、感染症を含む有害事象は両群で大きな差はなく、むしろプラセボ群に死亡に繋がる有害事象が多かった (4.1% vs. 1.6%)



解釈:

複合エンドポイントで有意差が出ないのに、死亡率では有意差が出るという解釈が難解なStudyです。

Table2の二次エンドポイントを1個ずつ見ていく限り、有意差がついていない部分に関しては惜しいところも多いですし、この死亡率の差が偶然なのかというと、少なくとも僕には本当に差がありそうに見えます。


複合エンドポイントで差が出ない理由として、サンプルサイズがあるかもしれません。デキサメサゾン+レムデシビルをベースで使っているからなのか、複合エンドポイントへの効果はHR 0.8と小さめで、死亡率への効果のほうがHR 0.6と大きいです(=上乗せ効果の恩恵は最重症例が最も大きいと解釈できる)。

そもそもサンプルサイズが適切なのか、Methodに書いていないのですが、結果からざっと逆算すると、複合エンドポイントのNは1200、死亡率のNは600くらい必要ですので、これは当然の結果なのかもしれません。


また、バリシチニブはRAへの使用でも数日で効果が出るような薬剤ではないので、Day28、ましてやDay14で差を出そうとすると、なかなか難しかったのではないかと個人的には思います。

ということで、即座というより少し緩徐なスピードでデキサメサゾンへの上乗せ効果があり、特に高流量酸素投与者(OS=5~6)における死亡率の改善という観点で、十分選択肢になるのではないかと感じます。


以下は完全に私見ですが、NNTがトシリズマブより小さいのでバリシチニブを優先して使い、バリシチニブで間に合わないような進行の早い(CRPも高いような)症例にはトシリズマブ、という使い分けがいい気がするのですが、どうでしょうか。

バリシチニブは28日後を見据えて悪くなりそうなOS=5~6の症例に「早めに」入れておく必要がある気がしています。


2021年5月1日土曜日

SARS-CoV-2感染妊婦と新生児転帰の関連性

SARS-CoV-2陽性妊婦が入院し、入院中に分娩になり、新生児がPCR陽性、という稀有な経験をしました。

と、思っていたら、ちょうどピッタリの論文がJAMAに掲載されましたので紹介します。

先にサマライズすると、

  • SARS-CoV-2陽性妊婦は早産・新生児異常が有意に増えるが、垂直感染には起因していない
  • 垂直感染は1%以下と稀で、肺炎の頻度も低いと思われる



Association of Maternal SARS-CoV-2 Infection in Pregnancy With Neonatal Outcomes. 

JAMA. 2021 Apr 29.  doi: 10.1001/jama.2021.5775.

https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2779586


  • Design: スウェーデンの前向きコホート
  • 対象:2020.3.11~2021.1.31にスウェーデンの全出生児の92%を登録。奇形のある新生児は除外
  • 方法:SARS-CoV-2 陽性妊婦からの出生児を、傾向スコアを用いて最大4人の対照群とマッチさせて比較した


結果:

  • 88159名の新生児を登録、うち2323名(1.6%)がSARS-CoV-2陽性の母親から出生した
  • SARS-CoV-2陽性の母親の平均在胎期間は39.2 ± 2.2 週、対照群は39.6 ± 1.8 週
  • 早産(37週未満)の割合は,SARS-CoV-2陽性妊婦で205/2323 (8.8%),対照群で4719/85836 (5.5%)だった
  • 母親のSARS-CoV-2検査陽性は、新生児の複数の病的異常と有意に関連していた
    • 新生児の入院ケア (11.7% vs.8.4%, OR 1.47, 95%CI 1.26-1.70)
    • 新生児呼吸促迫症候群 (1.2% vs. 0.5%, OR 2.40, 95%CI 1.50-3.84)
    • 他のあらゆる新生児呼吸器疾患 (2.8% vs. 2.0%, OR 1.42, 95%CI 1.07-1.90)
    • 高ビリルビン血症(3.6% vs. 2.5%, OR 1.47, 95%CI 1.13-1.90)
    • 新生児死亡率 (0.30% vs. 0.12%, OR 2.55, 95%CI 0.99-6.57)
  • 退院時の母乳育児率 (94.4% vs. 95.1%, OR 0.84, 95%CI 0.67-1.05),NICU滞在期間 (中央値6日 vs. 6日, 95%CI -2-7日) は両群間で有意差はなかった
  • SARS-CoV-2陽性妊婦からの出生児のうち21人(0.90%)がSARS-CoV-2陽性だったが、先天性に肺炎を発症していた児はいなかった


解釈:

陽性妊婦からの出生では新生児以上の発生頻度が高くなり、死亡リスクも上がるようですが、これは在胎期間の短縮など母体の異常に起因しており、新生児のCOVID-19の発症・重症化によるものではないと解釈できそうです。

垂直感染はあったとしても1%以下と稀で、PCR陽性の新生児もこのコホートでは全て軽症でした。

Nは大きいですがイベント数が少なめなので、解釈には慎重であるべきですが、更に大規模なコホートが後に出てきても、大きく解釈が変わる可能性は低そうです。

コホートの本質とは外れますが、陽性妊婦でもほとんどが母乳育児をしており、問題は起きていないようですね。


2021年3月31日水曜日

梅毒と関節炎

大関節主体の多関節炎をきたした二期梅毒の症例を経験しました。

分布はやや右有意で、手関節、足関節のエコーではかなり著しい腱鞘滑膜炎が認められましたが、腱鞘滑膜の肥厚に比してドップラー血流は乏しかったです。でも関節はめちゃくちゃ痛がっており、問診・診察上の関節炎所見は明らかです。脊椎、付着部などはintactでした。


梅毒では滑膜炎や関節痛が起きうる、と成書には書いてありますが、頻度や臨床像など、あまり詳しい記載はありません。僕もよく知らなかったので少し調べてみましたが、あまりまとまった報告はないようで、少なくとも多関節炎の鑑別で出てくるほどメジャーなものではないですよね。


Joint Bone Spine. 2009 May;76(3):293-5.

  • 梅毒の関節炎は主に二期に生じる。
  • 多関節痛、多発性関節炎、腱鞘炎、椎間板炎、仙腸関節炎、骨炎、骨膜炎が生じうる(要するに病型は何でもあり・・・頻度の差はあるのでしょうがレビューはされていない)


Scand J Rheumatol. 2016 Jul;45(4):336-7.

Ann Med Interne (Paris). 1989;140(2):152.

  • 梅毒の関節炎は急性のOligo arthritisで、大関節が主体、移動性のことが多い。
  • リウマチ熱や反応性関節炎に類似する。


Bull Epidemiol Hebd 2011;26–8.

  • 関節痛は梅毒の10%に見られるが、関節炎は稀。


Rev Rhum Mal Osteoartic. 1970 Jun-Jul;37(6):431-6.

  • 60000例の梅毒のうち、関節炎4例の報告。


Rheum Dis Clin North Am. 1993 May;19(2):379-98.

  • 梅毒における関節痛、関節炎、筋骨格症状は抗菌薬治療で速やかに軽快する。
  • ちなみに、他の症例報告でも全て速やかに軽快しているようでした。


Arthritis Rheumatol. 2018 Jan;70(1):133.

  • 三期梅毒で破壊性関節炎に至った症例報告。


J Eur Acad Dermatol Venereol. 2017 Aug;31(8):e381-e382.

  • HIV-IRISの関節炎で、関節液Nested PCRで梅毒の増幅産物が検出されたという報告。



反応性関節炎に類似した病型なので、二期梅毒の関節炎の多くは免疫学的機序なのだろうと思いますが、HIVの症例報告のように化膿性関節炎として発症することもあるようですし、三期だと骨破壊もあるみたいなので、菌体そのもののによる直接的関節炎も結構あるのかもしれないと思いました。

エコー所見など、詳しい方がいたら教えて下さい(Pubmedの報告は皆無)


2021年2月14日日曜日

トシリズマブとステロイドの併用は、重症COVID-19の死亡率を改善する

話題のトシリズマブRECOVERY試験のPre-printです。トシリズマブは散々の紆余曲折となりましたが、何となくこれで結論が出たのだろうという気がします。

それにしても、イギリスの発信力は凄まじいものがありますね。


medRxiv. Pre-print Posted February 11, 2021.

https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2021.02.11.21249258v1


  • Design: Open-label RCT
  • P: SpO2<92%、CRP≥7.5mg/dLを満たすCOVID-19
  • I: トシリズマブ 
    • BW>90kg: 800mg, 90≥BW>65: 600mg, 65≥BW>40: 400mg, 40kg≥BW: 8mg/kg
    • ※改善が不十分な場合、12~24時間後に2回目の投与を行うことができる
  • C: 標準治療 1:1割付
  • O: 28日死亡率、ITT解析
  • 標準治療群の28日死亡率が25%の場合に、有意水準1%、検出力90%で、TCZ群の死亡率減少効果が20%と想定したサンプルサイズは各群2000と試算された


結果:

  • TCZ群に2022名、標準治療群に2094名が割り付けられた
  • データ収集が終了したのはTCZ群1602名、標準治療群で1664名で、それらのうちTCZ群では17%にTCZが投与されず、標準治療群の2.6%にTCZが投与された
  • 評価対象となった4116例の重症度は、機械換気562例(14%)、NIPPV 1686例(41%)、酸素投与1868例(45%)であった
  • CRP中央値は14.3 [IQR 10.7-20.4] mg/dLで、3385人(82%)が組入時にステロイドを投与されていた
  • 28日死亡率は、TCZ群29% (596/2022)と、通常治療群33% (694/2094)と比較して有意に低かった (RR 0.86, 95%CI: 0.77-0.96, p=0.007)
  • 死亡率の改善効果はステロイド使用者でより顕著だった(RR 0.80, 95%CI: 0.70−0.90, Fig3)
  • 機械換気を受けていない患者における、機械換気移行率+死亡率はTCZ群で有意に低かった(33% vs. 38%, RR 0.85, 95%CI 0.78-0-93, p=0.0005)



考察:

対象は70才以下の患者が主に組み入れられており、86%が未挿管の酸素投与患者と、最も視聴率が高い集団です。これまでの主要な複数のRCTで示されなかった死亡率の改善が、NNT25という十分なEffect sizeで示されています。

なぜこれまでのRCTと結果が異なるのか、というのが最大の問題ですが、CRPが高い患者を組み入れたこと、デキサメサゾン使用率が80%を超えており、高炎症状態でのステロイドとの併用効果が主な要因として考察されています。

これ以上ないほどに頑強なデザインのRCTなので、Figure4のメタ解析も含めて考えるとTCZは有効であるという結論が有力と考えて良さそうです。しかしこれまでと全く真逆の結果が出ていることは、まだ何となく釈然としない部分もありますね。

サブ解析ではWhiteしか有意差がついておらず、Asianに全ての場面で適応できるか、個人的には慎重に考えたいですが、今後は挿管になりそうな場面では積極的に使っていってよさそうな気がします。


2021年2月10日水曜日

中枢神経感染症とNPSLEの鑑別

NPSLEと中枢神経(CNS)感染の区別は時に難解です。

髄液多核球が90%にも関わらず、NPSLEとしか考えにくい症例があったのですが、その考察過程で読んだ文献が面白かったので共有します。ちなみにその症例のスコアは4/8点でした(CSFの4項目)


Arthritis Res Ther. 2019; 21: 189.

doi: 10.1186/s13075-019-1971-2


  • Design: 後ろ向き観察研究
  • 方法:
    • 8491人の入院SLE症例をスクリーニングし、95名のCNS感染症を抽出した
    • 年齢・性別を一致させる計算アルゴリズムを用いて対象となるNPSLEを登録した
    • NPSLEからCNS感染症を区別するのに有用な要因を、多変量ロジスティック回帰分析を用いてスコア化する
    • 得られたスコアは別コホートを用いてValidationを行った

  • 多変量ロジスティックの結果
    • 罹病期間が長い (21.0 [3.0–50.0] vs.1.0 [0–22.0] months, OR = 5.2, 95%CI 1.1–24.5, P < 0.05)
    • 発熱 (96.8% vs. 23.2%, OR = 34.3, 95%CI 5.2–226.7, P < 0.001)
    • CSF多核球割合 (45.6% vs. 0.5%, OR = 1.09, 95%CI 1.00–1.19, P < 0.05)
    • CSF糖 (2.0 ± 1.3 vs. 3.3 ± 0.9 mmol/L, OR = 13.7, 95%CI 2.1–85.8, P < 0.01)
    • 低補体血症 (44.6% vs. 77.4%, OR = 0.08, 95%CI 0.02–0.41, P < 0.01)
    • 注釈:糖の単位換算: (mmol/L) *18 = (mg/dL)


  • 得られたスコア(SSS-8)
    • ValidationコホートでのAUC 0.93 (95%CI 0.80–1.00)
    • 4点以上でのCNS感染症を診断する感度85.7%、特異度93.3%



2021年2月2日火曜日

B.1.351変異株に対するmRNA-1273接種者血清の中和能

ワクチンの変異株への影響が検証されています。とてもインパクトがあるデータです。


BioRxiv. Preprint Posted January 25, 2021.

doi: 10.1101/2021.01.25.427948

https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2021.01.25.427948v1


  • mRNA-1273(モデルナワクチン)臨床試験参加者の血清のウィルス中和アッセイを検証
  • D614Gに対するGMTは1/1852
  • K417N-E484K-N501Y-D614Gに対するGMTは2.7倍低下した(1/686?)
  • B.1.351変異株に対するGMTは1/290(6.4倍低下)であったが、すべての血清で完全に中和可能だった
  • mRNA-1273ワクチン接種後のB.1.351変異株に対する中和は減少したものの、依然として有意だった





懸念通りワクチンの中和能は南アフリカ変異株(B.1.351系統)で明らかに低下しますが、臨床的効果や集団免疫に大きな影響を及ぼすかというと、そこまでではないのかもしれません。

またこちらも予想通り、英国株(B.1.1.7系統)のワクチン効果への影響は極めて軽微であり、E484KがGMTに大きく影響していそうに見えることから、ブラジル変異株(B.1.1.28.1系統)も南アフリカ変異株と同様であると予想できそうです。


なお既に南アフリカ変異株に最適化されたmRNA-1273.351が治験段階に入っており、mRNA-1273の3回目のブースターとして接種することがRCTで検証予定のようです。

BMJ. 2021 Jan 26;372:n232.

https://www.bmj.com/content/372/bmj.n232


想像を超えたスピードで開発が進んでいきますね。日本の科学競争力が悲しい・・・


2021年2月1日月曜日

外来における軽症COVID-19に対するコルヒチンの効果

コルヒチンのRCTがプレプリントで出ていました。想像以上に良い成績で驚きます。


medRxiv. Preprint Posted January 27, 2021.

doi: 10.1101/2021.01.26.21250494

https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2021.01.26.21250494v1


  • Design: Double blind RCT
  • P: 40才以上で1つ以上の重症化リスク因子がある外来COVID-19 (PCRまたは臨床基準で診断)
  • I: コルヒチン30日間(0.5 mg 1日2回3日間、その後1日1回)
  • C: プラセボ30日間
  • O: 30日後の死亡または入院
  • 重症化リスク因子:70才以上、BMI>30、sBP>150、DM、呼吸器・心・冠動脈疾患既往、BT>38.4、呼吸困難感、2系統以上の血球減少、好中球上昇+リンパ球減少
  • 統計:ITT解析、ロジスティック回帰モデル、25%のリスク軽減を想定したサンプルサイズを各群N=3000と試算


結果

  • 4488名が登録され、コルヒチン群に2235名、プラセボ群に2253名が割り付けられた
  • 発症から登録までの期間は中央値で5日、治療期間の中央値は26日
  • 30日後の死亡または入院はコルヒチン群4.7% (104/2235)、プラセボ群5.8% (131/2253) だった (OR 0.79, 95%CI: 0.61-1.03, p=0.08)
  • 30日死亡率はコルヒチン群0.2% (5/2235)、プラセボ群0.4% (9/2253) だった (OR 0.56, 95%CI: 0.19-1.67, p=0.08)
  • 事前に設定されたPCR確定4159例のサブ解析では、コルヒチン群4.6% (96/2075)、プラセボ群6.0% (126/2084)で有意な減少を認めた (OR 0.75, 95%CI: 0.57-0.99, p=0.04)
  • AEとしてはコルヒチン群に下痢が多かったが (13.7% vs. 7.3%)、他はプラセボと概ね同様で、SAEについては両群で差はなかった(4.9% vs. 6.3%)


考察

頑強なデザインの二重盲検RCTで、サンプルサイズに見合った相対リスク軽減率が得られています。惜しくも主要エンドポイントでは有意差が出ていないのですが、PCR確定例では有意差がついています。

全患者におけるNNTは91、PCR確定例に絞った場合は71と、個人的には臨床的インパクトが十分に大きいEffect sizeだと感じます。

機序としては抗ウィルスではなく、抗炎症による重症化抑制なのでしょう。

有害事象も軽微ですし、外来で入院適応外の症例へお祈り程度に処方するのは、アビガンやシクレソニドよりはコルヒチンの方がよっぽどアリだと思います。デカドロンはRECOVERY試験の軽症例サブ解析で、死亡率が(有意差はないものの)上昇していたので、今後は入院はいらないけど重症化しそうで心配、という方の良い選択肢になりそうです。


2021年1月23日土曜日

英国変異株B.1.1.7へのワクチン効果

議論している間にどんどんデータが出てきますね。ひとまず良いニュースで安心しますが、問題の南アフリカ変異株はまだみたいです。


BioRxiv. Posted January 19, 2021.

https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2021.01.18.426984v1


  • 武漢株、及び英国変異株 B.1.1.7 由来スパイク蛋白を含むPseudo-SARS-CoV-2を、BNT162b2 (ファイザーワクチン)接種者の血清を用いて中和できるか検討した
  • ワクチン免疫血清は両バリアントに対して同等の中和力価を有していた
  • B.1.1.7 変異株がBNT162b2による免疫を逃避する可能性は非常に低いと考えられる


2021年1月21日木曜日

SARS-CoV-2 501Y.V2変異株は回復期血漿の中和を逃避する

話題になっている「南アフリカ変異株が回復期血漿の中和を逃避する」の元になったと思われるPreprint論文をBioRxivで発見しました。


BioRxiv. Posted January 19, 2021.

https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2021.01.18.427166v1


  • 回復期血漿のSARS-CoV-2 D614G系統(非変異株)と 501Y.V2変異株に対する力価を評価した
  • D614G系統(非変異株)に対する力価は、高力価 (ID50 >400) が50%、低力価 (ID50が25~400)が50%
  • 3つのRBD変異(K417N、E484K、N501Y)のみを含むキメラウイルス構築物に対する力価は、高力価23%、低力価50%、活性なし27%
  • 501Y.V2変異株に対する力価は、高力価7%、低力価45%、活性なし48%



つまり中和抗体の活性にはN末端ドメイン(NTD)の変異が、より重要なようですが、RBDの変異のみでもかなりの影響があることが示唆されます。

イギリス変異株(B1.1.7系統)よりも南アフリカ変異株(B1.351系統)やブラジル変異株(B1.1.248系統)の方が、ワクチン逃避の観点からは危険な可能性が高いと推定できそうです。


B1.351(501Y.V2)は南アフリカだけではなく、イギリスでも結構検出されてるみたいです。

https://cov-lineages.org/global_report_B.1.351.html

2021年1月10日日曜日

SARS-CoV-2変異株B.1.1.7

変異株について現時点の情報をまとめました。

すっかり勘違いしていたのですが、先日話題にしたD614Gは2020年2月頃から出現し、4月頃には欧州や米国での主流となっていた株のようです(Cell. 2020 Aug 20;182(4):812-827.e19.


今まさに話題になっている、いわゆる「変異株」はB.1.1.7であり、別名はVOC-202012/01、もしくは20B/501Y.V1です。

WHO: https://www.who.int/csr/don/21-december-2020-sars-cov2-variant-united-kingdom/en/

CDC: https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/more/science-and-research/scientific-brief-emerging-variants.html


B.1.1.7は2020年9月頃にイギリスで出現し、12月ころから急速に増加、12月28日時点で英国内の株の28%を占めるに至り、その後カナダや米国などでも確認されています(JAMA. January 06, 2021. doi:10.1001/jama.2020.27124)


B.1.1.7は、多数の突然変異によって定義される系統群を指しているようです。12月15日時点でB.1.1.7系統のゲノムは1623種同定されているとのこと。

ARTIC networkに詳しい解説記事がありました。

https://virological.org/t/preliminary-genomic-characterisation-of-an-emergent-sars-cov-2-lineage-in-the-uk-defined-by-a-novel-set-of-spike-mutations/563


B.1.1.7は17箇所の遺伝子変異を持ち(Table1)、特にスパイク蛋白に多くの変異を有している。変異のうち特に以下の3つは、以前から報告のある潜在的な生物学的影響から重要である。

  • N501Y: RBDの6つの重要な接触部位の1つで、ACE2への結合親和性を増加させる
  • del 69-70: 免疫応答回避に関連する可能性がある
  • P681H: 生物学的に重要なFurin切断部位に隣接している

補足:

スパイク蛋白はFurinによりS1とS2に切断される。

その後S1が受容体であるACE2受容体に結合する。

S2はTMPRSS2で切断され、その結果膜融合が進行する。

Cell. 2020 Apr 16; 181(2): 271–280.e8.


なお、B.1.1.7と南アフリカの変異株B.1.351(別名:20C/501Y.V2)は別物のようです。

B.1.351はB.1.1.7と同じN501Yを持つので大変ミスリーディングですが、del 69-70がないなど、起源が全く別の系統樹のようです(たまたま両者ともN501Y変異を獲得したと考えられている)。12月ころから南アフリカやボツワナの主流株になっているようです。


B.1.1.7にしてもB.1.351にしても最近出現した株なので、D614Gとは違ってウィルス増殖、感染力、ワクチンへの影響など基礎的なデータも含めてまだなさそうです。B.1.1.7が何の影響もない変異株で、たまたまスーパースプレッダーが持っていた可能性や流行の時期とたまたま重なって優位になった、という可能性もあるのでしょうが、英国内はイングランド南東部でのみ急激に感染者数が爆発的に増加し、その大半がB.1.1.7であるということでした。

地理的な広がりや疫学的データは、変異株そのものによる変化を考慮すべきレベルにはなってきているようです。回復期血漿やレムデシビルの投与による影響を挙げている論文もありました。


最後に、現在の変異株発生状況を把握するには、SARS-CoV-2 lineagesが非常に便利です。

サイトトップ: https://cov-lineages.org/index.html

B.1.1.7: https://cov-lineages.org/global_report_B.1.1.7.html

B.1.351: https://cov-lineages.org/global_report_B.1.351.html


2021年1月5日火曜日

SARS-CoV2変異株D614G

SARS-CoV2変異株はテレビではめちゃくちゃ話題になっていますが、実際のところはあまりデータが出てきてないですね。とりあえずNEJMのまとめがわかりやすかったので共有します。


Emergence of a Highly Fit SARS-CoV-2 Variant.

December 31, 2020

N Engl J Med 2020; 383:2684-2686


  • スパイク蛋白の受容体結合ドメイン(RBD)の変異株であるD614Gが、世界的に有病率が高い株になっている
  • D614Gは野生株と立体構造が異なる可能性があり、ACE2への結合能力が向上する可能性が示唆されている
  • 不死化培養細胞、ヒト初代気道上皮細胞、ハムスターの鼻腔内において、D614G変異株は野生型よりも効率的に複製された
  • D614G変異株に感染したハムスターの重症度は野生株と同じだった
  • D614G変異株は野生株感染ハムスター由来の血清により中和された
  • 現在臨床試験で評価されているCOVID-19ワクチンは野生株のRBD配列に基づくが、これらの知見により変異株に対するワクチン有効性に対する不安は和らいだと考えられる

2021年1月4日月曜日

MCNSに対するタクロリムスの有用性

カルシニューリン阻害薬のRCTは殆ど出てこないので貴重ですね。


Comparison of the Efficacy and Safety of Tacrolimus and Low-Dose Corticosteroid with High-Dose Corticosteroid for Minimal Change Nephrotic Syndrome in Adults

JASN January 2021, 32 (1) 199-210.

DOI: 10.1681/ASN.2019050546

  • Design: 多施設Open-label RCT、並行群間、非劣勢試験(韓国)
  • P: 16-79才の腎生検で診断されたMCNS、尿蛋白>3.0g/gCr、eGFR>30
  • I: PSL 0.5mg/kg+TAC 0.05mg/kg 1日2回(濃度は5-10ng/ml)
  • C: PSL 1.0mg/kg (Max 80mg)
  • O: 
    • 主要エンドポイントは8週における完全寛解率(尿蛋白<0.2g/gCr)、非劣勢マージン20%
    • 二次エンドポイントは完全寛解達成までの期間、再発率(尿蛋白>3.0g/gCr)、再発までの期間


結果

  • 144名がランダム化され、TAC群に69名(解析対象67名)、PSL群に75名(解析対象69名)が割付られた
  • 8週間時点の完全寛解は、TAC群53人(79.1%)、PSL群53人(76.8%)で、ITT(11.6%)、PPS(17.0%) いずれの解析でも非劣性が示された
  • 寛解までの期間の中央値はTAC群で15日(95%CI: 14-27)、PSL群で25日(95%CI: 14-28)で有意差はなかった
  • 24週における再発率はTAC群で有意に少なかった (5.7% vs. 22.6%, p=0.01)


感想

TACの併用でPSL投与量を減らせて、寛解も少し早くて、再発は明らかに減少する。感覚的にも臨床の印象と合致しますし、おそらく糸球体腎炎の寛解導入に高用量PSLは必要ないのだろうと強い確信が持てるデータです。

PSL群に同意撤回による脱落が若干目立ちますが、解釈に影響を与えるほどではなさそうです。Open-labelではありますが、エンドポイントは主に客観指標の尿蛋白なので、情報バイアスが入る余地は少なく、盲検とほぼ同義に解釈できそうです。